| 第15話 二つの再会 | |||
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一変して二人の間に流れる緊迫した空気。 舞の突然の挑戦状に純一達は完全に蚊帳の外に放り出されている。 この状況の中心となっている祐一と舞は依然と互いを見つめた、というか舞の場合は睨みつけたまま膠着状態を保っている。 徐々に周りの人間も何事だと好奇の視線を二人に向け、ちょっとした騒ぎとなっていた。 「と、とにかく舞さん、ここじゃ騒ぎになりかねないから一度城の方に移動しませんか?」 この状況をいつまでも放っておくのはまずいということで、純一が場所を変えることを舞にすすめる。 「・・・・・・わかった」 舞もそれに応じると、ファンシスタ城へと向かっていった。 祐一達はその場を移動し、ファンシスタ城内へとやってきた。そして城内を移動してとある場所に辿り着いた。 大きな扉をくぐり、室内に入るとまず目に付いたのは大きなリング。正方形にかたどられたリングは武道会か何かでもやるのではないかというほどに立派に作られた物だった。 その周りには純一達と同じ服装に見を包んだ男女が何人もいる。おそらくこのファンシスタを護る騎士団である幻想の騎士団のメンバーだろう。 中に入ると全員の視線がこちらへと向けられ、一瞬にして注目の的になる。 だがその中にいた三人の表情は驚きと喜びに満たされる事となった。 「こ、ことり!?」 「白河先輩ですか!?」 「無事だったんですね!」 青いショートへアーの眞子、逆にロングヘアーでポニーテールの萌、ショートヘアーでオレンジっぽい色の髪の美春。三人は現われたことりの姿を見るや否や駆け寄っていった。 「眞子!美春ちゃん!萌さん!」 ことりも三人の顔を見ると嬉しさを顔いっぱいに浮かべながら駆け寄っていった。 「白河先輩、生きてたんですね!美春、心配してたんですよ!」 「ホントだよ。でも良かった」 「ホントです〜」 「やっとみんなに会えて、ホント良かったよ」 手を取り合いながら再会を喜ぶ四人。 久々に会った友人の姿を目の当たりにしてことりの胸につかえていた不安が取り一つ消えていった。 「ふっ、俺の思ったとおり白河は生きていたのだな」 「杉並君!?いつの間に・・・・・・」 いきなり姿を現した黒髪の青年は杉並という。ちなみに下の名前は本人の希望でトップシークレットとなっている。 そんな杉並のまさにどこからとも無く姿を現した様は神出鬼没といった感じだ。 「おまえにしては遅かったな。いつもだったら何かあると真っ先に飛んでくるおまえが」 「諜報部としての仕事でな。それに、ちょっとしたプレゼントを用意していたところだ」 そう言ってニヤリと不敵に笑う杉並。ちなみにこの笑みを浮かべるとき、杉並は何かしら悪巧みをしていることが多いというのは純一談。 「プレゼントだぁ?」 杉並から出た言葉に疑いを隠せない純一に対し、目の前の杉並は自信たっぷりに構えていた。 「そろそろ届く頃だな」 と言った矢先、純一の経験則に反してタイミングを計ったように杉並の言うプレゼントが届いたのだった。 「ことり!」 「―――!お姉ちゃん!」 杉並の言うプレゼントとはことりの姉である白河暦の事だった。 髪の色はことりに似ているが、その姿は白衣に包まれ音夢たちの言っていた研究員らしい姿をしている。 髪は短めで、メガネをかけている様が研究員らしさとともに知的な大人の女性を演出している。 「ことり!ホントに心配したんだから!」 「ゴメンね、お姉ちゃん。心配かけて」 暦の瞳からは既に我慢の限界を越えた大粒の涙が流れていた。 それはことりも同じ事で、さらに久しぶりの姉妹の再会を目の当たりにしてもらい泣きする者も中にはいた。 それからしばらく互いの存在を確かめるように抱き合いながら、ことりと暦は再会の喜び合を分かちあっていた。 そして数分後、ようやく二人は落ち着きを取り戻すと抱きしめ合っていた体を離したのだった。 「杉並君も憎いことしますね」 「このくらいのサービス、感謝こそされてもバチはあたらんだろ?」 「杉並にしてはまともな心配りだったな」 「何を言う。俺はいつもまともな事しかしないぞ」 「それはどうでしょうね?杉並君の破天荒さはタチが悪いですから」 さらりと笑顔で言う音夢。裏音夢での毒舌モード炸裂である。 「さらりと酷いことを言わないでくれよ〜朝倉妹〜」 泣きながら、というかウソ泣きをしながら音夢にすがりつくように接近する杉並。 音夢は後ずさりしながらも杉並の死角となる場所からなにやら取り出そうとした矢先、純一がストッパーとなる。 「その辺にしとけ、杉並。感動の再会がぶち壊しになる」 「それもそうだな」 ギャグモードを解除すると、杉並は音夢に詰め寄るのをやめる。 しかしその裏では広辞苑を握りしめながら殴り損ねたと舌打ちをする音夢がいたとかいないとか。 兎にも角にも白河姉妹の再会が終わると、ぞろぞろと集まる人だかり。幻想の騎士団である。 「何だかよく分からんが。朝倉、どういうことだか説明してくれないか」 女性が大半を占める騎士団員の中でも数少ない男である金髪の髪の毛に、癖毛がアンテナのように生えている青年北川潤が言う。 「ああ。何だか知らんが、舞さんが祐一に戦いを申し込んでな。それでここに来たんだ」 「祐一?」 ウェーブの髪をなびかせながら凛々しさ漂う女性、美坂香里が誰それ、といった様子で言う。 「途中で私たちを助けてくれた人のことだよ」 「あら、そうだったのですか。お礼を言わなくてはいけませんね」 すると青い髪の三つ編みと笑顔が印象的な女性、水瀬秋子が母性的な笑顔を浮かべながら話しに加わってきた。 「相沢祐一です。少し場所をお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」 紳士的な態度で秋子に場所を借りるために了承を得ようと笑顔で挨拶をする祐一。 このとき、この場にいた女性陣のほとんどが顔を赤らめていたりする。だが秋子は至って平然とした態度で祐一の願いに応対した。 「了承。構いませんよ」 「そうですか。ありがとうございます」 秋子から了承の一言をもらうと、祐一は舞について来いと言わんばかりに無言のままリングへと上がっていった。 それに続き舞もリングに上がると武器を構えた。 祐一も剣なら舞の武器もまた剣だった。だが、祐一はその腰に下げられている剣を抜こうとはしない。 「なぜ剣を抜かない?」 「なら抜かせてみろ」 「・・・わかった」 祐一の態度に対して馬鹿にしているのではないか、と周りの連中は思っているかもしれないが、舞はまったくそのようなことを考えてはいなかった。 むしろ後悔させてやると言わんばかりに闘志をメラメラと燃やしている。 徐々に高まる緊張感に周囲もまた飲まれていく。 祐一は依然としてリング上に仁王立ちのままで、舞は剣を構えたまま祐一の様子を伺っている。 二人の距離は約五メートル。そして先に舞が動いた。 「刹那!」 初速ゼロからの先制攻撃。 まさに刹那の瞬間に立ち位置から祐一のいる所まで一足飛びに間合いを詰め、攻撃を仕掛ける舞。奇襲と呼ぶに相応しい初撃だった。 だがその一撃は虚しくも空を切る。 祐一もまたそれを見越していたかのようにその一撃を躱すと、すれ違いざまに手刀を繰り出すが舞はそれをしゃがんで回避すると同時に足払いをかける。 だがそれも祐一は軽く飛んで回避しながら一蹴。 しゃがんでいた舞は回避する術が無いため、その蹴りをガードするが体勢が不安定で押し切られてしまう。 だが舞も吹き飛ばされる方向へと飛んでいたため威力を軽減できた。 吹き飛ばされながらも立ち上がる舞だが、先ほどのダメージは少なからずあるらしい。流したとはいえ、まともにくらったには変わりなかった。 そして祐一を再び攻撃対象として見定めようとした矢先の事だった 「―――ッ!?」 舞のすぐ横から津波のよう叩きつけられる殺気を感じ、反射的に回避運動に移る。 背筋が凍るような危機感を覚えながら前方に飛ぶと、祐一の蹴りが舞の頭があった場所を掠めていた。 そしてまだ蹴りの余韻が残る祐一に対して舞は容赦ない追撃を仕掛ける。 「せいッ!」 舞は最短距離を攻撃するために突きを放つ。 矢が標的を射抜くように真っ直ぐ祐一に向かう舞の剣。 しかし祐一は一瞬にして体制を立て直し、その剣をかいくぐり舞の懐に潜り込むと舞の腹めがけて掌底を放つ。 「ごふッ!」 腹部に走る鈍痛を感じながら舞の体は慣性と祐一の攻撃による二つの力によって倍増された威力によって大きく後ろに吹き飛ばされると、地面を無様に転がった。 だがきつい一撃をくらったものの、舞の闘争心はまだ燃え尽きてはいなかった。 受身を取ってからの反撃。物理法則など無視するかのように体を限界まで酷使して地面を蹴ると、更に祐一にその剣を向ける。 舞は正面から叩くのではなく、リングの石版を突きで破壊して祐一の視界を奪う。 「はぁッ!」 だが祐一はそれを全て素手で弾き飛ばしてしまう。 同時に別角度からは舞の剣が飛来するもそれをきちんと回避し、常に反撃を狙って感覚を研ぎ澄ましている。 現に祐一の眼光は舞を射抜き、反撃を渋らせるほどの殺気を持っていた。そのため舞は追撃をしようとしたのだが中途半端に終わり一度距離を置く。 「はぁ・・・はぁ・・・・・・」 舞は息を乱しながら祐一を見据える。 額からは汗が流れ、疲労の色が濃い。ダメージもあるがここまでの疲労をするほどの運動量、そしてダメージではないはずだ。 そこには祐一の殺気に当てられての精神的疲労が大きく関係していた。 対して祐一はその姿をやや距離を置いた所から眺めている。 「どうした?剣を抜かせるんじゃなかったのか?」 祐一は普段からしてみれば考えられないほどに挑発的な言葉を舞に向けて放つ。 舞もまたその挑戦を正面から受け止めると、冷静さを欠くことなく祐一のリクエストに応えた。 「・・・・・・なら」 「まさか!舞さんアレを出すつもり!?」 「こんなに早く出すのは秋子さんと鍛錬する時くらいだな」 ギャラリーにどよめきが走る中で舞は神経を研ぎ澄まし、集中力の末に闘志を高める。 そして絶頂に達した気迫の下、剣を構えるのではなく名前を呼んだ。 「出て来て、藍」 すると舞のすぐ隣に少女が現われる。 突然現われた藍と呼ばれたその少女はどことなく舞に似ているがその姿は幼い。 少女は宙にふわふわと浮びながら舞に話し掛けた。 「苦労してるね、舞。祐一相手じゃ仕方ないか」 「だから力を貸して」 「うん。オッケー!」 舞とは真逆の明るい性格の藍は舞に力を貸すべくその姿を風に変えると、空気に溶け込み舞の周囲を流れる風となり全身を覆う。 リングに流れる微風が心地よさを演出するが、舞の存在感は先ほどよりも数段増していた。 「はぁッ―――!」 先ほどよりもさらに速い攻撃が繰り出されると、祐一の表情が一気に厳しくなる。 初撃より遠い間合いからの攻撃だが刹那よりもさらに速いスピードで間合いを詰めると、繰り出された剣を祐一は避けるが先ほどよりも余裕は無い。 真後ろに飛んだのが運の尽きとなり舞に掴まってしまう。 「斬舞!」 繰り出される無数の乱撃が祐一に襲いかかると、祐一はそれを見切りひたすら回避する。 舞も根気よく攻め続け、祐一が逃げる隙を与えない。 回避と攻撃がひたすら繰り返され、時間だけが消費されていくように見えた。 だが舞の攻撃がとうとう祐一の肌を捉えた。 祐一の白い肌に走る紅い線、そして流れる血。それでも舞の攻撃は止まることなく祐一を攻め立て続ける。 「チッ!」 舌打ちとともに甲高いソプラノが響きわたる。 そして止まる舞の剣の先には、先ほどまで腰に収められていた祐一の剣があった。痺れを切らした祐一にとうとう舞は剣を抜かせたのだ。 「第一関門クリアーだ」 そして祐一は舞の剣を押し切ると、舞と若干の間合いを広く取る。 舞はそれに従うようにして押し切られた。 「次で見極めてやる」 その言葉に舞は無言で首を縦に振った。 戦いの始まる間際を越える緊張感が二人の周囲を支配すると、二人は最高の一撃を放つために心技体を最高の状態に高めていく。 膨れ上がる二人の闘志にギャラリーは魅入られながらもその様子を固唾を飲んで見守る。 そして決着の時が来た。 二人同時に地を蹴ると、互いの影が交錯する。 舞は袈裟斬り、祐一は右切り上げで応戦する。 一瞬の中でのやりとりが今、ここに決着を描こうとしていた。 そして二つの閃きは交わった。 剣同士がぶつかり合い、奏でられたメロディーが同心円状の波紋を描いて伝搬する。同時に空気は名残故かいまだに凍てついたままだった。 そして二人は互いに背を向け合う形となり、重い沈黙が訪れる。が、それもすぐに打ち破られた。 カラン、という何かが地面に転がる音とともに舞が膝をついたのだ。 「くっ・・・・・・私の、負け」 地面に転がり落ちたのは舞の剣だった。 膝をつきながら悔しげに顔をゆがめる舞の側に、今まで舞に力を貸していた藍が姿を現し安否を気づかう。 「舞、大丈夫?」 「怪我はたいしたこと無い。多分、祐一が気を使ってくれた」 舞の体には打撃によるダメージはあっても斬られた痕跡などまったく無かった。 「大丈夫か?舞」 祐一は落ちていた舞の剣を回収すると、それを舞に渡しながら安否を気づかう。 「大丈夫。これくらいたいしたことない」 「そうか、それは良かった」 一安心した様子の祐一だが、舞の表情はむくれていた。 「良くない。祐一は全然本気じゃなかった」 「仕方ないだろ。これはあくまで殺し合いじゃない。相手を傷つける理由は全く無いんだから、無闇に攻撃できないだろ?なんて言ってるけど、実際は結構ヤバかったんだぜ?」 祐一の言う事は事実だった。 現に彼の背中の衣服は破れ、血が噴き出していたのだから これが最後の一撃の末に舞の与えた祐一へのダメージの結晶だ。 「それでも納得いかない」 しかし舞の肌に剣によってつけられた傷痕は一つも無い。 それは祐一が戦いの中で舞に対して気を使っていたことを示唆している。だがそれは舞にとって手を抜かれたという事と同義だった。 それは昔の約束。 自分の強さを確かめてもらい、全力でそれを受け止めてもらうという舞の願いと約束が彼女の心には深く関係していた。 それ故に舞は祐一の行動に納得がいかないのだ。 「俺は十分納得したよ。強くなったな、舞」 「・・・・・・・ありがとう」 舞の強さを認める祐一の言葉。 それを聞いて素っ気無い態度で答える舞だが、どこかその表情は満足げに見える上に少し頬を朱に染めている。 祐一に拾ってもらった剣を鞘に納めると、一目散にリングを降りていくその姿は明らかに照れ隠しだった。 「待ってよ、まい〜!」 リング上に取り残されかけた藍が舞の後を追いかけていく。 その後に続いて祐一もまた静かにリング上を後にしていった。 To be continued・・・ |
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