第7話 魔族との戦い
  水蒸気の中から姿を現したのは完全な姿で余裕の笑みを浮かべているフレイルだった。

  往人が確実に斬り落としたと思われるその右腕は完璧にもとのポジションで機能している。

  その上カウンターの形で背に攻撃を受けた往人の動揺は大きいものだったが、往人は雑念をかなぐり捨てて目の前の敵に全てを集中し直す。

  「じゃんじゃん行くぜ!」

  往人に構うことなく、火球でフレイルは攻め立てる。爆炎がうなりをあげる中で往人は足止めを食らい、今度はフレイルが先に動いた。

  「アアァァァァァッ!!」

  往人がフレイルの火球に踊らされる中、その全身から猛る炎が渦を作り出し、フレイルは往人と共に自らをその渦中に包み込む。

  やがて渦は二人の周りを完全な閉鎖空間へと仕立て上げた。

  「最高のステージへようこそ。ここがキサマの墓場だ!」

  この炎の渦の中はまさにフレイルにとっては最高のバトルステージに違いない。

  一方、往人にとってはただの灼熱地獄。その灼熱の炎が確実に往人の体を蝕んでいく。

  異常な量の発汗が全身から滝のように流れ、肌をぬらし、顔には苦悶の表情が浮かび上がっている。

  「さあ! 踊れッ!」

  叫びとともにダンスパーティー開始の合図となるフレイルの指を弾く音が響く。

  すると周りを渦巻く炎がフレイルの意志によって操作され、往人へと襲いかかった。

  「なんて厄介な!」

  周りを覆う炎の壁からは焔が噴出し、往人の身を焦がす。

  悪態つく暇もなく、容赦無いフレイルの攻撃が続く。

  剣でフレイルの剣を捌き、飛び出す炎を避ける。

  だが四方八方から襲い来る攻撃に往人は苦戦を強いられながらも果敢に戦い続ける。

  (このままじゃやられる・・・・・・)

  死を覚悟しながら策を労する往人。客観的な視点から見れば、それは万事休すを強いられた劣性に他ならない。

  フレイルのみならまだしも、猛る焔が往人を抑え、その隙にフレイルが襲いかかる。そして、焔の攻撃による往人の隙はフレイルにとっては充分すぎるものだった。

  最悪のシチュエーションが頭から離れない。

  だが、それでも往人は勝利を諦めようとはしなかった

  (博打と行くか!)

  腹をくくった往人は平静を装いながらフレイルに近づく。

  そしてフレイルの炎の剣が振り下ろされた瞬間、利き腕とは逆の左手でその剣を握りしめた。

  「ぐぅッ!」

  あまりの高熱が肌に触れる事でおもわず呻き声を上げるが、それを噛み殺し、歯を食いしばることで痛みを奥に押し込める。

  勿論素手とはいえ何もしていないわけではない。

  その手のひらには氷の魔法を応用してコーティングを施しているので、多少の熱はカット出来るがこれでは気休め程度が関の山。その証拠にフレイルの
  炎が往人の手をジリジリと焦がしているのが分かる。

  「馬鹿め! キサマはこれで蜂の巣だ!」

  瞬間、周囲の渦をなす炎が往人へ一斉放射を始める。

  だが、その窮地に於いて往人はフレイルの腕である剣を握り締めながら不適に笑った。

  「終わるのはキサマだ!」

  フレイルの剣を握りしめる手とは逆の右手に携えられた剣。丁度フレイルの死角となる位置で構えられていた剣には、既に銀色の光が収束していた。

  刃を覆うように輝く銀は、周囲の熱の影響で白い煙を薄っすらと出しながら確実に力を蓄えていた。

  そして、往人の思惑に感づくフレイル頃、決着の瞬間を迎えた。

  「銀翼翔破斬ッ!」

  銀の輝きを持つ剣が深々とフレイルの炎の四肢に突き刺さる。

  炎が氷混じり、触れ合った瞬間、白い霞を撒き散らしながら地獄の叫びが木霊する。

  「ぐおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉああァァァァァァァァァァァァッ!!」

  断末魔とともに苦しみ悶えるフレイル。

  顔全体に激情を露わにしながら痛みを訴える絶叫に対し、その全身を覆う炎は激しさを失っていく。

  そして次の瞬間、その炎の肉体を突き破って銀の翼が姿を現し、冷気を放ちながら氷の鳥が嘴により眩い光を放つ炎の塊を咥えながら姿を現した。

  それは炎が氷を生むという異様かつ幻想的な光景を描き上げていた。

  「かえせぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

  力の限り叫ぶフレイル。そこには全身を貫く痛みに耐えながら声を張り上げている様が如実に浮かび上がっていた。

  痛みと共に必死に哀願するフレイルは、銀の鳥が咥える炎の塊を血走った眼で見つめる。

  「エネルギー生命体のお前には必要不可欠だよな? この核は」

  炎の塊を一瞥すると、フレイルに向き直り、勝利を誇示するかのように往人は囁いた。

  エネルギー生命体とは、この世界に存在する生き物の中で火や水といった生物として存在するには異質な生命体の事である。

  その肉体は筋肉や骨格のようなものが存在せず、体をある物質一色で覆い尽くされている生命体である。

  フレイルの場合は炎であり、その核と呼ばれる動物などでは心臓に当たるものが壊される時が死ぬ時であり、言い換えれば核が壊されない限り死ぬ事は
  ないという事だ。

  往人は先ほど、フレイルの右腕が再生した事からこのことを類推していたのだ。そして、一瞬の油断が勝敗を左右することとなった。

  「それじゃ、死ね」

  往人はフレイルに死を宣告すると、僕の鳥にその命を下す。

  「やめろおおォォォォォォォぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

  往人の合図で鳥は嘴に咥えていた核を宙に放り投げると、その翼を振り、粉々に粉砕した。

  火の粉が美しく大地に散るその光景は美しいの一言だが、そのすぐ傍らでより強い断末魔が奏でられる。

  「ア゙ア゙ぁぁぁぁぁぁぁアア゙ァァァァァァァッ!!」

  核が粉々になると同時に薄れていくフレイルの四肢。薄れゆく熱。そして焔。

  振り絞られるようにして吐き出された声は地獄の叫びとなって周囲に木霊する。

  灼熱地獄を生み出していた炎の渦もそれと同時に消えてなくなり、辺りには先程目にした瓦礫がより一層無残に焼け焦げた町の姿が往人の視界に映る。

  「ザマァみろ・・・・・・っと」

  軽く吐き捨てるように勝ち誇ると、往人の体がくの字に折れてそのまま地面に膝をついた。戦いで力を使い切ったようだ。

  「後は任せたぜ、二人とも」

  天に広がる青空に向かいながらそう呟くと、往人はしばしの休憩を取ることにした。













  こちらは往人とフレイルとは違い、物静かな雰囲気が続いている。

  紳士的な服装で身を包む悪魔と、それを見据えながら手元の白風を構えることり。

  悪魔はその顔に冷たい微笑を浮かべながらことりを見つめる。というより、観察していると言い表す方が適当だ。

  ことりは自分が視線で辱められているような感覚に嫌悪感を覚えていながらも、無闇に動くことは出来なかった。

  それは悪魔の放つ異質な雰囲気がそうさせているのか否かはわからない。

  「私はギルといいます。よろしければお嬢さんの名前を教えてもらえませんか?」

  依然として丁寧な口調で話し掛ける悪魔ギル。

  ことりもそれに対してごく普通に答えた。

  「白河ことりです」

  「白河ことり・・・・・・いい名前ですね。そしてなおかつ美しい」

  ギルはことりを見ながら美しい美術品を堪能するかのように眺めるとそんな感想を漏らす。

  ことりはその言葉に背筋がぞっとするのを覚えた。ようは生理的に受け付けないキャラクターなのだ。

  「そろそろ始めませんか? あまり無駄な時間を過ごしたくはないのですけど」

  この短い会話ですら苦痛に感じたことりは、さっさと決着をつけてギルからおさらばしたいらしく、早々に戦いを申し出る。

  「それはそれは。では、こちから行きますよ!」

  ギルは自分の腕を真横に突き出すと、その腕が不自然な位置で途切れる。

  ことりはすぐに厭な気配を感じ取りその場所からすぐさま飛びのくと、今まで自分が立っていた場所にギルの腕が出現し、自分の元いた場所を貫いてい
  た。

  「空間を渡る力・・・・・・」

  「その通りです」

  「―――ッ!」

  回避した最中、耳元で囁かれたギルの声に反射的に反応したことりは、瞬間的に切り返して別の方向へと飛びのく。

  刹那、空を切るギルの腕を見ながら冷や汗を流していた。

  間髪いれずにまた姿を消すギル。

  ことりは出てくる瞬間の気配を探る。

  五感を研ぎ澄まし、ギルの現われる場所を読み取ろうと試みる。

  「そこ!」

  放たれる白風は景色がぼやけるその場所へと一直線に向かっていく。

  「チッ!」

  歪んだ景色から姿を見せた瞬間、眼前にまで迫っていた白風に驚き、咄嗟にその身を捩って無理矢理その軌道から回避に成功したギルだったが、もう一
  つの白風がギルを標的として既にことりから放たれていた。

  「くっ!」

  無理矢理な動きの後を狙われて、反応しきれなかったギルは白風がその身を軽く斬り裂いて行くのを許してしまう。少量の血がその切り口から飛び出す
  その色は赤とは違う色をしていた。

  だがことりの攻撃はそれだけにとどまらなかった。

  ギルを通り過ぎていった白風はきびすを返していギルへと再度攻撃を仕掛け、ギルもそれに気づいてすぐに回避する。

  「ウインドカッター!」

  ことりが魔法を唱えると、白風を避けたギルのいる場所へと真空の刃が素早く狙いをつけて襲い掛かる。

  「ぐっ!」

  空間を渡る暇さえ与えないことりの猛攻に押されてギルはその身に傷を増やしていく。整った服装はボロボロの布きれとなり、最初とはまるで違う風体
  となっている。

  この波状攻撃こそことりの真髄。白風の自由な動きと、魔法を生かして相手を網羅することで行く手を阻む多角的な攻撃。

  これこそことりが大成させるべき戦闘スタイルとしてもっとも有効な型である。

  それでもまだ発展途上にして穴のある技術の一瞬を突いてギルは空間を操作。そして、辛くも危機から逃げ仰せる。

  「小癪なッ!」

  自ら空間に姿を眩ませるのかと思いきや、自分に牙を向く白風を空間の中へ誘っていく。

  そして白風の先端が姿を現したのはことりの真横からだった。

  「キャアァッ!」

  ことりは咄嗟に地を蹴り、回避をするも躱しきれずにその身に赤い線を描いてしまう。

  流れ出ることりの鮮血を見てギルはさぞ悦の表情を浮かべているだろうと思いきや、その姿は既にいない。

  ギルにとってはこれほどの時間は空間を渡るには十分な隙だった。

  「先ほどはよくもやってくれましたね」

  白風を回避したことりは空間のトンネルの中を彷徨う白風を回収していると、すぐそばからギルの冷たい声が響く。

  ザシュッ、とギルの爪がことりの肌を肉薄する。

  「く、アッ!」

  ことりは飛び散る鮮血を見ながら苦悶の表情を浮かべるが、致命傷だけは回避する事に成功する。

  だが右腕は血を流し、先ほどより力強さが感じられない。

  「これで少しはおとなしくなりますかね」

  「いいえ。こう見えても諦めは悪いほうですから!」

  あまり力の入らない右腕はそのままに左腕に握られている白風を地面に叩きつける。その際に風の力を使って破壊力を増しているのは言うまでもない。

  地面が砕かれ砂埃が宙に舞い上がり視界をさえぎる。

  「陳腐な芸ですね」

  ギルは再度空間を飛ぶ。

  ことりはそれに気がついていのか動こうとはしない。

  だがその予想は違っていた。

  「そこ!」

  ギルの現われるポイントを読み取ったことりは地面に潜り込ませていた白風を解き放つと、ギルの体をがんじがらめにする。

  先ほど一歩も動こうとしなかったのはこの準備をしていたためで、ギルが空間を渡っている事に気がついていないわけではなかった。

  「しまった!」

  ギルは空間を渡っている間に起こっていることを見る事は出来ず、その間に地面の中に張り巡らされた白風の包囲網により掴まってしまう。

  死角から攻撃をついたつもりだが逆にその身を捕らえられるギル。もう少しでその爪がことりの体に突き刺さるという瞬間、地面から出てきた白風に反
  応しきれずに拘束されてしまった。

  「それじゃ、さよならです。風縛殺!」

  天使のような笑みもこのときのギルには小悪魔の冷笑に見えたに違いない。

  白風でがんじがらめに体を拘束されたギルを風が襲う。

  白風から風護障壁の時のように風が発生し、白風を竜巻が包み込むと、その風の回転にギルの肉体はミキサーに放り込まれた野菜のように斬り刻まれて
  いった。

  「ぎゃアアぁぁぁぁぁぁぁああァァァァァァァァッ!!」

  先ほどまでは考えられないほどに醜い絶叫とともに体を、そして命を風に斬り刻まれていくギル。

  絡み合う白風は縦横無尽にギルの体を包んでいるため竜巻の回転もそれと同じく様々である。

  ギルの体から流れる血が風に舞い上がり、辺りの地面にこびり付きながらもことりは風の勢いを緩めようとはしない。

  そして、ギルの断末魔が聞こえなくなってからしばらくしてようやくその風の呪縛を解放すると、中から出てきたのは絶叫のまま息絶え、無残な死に様
  を演出して去っていった哀れな悪魔のなれの果てだった。

  「女の子の肌を傷つける魔族には容赦しません」

  どうやら肌を傷つけられたのが相当嫌だったらしい。

  それ以上にことりはギルの性格や態度自体に嫌悪を抱いていたため、自然と拒絶の意識が攻撃に現われていたのかもしれない。

  ことりは傷ついた右腕を眺めるとポケットからハンカチを取り出して応急処置を施し、その場に腰を下ろして一息ついた。

  ことりの魔族との初対戦は勝利という形で幕を閉じたのだった。











  流れる風が静かに感じる。

  全てが無音の空間となったような静けさ、そして緊張感。

  何もかもが張り詰めている二人の間に流れる風は無音で去っていくように思え、そして凍えるように冷たく感じるような錯覚を引き起こす。

  祐一の前に立つ剣を持った魔族がそんな空間を作り出すのに一役買っているのは言うまでもない。

  フレイルやギルとは違い落ち着きを持ち、強かさのようなものが感じられる。

  それは『剣士』という言葉よりも『侍』という言葉が似合っていた。

  「我が名はハルバート。お前の名はなんと言う」

  侍ハルバートがその雰囲気に見合う厳格な口調で問うた。

  「相沢祐一だ」

  祐一もまたそれに動じることなく答える。

  「相沢祐一か。しかと刻んだ。それでは、始めようか!」

  互いの名前を交し合うと、その終了が合図となって戦いが始まる。

  地を思いっきり蹴ると、無駄のない動きで間合いを瞬時につめるハルバート。だが、祐一はそれを難なくかわす。

  (思ったより速い。中級かと思ったら上級クラスのスピードに届きそうだな。俺が読み違えるとは)

  冷静にハルバートの動きを分析しているが、その状況下でハルバートの動きを見切り、躱す祐一も凄いものである。

  「でやあぁぁぁぁッ!」

  怒涛の剣撃が嵐の如く襲いかかるが、祐一はそれを紙一重で躱しながらその動きを把握していく、

  そして反撃に出ようとその瞳にさらなる力が篭った瞬間。

  「―――!?」

  ハルバートは今まで怒涛の勢いで剣撃を繰り出していたのにもかかわらず、瞬時に飛びのき間合いを開ける。その額からは汗が流れていた。

  「お前は本当に強い力をもっているようだ。我が力の及ばぬような大きな力を」

  ハルバートは祐一の強さを本能的に察したのだ。

  祐一の瞳から一瞬にしてその強さを悟ったハルバートは自分が祐一よりも弱いということを素直に認める。何故かその顔に悔しいなどという感情が見受
  けられない。

  「それを悟ってどうする?」

  「強き者に殺されるならそれも一興だ」

  その一言に偽りは含まれてはいないということがその表情と台詞から読み取る事が出来た。

  何の迷いもない心の底から生まれる真実の言葉だった。

  「殺されると分かっていながらなぜ戦う?」

  「知れた事。我が人生は戦いとともにある。戦場こそが憩いの場所であり全て。その戦場で強者に撃ち滅ぼされるならそれもまた本望というもの。なら
  ばここで華々しく散ることが我が人生の終焉というのならば悔いなど微塵もないッ!」

  祐一が自分の人生を有終の美とするに相応しい人物だということを認め、死を覚悟しながらも戦いを挑むハルバート。

  それは一人の戦士として相応しい死に場所を求める姿であり、同時に自分を殺せるだけの強い者と巡り合い剣を交えるという彼にとっての人生の至福の
  時でもあった。

  そんな誇り高い戦士の申し出に祐一は真っ直ぐに答える。

  「いいだろう。キサマの死を華々しく演出してやる」

  「全ては一撃。次の一撃で私の命は散り、至福の瞬間を味わう事ができる。今この瞬間もまた我にとっては最高のひと時」

  感慨深げに今この瞬間に酔いしれるハルバート。

  だがそんな楽しみの時間には終わりがつきものだった。

  「・・・・・・待たせたな。決着をつけようか!」

  「おう!」

  更に強く各々の剣を握りしめると、まるで時が止まったかのように二人は微動だにしなくなる。

  実力に差があっても二人は立派な剣士。その二人が織り成すこの空間は刃のように鋭く、一種の結界を想像させる。

  そして街の一角が吹きゆく風に揺られ、瓦礫の欠片が小さく音を鳴らした瞬間だった。

  二人の影は閃光となり交錯する。

  一点でほんのわずか、コンマ何秒にも満たない刹那の世界に生きる住人となって交わり、生み出される鋼の旋律。

  周囲にエコーをかけながら広がる金属音。

  そして二人はほんの一瞬前までとは逆のポジションにお互いの背を向けながら勝負の余韻に浸っている。

  まるで現実から切り抜かれて絵画の中に収められたようなその光景が動き始めた。

  「・・・見事・・・・・・」

  ハルバートは遺言のような囁きを残して朽ちた。

  胸を横断するほどの大きな傷を受け、血の飛沫を上げながら地面に沈む様は剛胆な侍の終焉には相応しい一瞬と言える。

  「殺すには惜しい相手だったな」

  嘆くようにして祐一は呟く。

  戦ったからこそ、戦いの中だからこそわかる事もある。祐一は戦いの中でハルバートという魔族が生粋の戦士である事を感じ取ったのだ。

  そして戦いの中でしか生き様を見つけられない不器用で損な生き方しか出来ない魔族ハルバートという存在を亡くす事を惜しんでいた。

  魔族の死を惜しいと思うなど、人間にしてみればおかしな考えではあるが祐一はそう思わずにいられなかった。

  祐一は言い知れぬ胸のつかえに釈然としないままハルバートの亡骸に背を向ける。

  「―――!?」

  しかし祐一は、全身に電流を流されたかのように瞬時に振り向く。

  そこにいたのは先程祐一の一撃で完全にその命を断たれたハルバートその人だった。

  受けた一撃による傷は見当たらず、悠然とそこに立ち尽くしているが、先ほどまでとは纏う空気が違っている事に祐一もすぐに気がついた。

  ただ、今までとは違う異質な空気。

  それが意味するのは目の前の侍は先ほどまでとは全くの別人と化していると言うことだ。

  「キサマ、誰だ?」

  祐一はその声に力をこめて目の前に立つ誰かに言う。

  「クックックッ・・・・・・さあ、続きといこうじゃないか」

  その声はハルバートの重い厳格のあるものとは違う声だった。

  相手を嘲笑うような嫌味な声に虫唾が走る思いを祐一は感じ、心の中に怒りを覚えていた。

  新たな敵の目覚めと共に一つの感情に火が点る。

  それは愚行にして蛮行。それを当事者は気づくことはない。

  過ちを犯した死者にとり憑く亡霊との戦いが始まる。




To be continued・・・


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