| 第5話 ハンターランク試験 | |||
|
ここは街道と呼ばれる幅の取られた道。きちんと舗装され、より快適に人が通れるように作られた道路である。 この道の先に何が待っているのかと言えば、それはこのブルーテン国の首都ブルーテンの街である。 ブルーテンは山岳の多く険しい地形が特徴的で、首都もまた山々の麓に腰を下ろしている。 そのため、他の土地に比べ標高が若干高いところにあるためか、他とは違った空気を漂わせている。 別名『天空都市』などという大層な名前が付いてはいるがその由来は定かではない。 ただほんの少しだけ空に近いからと言って『天空都市』などと言うご大層な名前を付けるとは思えないが、歴史の波に消えた昔の出来事など考えるだけ 今は無駄であった。 そんなブルーテンの街を目指しながら歩く二人、祐一とことりはいつになくまったりと会話をしながら歩いている。 なにぶん祐一がわざと魔物の多発する地域を抜けてきたので戦闘は日常茶飯事の出来事だった。 時には上級魔物が大量に現われた時もありそれをほぼことり一人で相手させられたときはことりも泣きたくなりそうだったとか。 今のことりなら上級魔物など手におえない程のものではないのだが、如何せん数がいるとなると話しは別である。 それでもこうして生きているのだからことりの努力が実を結んだということだろう。 そんな日々に比べればなんと平和な旅であろうか。 それ以前に使い魔とした白翼神を呼び出せばもっと快適かつ楽な旅を楽しめるのだが、祐一曰く「それじゃパワーアンクル付けた意味がないだろ」との こと。 日常生活で足腰を鍛え、ことりのさらなるパワーアップを画策している祐一にとってそれは当たり前のことだった。 流石にことりも一応師の言葉に逆らうことは出来ないので、こうして両手両足にパワーアンクルを装着しながら気長に旅をしていたのだった。 ちなみにシャワーの時以外は常にそれをつけているのでほぼ二十四時間鍛えていることになる。 ことりが言うに、これをはずしたときは体が凄く楽になる、だそうだ。 それは自分の身体能力をセーブしているということになり、知らず知らずに力が抑えられた状態で日々を過ごしていることになるため、それを解放した ときどれだけ差が出るかが祐一にとっては楽しみだった。 そしてようやく旅のひとまずの目的地であるブルーテンへと二人は辿り着いた。 比較的に暖かいを越えて暑いと言うに相応しい気候のこの街は、夏色に染まった爽やかな印象を二人に与えた。街の中を吹きゆく風はどこか体を癒して くれる、そんな気分にしてくれる街である。 ブルーテン国の首都であり、世界有数の都市でありながら人口が多く狭い場所というのではなく、ゆったりと落ちつける街であった。 「良い街だな。風が気持ちいい」 「だね。それに太陽が眩しいよ」 空から微笑む太陽は街全体を包み込むように照らしている。 ギラギラと照りつけるような光ではあるが、まだ季節は世界的に夏とまでは行かないので心地いい。そんなこの街の雰囲気に二人も酔いしれていた。 「とりあえず軽く食事をとって休もう。そしたらハンターランク試験を受けに行こうか」 「うん」 メインストリートを歩きながら二人は手頃な場所を選び食事をとると、一息入れてからギルドへと向かっていった。 どの街も同じ様な空気を漂わせているギルドはこの街も例外ではなかった。それどころか他の街とは一風違った思い空気をまとっている。 規模もさることながらそれに比例して増す利用ハンターの数。 室内に漂う空気もまたそれ相応の質を持っていた。 それに気を配ることなく一目散に祐一達は受付へと向かっていく。 「ちょっと聞いて良いか?」 「はい、なんでしょうか?」 受付の女性が顔を上げると祐一の応対をする。 その口調はとても丁寧でマニュアルに沿った機械的なものだった。 「『夢水の流れ』と言うギルドネームのハンターの情報はないか?」 街に着くとギルドによるたびに訊くこの質問。 今回も今まで同様にして受付に同じ質問を尋ねた。 「少々お待ち下さい・・・・・・・・・・・・すいません、該当するギルドネームはありません。もしかするとこの国ではないのでは?」 手元の資料を調べると若干の時間を空けて報告が成される。 今回もまたいい結果ではなかったにしろアドバイスをもらえただけマシだった。 だが、その後ろではことりが残念そうな顔をしているのは言うまでもない。 「そうか。ありがとう」 受付の言うとおり、ハンターの情報は国別に管理するのが多い。 そのため他国のハンター情報はあまり入っては来ない。 国内での情報の巡りは速いが、国外の話となるとどうしてか疎くなってしまう。 悲劇に巻き込まれ、どこにいるかも分からないことりの友人が果たしてこの国にいるかどうか。それによって得られる情報も変わってくる。 中には全世界共通で流される重要な情報もあるが、一介のハンターの個人情報などは国境を越えて出回るほど重要視されていないのだ。 そして祐一は気を取り直してもう一つの用を頼む事にする。 「それと、ハンターランク試験を受けたいんだが」 「試験をですか? お名前をお願いします」 「白河ことりです」 「そちらの方でしたか。それではどのランクの試験をお受けになられますか?」 「Sランクでお願いします」 その瞬間、ギルド内の空気が重く張り詰めた。 このような若い、しかも女の子がSランクの試験を受けるというのだ。驚くのも去ることながら中には小馬鹿にしたようなセリフを吐く輩もいる。 だが二人は別段気にすることなく受付を済ませる。 「かしこまりました。・・・・・・・・・受付は終了しました。そちらに座ってお待ち下さい」 そう言って近くのイスを指す受付の女性に従い二人はそこで時が経つのを待つ。 やがて二人の前に立ち止まる男が一人。そして二人に話しかけてきた。 「君が試験を希望する人か?」 目つきの悪い、もとい鋭い男が話しかける。 その風貌は整った服装で、その辺の輩とは比べ物にならない何かをまとっていた。 「はい。白河ことりと言います」 「白河ね。俺は国崎往人。よろしく頼む。そっちの連れは?」 「相沢祐一だ。よろしく」 「ああ。それじゃ、早速始めようか。ついてきてくれ」 そう言って案内される二人。 往人の後に付いていくとそこは大きな闘技場であった。 何でも国の方で管理しているらしい。 「あ! 往人さん」 金色のポニーテールをなびかせながら、何故かその肩には一羽のカラスを乗せた少女がこちらに気が付きやって来る。 「どないした? パトロールの最中や無かったのか?」 ことりと似た赤めの色素の髪をなびかせながら独特の口調の女性もそれに続いてやって来る。 「ハンターランク試験の相手を頼まれた。すまないがここ借りるぞ」 「かまわんけど、どっちが受けるんや?」 そう言って女性は交互に祐一とことりを見比べていく。 「あ、わたしです。白河ことりと言います」 「そうか。ウチは神尾晴子。よろしくな」 「私は神尾観鈴。よろしくね。こっちはそら、って言うの」 観鈴の肩にとまっているそらはカー、と鳴いて翼を小さく動かす。どうやら自己紹介のつもりらしい。 「よろしく、晴子さん、観鈴ちゃん、そら」 「俺は相沢祐一だ。それよりここはギルドの所有する闘技場じゃないのか?」 「ここは国が管理している闘技場だ。俺達『天空の騎士団』の訓練施設でもある」 天空の騎士団とはブルーテンを護る武力集団のことである。 各国騎士団を持っており、国土の防衛任務を行っているのだ。 「ちなみに俺は団長だ」 「ウチは副団長やで」 よく見れば往人たちの服装は青一色に統一された服装をしており、天空の騎士団のシンボルマークである羽をベースにデザインされたエンブレムが胸元 などに刺繍されている。 そのカラーはまさに天空の青海を暗示させる色だ。 男女問わずズボンとジャケットという服装に所々見られる装飾が貴賓をかもし出している。 「何だか凄い人と戦うことになっちゃった・・・・・・」 「気にするな。いつものようにやればいいんだ。それとパワーアンクルはずしとけよ」 「うん。・・・・・・あ〜、手足が軽くなった〜」 久々に重りをはずして戦闘に臨むことり。 大きくのびをしながら準備運動がてら体を動かす。 「準備できたか?」 往人は既に舞台の上に上がって準備を整え終わっていた。 「あ、はい」 ことりも舞台の上に上がる。 「それじゃ、ウチが一応審判な」 闘技場に上がると二人の間に緊張が走る。 往人は剣を、ことりは白風を構えた状態で対峙する二人の間には既にプレッシャーが衝突していた。 緊迫感が周囲の温度を下げるような静けさと、空気が支配する中で闘いの火蓋は切って落とされる。 「始め!」 先に往人が 地を蹴る。 剣を携えて一直線に走るその動きに無駄はない。 初太刀を全力の攻撃にのみ洗練された一撃から狙うその姿は強かな獣を連想させる。 「せいっ!」 ことりのいつもの闘い方である地面を砕いて発生する飛沫を利用した眼眩まし。 さほど効果は期待していないが、それを使って一度往人の視界を塞ぐ。 飛沫と砂埃の中からすぐに姿を見せた往人。だがそこにことりの姿はいない。 「チッ!」 舌打ちすると同時に飛んでくる鞭は先ほどとは別の角度からだった。 それを剣でカバーしようとするが直前で起動を変える。 「なっ!?」 これには往人も驚いたようで、戸惑いを隠せない。 横から襲いくる白風を剣で捌き、軌道を曲げたその瞬間、足下の大地が砕ける。 「クッ!」 密かに大地を通して下から進行していたことりの白風は完全に往人の不意をついて襲いかかる。 「てやあぁぁぁッ!」 ことりはその鞭を敢えて攻撃に使うことなく往人の下半身に絡めると、そのまま往人を宙へと持ち上げ、そのまま地面に叩き付けた。 叩き付けられた衝撃でステージが砕け、瓦礫が散乱し、その中心に往人の体は沈んでいった。 ことりは衝突直後に白風を手元に戻し、次の往人の動きに備えて構え直す。 「やってくれるな」 往人は少しよろめきながら瓦礫をはね除け、立ち上がると剣を構え直した。 「ちと本気を出すが悪く思うなよッ!」 往人は剣を正眼に取ると、その剣を中心として銀色に輝く風が収束していく。 やがてその輝きは剣を覆いつくすと、往人はそれを力強く振り下ろした。 「銀翼翔破斬ッ!!」 剣から解き放たれたのは冷気だった。ただの冷気ではなく羽ばたく鳥の形を模した冷気の塊を放ったのだ。 剣から解放された冷気の翼は、羽ばたきとともにことりへと躊躇なく向かっていく。 だがことりは己をかき乱すことなく、自分の体を白風で覆うようにして取り巻いた。 「風護障壁!」 白風を覆うようにして発生した竜巻が束ねられ、ことりを柱のように覆う一つの竜巻へと変化する。 鞭から発生した竜巻が縦の回転を生み出し、束ねられた竜巻によって発生した竜巻が横の回転を生み出し十文字の回転が往人の銀の鳥の行く手を阻む。 そして、二つは互いに衝突しながら力の余波を撒き散らして暴れ狂い、激しい鬩ぎ合いを繰り広げる。 やがて拮抗したエネルギーは長い競り合いとは裏腹に、一瞬にして均衡を崩すと、周囲にに白く霞んだ空気を漂わせて霧散した。 見えない視界の中で二人の闘いは依然として続く。 「上か!」 未だ収まらない冷気の中で、跳躍したことりは上空から攻撃を仕掛ける。 勿論往人の攻撃が届かない場所からの遠隔攻撃だ。 「風時雨!」 白風を操り、雨のような連撃が往人へと襲いかかる。 往人は依然として晴れない視界の中を駆け抜け、外を目指しながら攻撃を凌ぐが、多少の被弾は否めない。 そして視界が開けると同時にことりの居場所を確認し、魔法を放った。 「アイスストーム!」 冷気の竜巻がことりの足下から発生すると瞬時に襲いかかっていく。 「くっ!」 ことりは風時雨の際に繰り出した白風を地面へと突き刺し、ロープを手繰り寄せるようにして場所を移動する。白風の自由に収縮する特性を生かした回 避方法だった。 だが、その際に少々魔法を受けたようで、服の端々が凍りついていた。 しかし、当然そのチャンスを往人は逃さない。すぐに剣を振りかぶり間合いを詰める。 ことりもタイミングからしてそれをかわす時間の余裕は持ち得ていなかった。 「せやあぁッ!」 迫り来る往人。 しかしことりは避けようとはしない。 そして、その銀光がことりの頭上に振り下ろされようとした、その時。 「風爆裂!」 突如地面が爆ぜる。 風圧とリングの残骸の混じった圧力が往人の正面から襲いかかる。 ことりは先ほど地面に突き刺した白風を地面に忍ばせ、往人が近づくと同時に地面の下から風の力で爆発をおこしたのだ。 「うおッ!?」 その力で思いっきり吹き飛ばされる往人。対することりも自分の近くで爆発を起こして巻き込まれているはずだが、瞬時に風の障壁を魔法で展開しそれ を防ぐ。 軽く吹き飛ばされた程度の所で着地すると往人に向かって白風を放った。 「てやあッ!」 その矛先は往人の胴へと伸びていき、やがて往人の体は白風によって絡み取られる。 そのまま軽々と往人は持ち上げられ、そのまま再度地面に叩きつけた。 そして、なお立ち上がろうとする騎士の喉元にことりは白風を突きつけた。 「・・・・・・参った。俺の負けだ」 「そこまで! 勝者、白河ことり!」 晴子の審判の声が響くと、闘いの幕は静かに降りた。 ことりは白風を手元に戻すと、往人は立ち上がりことりに声をかける。 「まったく、白河は強いな。これじゃ、騎士団の団長として立場がない」 「そんなことないですよ。国崎さんも強かったですよ」 「サンキュ。良かったらウチに入らないか?」 「お誘いは嬉しいですけど、遠慮させて貰います」 「それは残念だ。それじゃ、この後筆記もあるから頑張って」 「はい」 ことりは往人からねぎらいの言葉を受けると祐一と共に闘技場を後にした。 その後筆記の問題を解いたが、結果は合格。それはもちろんのことだった。 旅の道すがら祐一が色々と叩き込んでいたのだ。薬学、トラップ知識、魔物の性質や薬草、毒草の判別の仕方などありとあらゆることを教えられてい た。 途中実習を兼ねてギルドの依頼で洞窟に出向き、覚えた知識を実際に試してもいるので身に染みていた。そのためこの結果は当然である。 そして無事試験も終了すると受付に向かった。 「おめでとうございます。これが新しいハンターカードです」 「ありがとうございます」 「それでは、またのご利用を」 そしてことりは受け取ったハンターカードを見つめた。 そこには更新されてAランクからSランクになったことが書き記されており、ギルドネームが追記されていた。 「『風の妖精』?」 そこにはギルドネームとして『風の妖精』と書き記されていた。 「そう。ぴったりだろ?」 「それは分からないけど、祐一君が考えたの?」 ちなみにギルドネームは自分で考える事ができる上、身元請負人などの第三者が考える事もある。 「まあな。俺が鍛えたからこの結果は予想範囲内として、ギルドネームも良いのをと前々から考えていたんだ。特訓最後の日にパッタリ倒れたときの寝 顔がそんな印象を受けたからその名前にしたんだ」 「ふ〜ん・・・・・・って、寝顔見たの!?」 「まあな。別に減るもんじゃないだろう?」 「減らなくても恥ずかしいの! う〜・・・・・・」 横でうなることりを気にしているのか気にしていないのか微妙だが、祐一は気を取り直してことりに声をかけた。 「ことり」 「な〜に?」 まだいじけモードから復活はしていないようだ。 そんなことりを見つめながら祐一は言う。 「合格、おめでとう」 「あっ・・・・・・うん、ありがとう」 突然祐一から送られたお祝いの言葉に戸惑いながらも笑顔でそれを受け取ることり。 先ほどのような気配はまったくなくなり、むしろ上機嫌に笑っている。 「さ〜て。お祝いを兼ねて飯でも食べに行くか」 「うん!」 祐一の言葉に嬉しそうにことりはついていく。 気が付けば昼過ぎに入ったギルドも出てみれば夕方が近くなっていた。 こうしてことりは祐一の特訓の成果を遺憾なく発揮して見事Sランクハンター『風の妖精』となったのであった。 To be continued・・・ 追加設定 国崎往人 男 属性 氷 武器 剣 ランク S ギルドネーム 戦場の奇術師 言わずと知れたAIRの主人公。天空の騎士団団長を務め、その実力はかなりのものですが、今回はことりの白風のトリッキーな動きに翻弄されはしまし た。それでも十分強いです。性格が本編とかなり異なっている気がしますが、気にしないで下さい。一応職務に忠実、ということで。普段は大飯食らい のぐーたらなひとですが、お仕事の時は頑張る人なんです。違和感を感じたらゴメンナサイ。 白河ことり 女 属性 風 武器 鞭 白風 干渉する事で自在に操れる特別な鞭で、二本でワンセット ランク S ギルドネーム 風の妖精 今回の試験で晴れてSランクに昇格しました。実力としてはSランクの中でも中位から上位にかけての実力になりつつありますが、まだ実戦経験に乏し いのでまだまだ発展途上です。 |
|||