W 県外研修視察
1 生涯教育からの取組(水戸市)
水戸市総合教育研究所
平成14年8月27・28日
(1)水戸市における男女共同参画の概要
水戸市は、平成8年に「男女共同参画都市宣言」を行い、平成13年度9月には「日本女性会議2001みと」を開催した。
開催日の9月28日にあわせ、水戸男女平等参画基本条例を施行した。この条例は、基本理念や目指すべき姿を定め、
市・市民・事業者が一体となって、平等・創造・平和を基調とした心豊かな男女参画社会を実現する目的としている。
「基本理念(第3条)」から、「こんな姿を目指す」ということで、家庭・学校・地域・職場・スポーツ・レクリェーション活動の場
と目当てを掲げている。(第4条)「禁止事項(第5条)」として、「性別を理由とする権利侵害及び差別的取り扱いの禁止」
「セクシャルハラスメントの禁止」「ドメスティックバイオレンス又は虐待の禁止」さらに、「公衆に表示する表現の工夫」とし
ている。また、「男女平等参画苦情委員会(第18条から第18条の6)」「男女平等参画委員会(第19条〜第20条の4)」
では、男女参画に関する苦情の申し出を、公平・中立な立場に立って調査し解決を図ったり、基本理念を実現するために
は、男女平等 参画の施策を今後更に推進する必要があり、市民・事業者・学識経験者から構成される男女平等参画推
進委員会を設置し、総合的な施策と重要事項を調査審議している。
(2)女性問題についての意識の高揚を図る手立て
○基本目標T 「女と男の新しい関係を育む意識の創造」
○基本目標U 「女と男が共にいきいきと働くことができる労働条件・環境の整備」
○基本目標V 「女と男のための健康の確保と福祉の充実」
○基本目標W 「女と男のあらゆる分野への平等参画」
○基本目標X 「推進体制整備」
(3)男女平等と人権教育の推進について
(生涯教育の分野と学校教育の分野で取り組めること)
↓
【水戸市人権尊重の教育全体構想】から、
↓
◎水戸市教育の目標…知性にとみ、心身と共に健全な風格をしなえた人間(水戸人)の形成につとめる。
◎市人権尊重の教育の目標…人権尊重の精神を養い、差別や偏見のない明るい社会を実現しようとする態度を育成す
る。
◎市人権尊重の教育の視点
@ 差別や偏見をもたず、だれに対しても公正公平にふるまう。
A 相手の気持ちや立場を尊重し、思いやりの心をもって互いに協力し合う。
B 事実に即して自ら考え、正しく判断して問題を解決しようと努力する。
C 明るく健康で礼儀正しく、節度ある生活をする。
D 進路に対する正しい認識を持ち、希望をもって自己実現に努力する。
E 美しいもの、偉大なもに感動する豊かな心をもつ
【学校における人権教育】から、
↓
《人権感覚や人権意識を育む人権教育の推進》
↓
○人権教育の推進体制の整備及び全体計画・推進計画の作成
○生命・人権尊重の精神の涵養と民主的な人間関係の育成
○人権教育に関する資質及び指導力の向上を図るための研修の充実
○人権週間を利用した保護者などに対する同和問題などの重要課題の正しい理解
と啓発
2 学校教育からの取組(東村山市)
今年度の人権教育に関する,学校教育からの取組について,調査研究部会は東京都・東村山市立久米川小学校を視
察した。同校は平成13年度・14年度の2カ年にわたり,東京都教育委員会の「人権尊重教育推進校」及び東村山市教育
委員会の「研究奨励校」の指定を受けて人権教育の研究・実践に努め,平成15年1月24日,研究発表に至ったものであ
る。研究の概要及び研究発表の様子は以下の通りである。
(1)研究主題及び主題の捉え方【人も自分も大切にできる心豊かな子どもの育成】
この主題に示されている子どもを,同校では「自立心 共生の心 豊かな感性を併せもつ人権尊重の精神を身につけた
子ども」と捉えている。そしてこの実現のために道徳の時間を中心に,各教科等との関連を図りながら,生命尊重に重点を
置いた指導を展開しようと試みた。併せて,心の教育を重視しながら基礎・基本の定着を図ることをも意図している。
(2)研究の内容
・ 道徳の時間の充実−学年ごとに道徳的価値を重点化し,人権尊重の精神を育む。
低学年:自分自身を認め,励ます原動力となる「自立の心」の伸長
中学年:生命尊重を土台とし「友情・信頼」を軸とした諸活動
高学年:「公正・公平」を軸に「心の体験の場」としての各教科・領域の統合
・ 基礎・基本の定着−少人数指導,全校一斉15分学習等
・ 開かれた学校づくり−全日公開授業日,学校評議員制度,教育ボランティア
・ 総合的な学習の時間の充実−人との関わりを豊かにする体験活動
(3)公開研究授業の様子
当日は,情緒障害通級指導学級を含め,全学級で,道
徳の研究授業が公開された。本稿では,すべての授業の
様子を伝えることはできないが,同校の研究の特色が,よ
く示されていると捉えられたことを中心に紹介する。
@ 低学年(テーマ:自立)1年1組
主題名:優しい気持ち
資料名:「ジオジオのかんむり」
年老いて孤独のライオンが,自らの王冠の中に鳥の卵
を産ませ,命を育むというもの。電子紙芝居で子どもたち
の関心を引きつけ,中心発問ではライオンの役割演技を
多くの子に体験させて,価値に迫ろうとしていた。教師が
子どもたちの小さな疑問の声にも丁寧に答えていた。子
どもたちも場面によっては自然に拍手が出るなど,和やかな雰囲気で授業が展開していた。
A 中学年(テーマ:信頼・友情)4年3組 主題名:信じるということ
資料名:「いのりの手」
若き日の画家デューラーが,親友ハンスの援助を得て大成していくというもの。作品の拡大写真を使ったりして視覚的
に訴えるなどの工夫が見られた。教師の発問に対して,子どもたちが恥ずかしがらず自分の意見を言っていたのが印象
的。教師にも,挙手している子どもたち一人一人の意見を大切にする姿勢ができていた。
B 高学年(テーマ:公正・公平)5年2組 主題名:偏見・差別を考える
資料名「航くんの涙」
筋ジストロフィーの航くんを巡って,学級で清掃中に起きた事件を捉えた自作資料による授業。教師からは冒頭で,
筋ジストロフィーについての説明がなされた。子どもたちは自分の意見が前に述べた人と異なる場合に,それをよく認
識していて,それを踏まえて意見の付け足し・修正等を行っていた。
C 情緒障害通級指導学級(わかたけ学級)なかよしタイム「あたたかい言葉かけ」
わかたけ学級では研究主題を受け、自立活動を中心とした「なかよしタイム」の時間において、特に「心理的な安定」
「環境の把握」「コミュニケーション」を高める指導を道徳の時間を通して育成している。
本時では、「となりのたぬき」という絵本を思い出しながら、児童がロールプレイで実際に絵本場面での言葉かけをする
ことで,自分の行動を振り返る授業であった。特に感じたことは、教師が一人一人の児童の言葉や行動を大切に取り上
げ、認める姿勢で授業を行っていたことである。こうすることで、児童は安心して発言でき、自己を表現することができて
いた。
今後、本町においてもこのようなソーシャルスキルを活用した授業をさらに研究していく必要性を感じた。
(4)感想
中程度の規模の小学校が,全学級で授業公開したことについては,賞賛に値する。同校のすべての教職員が,一致団
結して研究の推進に当たってきたことの証である。授業に取り組む児童の様子も真剣で,「生命尊重」という研究推進の
キーワードに則った子どもたちの成長の姿が伺えた。東京都は「心の教育」をとりわけ重視している。この日の授業に示さ
れた,子どもたちの瞳の輝きが失われぬことを願う。
また研究の成果を,本町の人権教育に反映させられるように,調査研究部会としても一層の研究推進を図っていきたい。