| 第13話 紅蓮の裁き | |||
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煌めく紅い海原に身を委ね、黒煙と建物の焼ける臭いに包まれながら破壊を続けるドラゴン。 解き放たれたその力は押さえの効かない暴れ馬の如くただひたすら破壊という行動を繰り返す。 その吐息である灼熱のブレスが町を焦がし、あたりの風景を飲み込んでは消し炭へと変えていく。 夜の闇に浮かび上がる町並みは赤々と美しく、そして儚く消えていく。 だが破壊の暴君と化したドラゴンの元へと祐一は迷うことなく歩み寄っていく。片手に携えられた剣が炎の輝きを映しながら躊躇うことなくドラゴンを目指し、同じ舞台へと登壇する。 「哀れな紛い物の命などこの世にあってはならない。ましてやこの世界にない力など、なおさらだ」 剣に込められる力に比例して、祐一の体から徐々に吐き出される冷たいほどの威圧感。灼熱の中でも絶対零度に凍りつくような空気が立ち込める錯覚を覚えるほどの緊張感が辺りを 支配していく。 「悪いが死んでもらうぜ!」 それがこの戦乱祭りの最終ラウンドを告げるゴングとなった。 地を蹴り、オレンジ色の波を後目に疾走しながらドラゴンへと間合いを詰めていく祐一。 ドラゴンもその気配を察し、口を全開に火炎の吐息で祐一を燃やし尽くそうとするが、それをむざむざとくらうほど祐一も愚かではない。 真横に飛び、フットワークを生かして瞬時に回避するが、その先にはドラゴンの尾が待ち受けていた。 風の唸りとともに巨大な尾が祐一に襲い掛かるが虚しく空を切る。 だがドラゴンの攻撃は留まることなく続き、口から広範囲に広がるブレスが景色ごと燃やし尽くそうとするが祐一はそれを正面から突き破った。 その前面には光の障壁が展開され、祐一の身を護っている。そしてそのままドラゴンの顔面を一閃すると、その右目を縦に斬り裂いた。 ぬらりと血のまとわりつく感触と、肉を抉るような無骨なサウンドを携えて炎色の血が夜の闇に踊り、そのパートナーを務めるようにしてドラゴンの咆哮が響き渡る。 喉を潰しそうなほどに掠れた絶叫が鼓膜を叩く中でそれを気にする事無く祐一は大地に舞い降りた。 だがそれと入れ替わるようにドラゴンは悲鳴とともに右目から血を流し、荒れ狂うように翼をはためかせて飛翔すると夜空へ舞い上がった。 その様はまるで夜に輝く不気味な太陽を思わせる。 翼によって発生したすさまじい突風が瓦礫とともに祐一を吹き飛ばそうとするほどの勢いで吹き荒れる。炎が風にあおられ熱風となり、辺りに吹き荒れる。 そして、上空で口を大きく開くと火炎の流星を降らせ始めた。 焔の星屑が大地に降り注ぎ、爆音とともに町をさらなる灼熱地獄に変えていく。 流石に祐一も空を飛ぶことは出来ないため、反撃のチャンスを見失ってしまった。 怒号と共にドラゴンはその巨躯を反転して急降下し、祐一に突っ込んでいく。 大地を削り取るようにその爪を振るが祐一はそれを回避。同時に反撃を試みるが、流石に降下するドラゴンのスピードを捉える事は出来なかった。 ドラゴンは自らの生まれ持っての能力を生かして悠々と攻撃を仕掛け、傷の恨みを果たさんと襲いかかる。 だがそれも虚しい奮闘になろうとはこの時のドラゴンは思いもしなかった事だろう。 この圧倒的な位置的な差を持ちながらも焦りという言葉を祐一の表情から感じる事は出来ない。むしろその差を感じながらもそれを補って余りあるほどの余裕を感じさせる表情だった。 そしてドラゴンの急降下からの攻撃が再度仕掛けられ、その巨体が三度夜空へと舞い上がった時。祐一はその手に握られている剣を掲げながら声を高らかに叫んだ。 「さあ、目覚めろ!太陽より強く。そして穏やかに光り輝け!聖皇剣!」 まさに神秘なる輝き。 力強さと神々しさを兼ね備えた比喩し難いその輝きは穏やかな抱擁をするように剣を包む。 神が与えたとしても過言ではないほどのその剣は、赤に揺らめく中で唯一白く神秘の輝きを放っていた。 そしてその力を引き出す時、光は全てを滅する浄化の力となる。 「神魔夢幻流 光ノ型 光刃・輝流閃!」 神速で振られる剣から放たれる無数の光の刃。剣を振る腕もまた幻のように霞んでブレているほどの速度はまさに文字通り神速と言える。 解き放たれた力が刃となり、一斉にドラゴンの体に食らいつく。 まるで光が質量を持ち、物質となって研ぎ澄まされたように鋭い光の刃がドラゴンの体をすり抜けていった。 そう。それはまるで何もなかったかのようにスルーして見えた。 だが杞憂する暇もなく幻想は現実にその姿を変えた。 咆哮とは違うけたたましい叫び声がドラゴンという壊れたスピーカーから流れると、その四肢は数個の巨大な肉の塊となって大地に突き刺さった。 大根を包丁で切ったように綺麗な切り口をしたドラゴンの肉片が紅蓮に沈んでいく。 のしかかる重低音とともに煙で視界を奪いながらあたりを揺らし、ドラゴンの体は大地に転がった。 無残にもついさっきまで暴れ狂っていたドラゴンも今はただの肉塊へと退化している。 小さく痙攣しながらまだ死にきれていないドラゴンを見る祐一。だが、ただ傍観するだけではなく、この哀れな紛い物を天へと導くための過程を踏んでいるところだった。 「邪悪を滅する聖なる光よ 神の恩恵を授かりし力 大いなる輝きで全てを浄化せよ!」 詠われる言葉。 それは強力な魔法を放つための詠唱。 大きな力を引き出すためには、それを発現するためのきっかけが必要となる。ただその魔法の名を呼ぶだけでは不十分で、その力を呼び出すための詠唱が必要となるのだ。 そして祐一は詠唱を終えると、無残に散らばった欠片から距離を少し置いたところで編み上げた力を解き放った。 「セイクリッドフィールド!」 巨大な光が天を貫くその光景はホーリーに酷似してはいるものの、その威力はホーリーの比ではなかった。 天を貫く光は柱という表現を超えて巨大な円柱の塔を思わせるほどの規模である。 天空へと迷う事無く昇っていく光の中に収められたドラゴンの肉片は、光に抱かれながら徐々に消え去り、光の粒子となって昇天する。 神々しい光がやがて収まり、目に入る光が町に放たれた炎の放つオレンジ色の光のみになった頃にはドラゴンの肉片は欠片もなくなっていた。 幻想的かつ圧倒的な力を前にして言葉を失う純一達。方や黒田は目の前に存在していたはずの自分の最高傑作が跡形も無く消え去り、敗れてしまった事に愕然としながら 意識が夢と現の狭間を彷徨っていた。 そして今までドラゴンがその猛威を振るっていた場所から祐一が悠然とその姿を現すと、フリーズしていた純一達が再起動する。 「すっげぇなっ! ドラゴンを倒すなんて流石SSランク!たいしたもんだぜ!」 「一体どうやったんですか!?あまりに一瞬で何があったのかわかりませんでしたよ!」 「最後の究極魔法も凄い威力だったよ!」 「ホーリーノヴァもそうですが、セイクリッドフィールドも一般のレベルを凌駕してますよ!すごかったなぁ」 ドラゴンを目の前にして勝機を見失っていた純一達は祐一がいとも簡単にドラゴンを葬った事に驚きを隠せない。 姿を現した祐一の元に駆け寄ると、興奮冷めやらぬまま口々に祐一を褒めちぎるが祐一の表情はいまだ険しさを帯びたままだった。 そしてその鋭い視線の先にはこの事件の首謀者である黒田蓮治の姿があった。 黒田は先ほどまでの余裕など嘘のように身を震わせながらブツブツと何か呟いている。自信という彼の根底に存在していたものが音を立てて崩れた結末がまさにこれだった。 「嘘だ・・・嘘だ・・・・・・私の最高傑作が、こんなヤツに・・・・・・。ありえない・・・ありえない・・・・・・!」 それはまるで呪詛のように繰り返し繰り返し彼の口の中で呟かれ続ける。 崩れ去った自信とともに精神までもイカレたのか、正気の沙汰とは思えない黒田の姿は惨めとしか言い様がなかった。 「黒田」 黒田は自分の名を呼ぶ祐一の言葉を認識すると、繰り返していた呪詛を中断し、全身をビクッと振るわせる。 殺気のこもった声からこれから黒田の身に下されるものは何かということを感じ取ったようだ。 「覚悟はいいな?」 殺気に上乗せされるように怒気が追い討ちをかけて黒田に襲いかかる。 その怒りは町の住人を無残な姿へと変えてしまったことによるものだろう。命を弄ぶ者に人一倍厳しい祐一にしてみれば当然の行動だった。 「くっくっくっ・・・・・・あはははははははははっ!」 だが怒れる闘神の逆鱗に触れた愚者は、その愚か振りを更に露呈するかのように突然狂ったように嗤い、それを傍観する者達は奇声に思わずたじろく。それでも祐一だけは依然とし て動揺することなく黒田を見つめていた。 「何がおかしい」 冷たい声で問い掛ける祐一。 それは零れる言葉が白く色づき、雪に沈む樹海で会話をしている気分になるほどの冷たい声だった。 「これが笑わずにいられるか!ドラゴンを簡単に殺す人間などという珍しい存在が今、私の目の前にいるのだから!科学者として歓喜せずにいられるものか!」 この期に及んでまだ次の探究心に刈られ、あまつさえ歓喜しているこの男にみな背筋がぞっとしていた。 死を目前としてこのような態度を取れるなど、既に正気の沙汰の範疇を大きく逸脱しているといえる。 「キサマにとって研究の過程で失われていった命はその程度・・・・・・ん?」 黒田の言葉に怒りを覚えた祐一は怒声を吐き捨てようとするが、その最中で何かに気が付いたように口をつぐんだ。 そして懐に差し伸べられた手には一つの玉が握られていた。 その玉は白翼神の魔玉のように中に牙が収められており、色は赤々と紅蓮に色づいていた。 それはまるで祐一に何かを伝えるように不規則なリズムで光を強めながら輝きを放っている。 「出たいのか?・・・・・・仕方ない、出してやるよ」 しばし考え、迷いながらも決心したようにその玉を握りしめるとそれを黒田にむけるようにして構えた。 「出てこい、紅蓮皇!」 瞬間、紅の輝きの中に姿を消す魔玉。 入れ替わるように紅い光の中から現われたシルエットは四本の手足を持ち、その全てを用いて地に君臨していた。 光の中からも見て取れる逞しい肉体。頭部に雄々しく揺らめく鬣。 徐々に光が収まると同時にはっきりとその姿を現すと、現われたのは紅蓮の炎の鬣をなびかせ、鋭い爪と牙を持った体長二メートルほどの勇ましい獅子の姿だった。 「お久しぶりです、マスター」 丁寧な口調で祐一に一礼しながら言う紅蓮皇。 「な・・・んだ・・・・・・?」 流石の黒田も未知の生物が人語を解している光景に間抜けな言葉を呟きながら驚いている。それは純一達も同じだったが、すぐに警戒の色を濃くした。 だがそんな周りの反応など気にかけることなく紅蓮皇は黒田に向かって問いかけた。 「黒田といったな。キサマに問う。命とはなんだ?」 先ほどとは違い、どこか偉そうな口調で黒田に問いかける紅蓮皇。 いきなり姿を現した化け物に問いただされ、事態を把握できずに困惑する黒田。だが紅蓮皇は再度黒田に問う。 「今一度問う。キサマにとって命とはなんだ?」 重みのある低めの声で紅蓮皇は黒田に向かって再度同じ質問を投げかけると、黒田もようやくこの光景が現実である事を理解したらしく質問に対する回答を述べた。 「私にとって命など無価値だ!私の好奇心、探究心という欲望を満たさないものなど紙切れ同然の価値しか存在しない!私の研究の礎となって死んだ者達の命に何の感慨も湧かん。 そんなことよりも今目の前にいるおまえの存在の方が私にとっては重要なのだよ!」 力強く断言しされた外道の言葉を耳にして、純一達は反吐が出るといった面持ちで黒田を睨みつける。 それは祐一も同じで、その隣に控える紅蓮皇は無表情にその言葉を聞いていた。 「それがキサマの答えか。ならば、判決だ。キサマは、苦しんでシネ」 紅蓮皇の言葉の終わりとともに審判は下された。 猛る焔の叫びと共に黒田の四方を囲む形で発生した四つの火柱。天高く夜空に向かって猛るそれは黒田の頭上で一つとなり束ねられると、流星の如く黒田の頭上に降り注いだ。 「ギャアアアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ああァァァァァァァァァァァァァッ!!」 燃え盛る炎の中で黒田の叫びが木霊する。 全身を炎に焼かれながら焦がされる四肢は肉を焼く独特の臭いを撒き散らし、その熱は死に至らしめる事の無い限界ギリギリの温度に抑えられている。 「ぎぃゃああぁぁぁぁぁぁぁッ!!熱いいぃぃぃぃいいぃぃぃぃッ!!焼けるうぅぅぅぅぅぅぅぅあァァァァァァァァッ!!」 紅蓮皇の言う通り、苦痛の伴う最悪の死に様である。 いまだ収まることのない醜い叫びが反響する中で、紅蓮皇は黒田に吐き捨てるように手向けの言葉を送った。 「命引き裂かれ、全てを失う辛さを知らぬ小さき者よ。キサマには紅蓮の裁きとともに黄泉への片道切符をくれてやる!」 威厳を持った紅蓮皇の態度に純一達は息を呑むみながら燃え盛る炎の中でいまだ生と死の狭間で苦しむ黒田を見つめていた。 流石にここまで苦しむ姿を目にすると同情もしたくなるが、黒田蓮治という科学者はそれ相応の裁きを受けるだけの罪を犯したのだ。これは当然のことといえるが、それでもこの光景を 直視するには辛すぎる光景だった。 「その醜い声も耳障りだ。燃え尽きろ!」 黒田の醜い叫びに苦を感じた紅蓮皇は、いい加減無駄な時間を費やすことも無いだろうと判断し、火力を一気に上げる。 「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――・・・・・・」 勢いの増す炎の中で響き渡っていた声も燃え盛る炎とともに消え去り、灰も残らないほどに見事に燃え尽きてしまった。 跡形も無く消え去った黒田を見て少しだけ満足げな表情を見せる紅蓮皇は隣にいる祐一に向き直った。 「あまり気に病まないよう。マスターが無力な訳ではない」 「ありがとう、紅蓮皇」 祐一の様子を気にかけてくれる紅蓮皇に対してその頭を優しく撫でてやると、紅蓮皇は気持ちよさげに喉を鳴らしながら祐一にじゃれる。 その辺は流石に猫科だと思うが、周りの者達はそんなことよりも祐一は熱くないのかと思うばかりだった。 「いきなり凄いのが出てきましたね」 「ああ。どう見たってあれは魔物だよな」 「見たことありませんけど、多分そうですよね」 いきなり現われた紅蓮皇に対して口々に言う純一達。 その姿を見て魔物と判断し、明らかに警戒と敵視の眼差しを送っている。 そんな中、紅蓮皇は純一達の言葉を聞くや否や反論した。 「そこの人間達、勘違いするな。我は誇り高き魔族ランドボルケノフ。そのような誇りも持たぬ輩と同じ枠で括られては困る」 やや怒りを孕んだ口調で威厳を前面に出しながら紅蓮皇は雄弁に説く。 その瞬間純一達は警戒心をさらに強くし、あまつさえ武器を構える。 それに反応するように紅蓮皇もまた攻撃の態勢を取ると、祐一がそれに待ったをかけた。 「待ってくれ。こいつは誇り高い一族の末裔として、常に気高く生きる事を心がけている分、何かと堅い所があるが悪いヤツじゃない。魔族だからって恐がる必要も無いぞ」 紅蓮皇の態度に対して純一達が誤解を招きそうなので、祐一がフォローをいれてその場を和ませる。 紅蓮皇も祐一には従順で、撫でられる様は子猫と変わりない。 「ホントだろうな?」 「ああ」 祐一の真っ直ぐな瞳を見て嘘ではないと判断した純一から順に武器を下ろし構えを解く。 「安心したよ。いきなり魔族なんて言われたからビックリしちゃった」 「それにしても炎のライオンさんですか。綺麗ですね」 「その言葉、褒め言葉としてありがたく受け取っておく」 何とも偉そうな口調だが、どうやら性分のようだ。 まるでどこぞの国のお偉いさんのような口調で受け答えをする紅蓮皇をみんなは珍しげに眺めていた。 「マスター。我はそろそろ戻ります。此度は無理を言ってしまいすみませんでした」 無理言って外に出してもらった紅蓮皇はマスターである祐一に謝罪を述べると、地面すれすれまで頭を下げて礼をした。 それが誇りある紅蓮皇にとって付き従うマスター祐一に対する精一杯の忠誠と敬意を示しているのは明らかである。 「気にするな。おまえの気持ちもわからないわけじゃないから」 「ありがとうございます。それではこれで失礼します。また、何か御用の時は何なりと」 「ああ。わかった」 紅蓮皇はそう言い残して紅い光に包まれながら元いた魔玉の中へと戻っていった。 魔玉の発光が収まると、それを祐一はもとあった懐へと戻す。と、同時に純一が尋ねた。 「しかし、ドラゴンといいさっきのライオンといい凄いな、相沢」 「ですね。昨日今日で珍しいものばかり見せてもらった気がします」 「人をまるで芸人のように言うな。それはいいとして、とにかく今は少し休もう。日が昇るまでせめて寝ておかないと、明日からきついんじゃないか?」 純一がまるで奇天烈なモノを見るような目で言うのを聞いて反論する祐一。だがそんなことは些細な事と流すようにして話を切り替える。 かれこれ騒動に巻き込まれているうちに夜明けまで二時間程度という時刻にまでなっていた。そのため少しでも睡眠をとることを提案すると、それにみんなも賛同した。 「そうですね」 「そうなんだお〜」 「・・・・・・立ったまま寝てるの?」 そんな中、既に夢の住人となっていながらも現実と交信をする者も一名のみ存在していた。 「名雪さんの特技です」 「名雪の平均睡眠時間は12時間ですから」 お約束の如く名雪は立ったまま寝ていた。 既に発言は寝言となっており、目は糸目になっている。耳を澄ませば、くーという寝息が聞こえ始めていた。 「・・・・・・人間じゃないな」 ポテトの件に続き、これまた天然記念物でも見るような眼差しで名雪を見ながら一言感想を述べる祐一。確かに睡眠時間が半日近いというのは人間のレベルではない。 おまけに寝ていながらもまともに活動している様は世間一般の常識の枠では考えられない。むしろ世界の研究者達が名雪の生態について調べたくなったとしても何ら不思議は無いだ ろう。 そして、音夢が名雪をうまい具合に誘導しながら被害の少ない建物の中を無断使用して夜を明かした祐一達。 一晩にしてその人口を失った死霊の町は夜明けとともにもぬけの殻となったゴーストタウンとして日の出を迎えた。 荒れ果てた町に残されているのは瓦礫の山と辺りを焼き尽くした炎が収まり、姿を現した消し炭や灰だけだった。 戦いの後に残された虚しさと大きな傷痕を胸に祐一達の夜は明けていった。 To be continued・・・ |
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