重機の安全管理

重機の死角
熟練オペレーターの不注意事故にご注意
現場での機械防犯ポイント
道路除雪作業の事故事例
排ガス規制対策機についての基礎知識
車両系建機の転落・転倒の防止
車両系建機の燃料などの貯蔵方法
車両系建設機械誘導時の合図法
重機・車両の安全作業は、誘導者の安全配置と能力向上から!

- 重機の死角 -

道路工事ではローラなどに作業員が轢かれる事故が後を絶ちません。作業員の立場から危険性を見ますと……

1.見た目より重機の死角は大きい。2.ローラのスピードが意外に速い。3.突然に前後進する。4.近づくと機械音で、周辺の声が聞こえない。5.舗装面に注意が向き、機械の発見が遅れる。等々…
 

機械の前後は危険なことは重々承知していても、つい運転者の死角で作業をしたり、横切ったりしてしまうことが多いようです。また、運転者も死角の範囲は注意していても、作業員との意思の疎通、作業員の認識不足、誘導・監視員のミスなどで予期せぬ状況が発生することが多く、いかにミラーを付けて死角をカバーしても、一度に全てをチェックをしながら、とはいきません。
 

作業員さんを一度重機の運転席に座らせ、他の作業員さんに機械の周囲を動いてもらって、死角に入ることの恐ろしさを実体験させてあげてください。ことばよりも身体・感覚で理解を!
 

- 熟練オペレーターの不注意事故にご注意 -

建設機械の災害事故で共通した問題点として、熟練のオペレータによる事故発生があります。仕事に対する慣れによる慎重さの欠如、憶測での行動等油断が大きな原因のようです。

 
●〈主な原因と対策〉

熟練オペレータによる事故に多いのが一時停車させ運転席を離れた際、機械が逸走するケース。主な原因は、オペレータが運転席を離れる際、エンジン停止、ブレーキをかけ、かつタイヤの歯止めをする作業手順が守られていなかったことにあります。また作業中、エンジンを切らず一時降車しようとし服が前後進レバーにひっかかり逸走する事故も起きています。

 
●停車及び降車時の注意事項

1.

停車時に運転席を離れる際は、必ず停車ブレーキをかけ、エンジンを切って降車。作業終了時また昼休みにはキーを抜き取って保管。

2.

降車したら必ず車輪に歯止めを。坂道の場合、谷側の前後輪にかまします。

3.

作業開始に備え、前後進レバーもしくはギヤはニュートラルにいれて停止。最近、重機の盗難事件が各地で起きています。作業終了時の停車には重機をゲート近くに置かず、複数の重機を固めて駐車しておくなど防犯対策もお忘れなく。

- 現場での機械防犯ポイント -

最近では、各地において現場内の重機類の盗難が頻発しています。巷では、複数のグループによる窃盗組織による犯行も発生しており、特に年末から正月休みは要注意です。

■機械の保管場所について

ミニバックホーや中型発電気は、現場のフェンス際やゲート付近など外から見えやすい場所への保管は危険です。できるかぎり場内の内側へ移して下さい。


■キーの保管場所について

機械のキーは、かならず本体より外し事務所等で保管して下さい。機械の足元にかくされる場合など安易に発見されるのでお止め下さい。


■機械の保管について

バックホー、高所作業車はブームをさげて正しい停車方法で止めてください。タイヤ式の重機は、ハンドブレーキの確認とともに輪止めをしてください。発電機などバッテリースイッチがあるタイプはかならず切ってください。バッテリーあがり原因となります。水タンクを搭載している機械(振動ローラー)は、水抜きを行ってください。凍結の原因となります。休み明けの作業開始前には、作業前点検及び燃料タンクの水抜きをお忘れなく。

- 道路除雪作業の事故事例 -

1.

構造物と接触

排雪板やカッティングエッジが橋梁の伸縮継手やマンホールに引っかかり、急停止して運転手や助手が胸や頭部を強打する事故が発生しています。段差・路肩等を確認し、運転手・助手にもシートベルトの使用を徹底のこと。

2

除雪機械の転倒

道路の側面が傾斜している箇所では、雪が道路に堆積しているケースが多く、路肩の識別が困難になる箇所においても同様に、機械が横滑りして転落する事故が発生しやすいのでご注意ください。堆積した雪を除去し雪崩の危険を除いてから作業に入ることや、誘導員を配置して監視しながら作業すること。さらに、機体が常に山側に傾斜して作業するよう心がけてください。(*誘導員には識別しやすいオレンジ色などの服装に、路肩標識・警笛・合図の器具を持たせること)

3.

その他

エンジンを切らずに、シュートやロータリーに詰まった雪を取り除こうとして指先を切断したり、夜間や早朝時に凍結した機械から滑り落ちる事故も発生しています。点検時には、作業装置を降ろし、エンジンを止めブレーキを掛けること。機械前部には、人を近づけないこと。凍結時には、機械の乗り降りや路肩の状況をよく確認すること。

- 排ガス規制対策機についての基礎知識 -

1.

建設省直轄工事にて指定機種の使用を原則化

建設省では平成3年に「建設機械に関する技術指針」にて排出ガスの基準値を定め、これを満たした機械を「排出ガス対策型建設機械」と指定し、平成8年から順次建設省直轄工事において指定機種を使用するよう規定しました。
(この他、振動・騒音対策も打ち出されています)

2

排ガス規制の経過

平成8年度から3年間で使用が原則化されたものは以下のとおりです。

平成8年度:トンネル工事用の7機種(バックホウ、大型ブレーカ、ドリルジャンボ等)

平成9年度:主要土工機械3機種(バックホウ、車輪式トラクタショベル、ブルドーザ)

平成10年度:普及5機種(発電機、空気圧縮機、油圧ユニット、ローラ類、ホイールクレーン)

3.

指定機種の見分け方

排ガス対策車とは、メーカーが日本建設機械化協会にて規定の方法で測定してもらい、OKならば指定機種となりその機械に上記のようなシールを交付されます。(建設省指定:’91基準値排出ガス:対策型:社団法人日本建設機械化協会)この「’91」とは、平成3年のことで、上記の指針での基準値に適合していることを示します。

- 車両系建機の転落・転倒の防止 -

車両系建機を使用して、死亡災害を発生させた道路工事の状況例(多い順)

1.

路肩からの転落(バックホー・ローラー・タイヤショベルなど)。

2.

法面(傾斜地)からの転落(タイヤショベルなど)。

3.

建設機械と他のものに挟まれたり、押しつぶされる。

4.

ひかれる(特にバック運転中)、(ブルドーザー・モーターグ レーダーなど)。

5.

つり荷の落下、旋回中のつり荷に挟まれる(バックホー・タ イヤショベルなど)。

6.

建設機械移送時にトレーラーなどに積み込むさいの転落(バックホー・ローラーなど)。

7.

傾斜地での停車中の建設機械の逸走(タイヤローラーなど)



再発防止のため以下の事項の実施を

1.

運行経路の路肩の崩壊を防止すること。

2.

運行経路の地盤の不同沈下を防止すること。

3.

運行経路の幅を保持すること。

4.

路肩や傾斜地で車両系建機を用いて作業するときは、誘導者を配置し誘導させること。

5.

安定度や登板力を踏まえた作業計画を立て、運転者はこれに従い能力を超えた傾斜地での運行をしないこと。

6.

挟まれるなど接触事故の対策については、立入 禁止の措置をするか、誘導者を配置して誘導させること。

- 車両系建機の燃料などの貯蔵方法 -

●届け出・資格者の選任
消防法で定められた「指定数量」(図1)以上の石油類を10日以上貯蔵し、取り扱う場合、あらかじめ市長、村長などに設置許可を受け、「危険物取扱者」の有資格者を選任すること。



●貯蔵方法
貯蔵所の周囲に必要な保有空地を設けるとともに、必要な保安距離を確保し(図2)、「危険物貯蔵所」の標識と、類別、品名、最大数量、危険物取扱者を記載した掲示板を設置すること。

 

その他)

大数量に応じた消化設備の設置。

気、換気が不十分な場合や蒸気、ガス滞留の恐れがある場合は、強制換気装置を設置。


- 車両系建設機械誘導時の合図法 -

車両系建設機械の運転者に対する誘導・合図は、その現場で指名された者が行い、1人が決められた方法で行います。合図は手信号が一般的ですが、手旗や笛、ハンドマイク、懐中電灯、発煙筒といった信号用具を使用する場合もあり、現場の状況に応じて適切な用具を使うことが大切です。

■誘導・合図のポイント

1.

誘導者は、トラマークチョッキや腕章などを着用し、運転者から見やすく、かつ、誘導者自身も安全な場所に位置する。

2.

誘導の指示・合図は運転者によく分かるように大きな動作・発声でハッキリと。また、危険を感じた場合は直ちに停車させる。

3.

誘導中は、周囲の状況にも十分に注意を払い、他の作業者などを近寄らせないようにする。

4.

誘導終了時には、その旨を確実に運転者に知らせる。



- 重機・車両の安全作業は誘導者の安全配置と能力向上から! -

ここで重要になってくるのは「誘導者」です。今回、誘導者であるガンさんがその役目を怠り、何の役にも立ちませんでした。このような状況では誘導者なしで作業をしてはいけません。

労働安全衛生規則 第158条(要旨)
事業者は、車輌系建機(ローラも含む)を用いて作業を行うときは、労働者と接触するおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その車輌系建機を誘導させるときは、この限りではない。また、車輌系建機の運転者は、この誘導者が行う誘導に従わなければならない。

また、重機災害は、この他にも転倒・転落や他の車両・重機との衝突など、様々な事故事例があります。オペレーターは、周囲の安全を確認して作業することは当然ですが、人や機材・車両が混在し、同時に作業を進めている中で、品質面でも重要な役目を持っているだけに、なかなか行き届かないのが実情です。

そこで、誘導員を配置し、常に重機と作業員、および周囲の状況を見て危険を回避するよう監視させる必要があります。重機の特性や作業の要領、合図の出し方など、誘導者の教育と能力向上が大切です。