民謡を心の糧として新 増渕 富夫 皆さんは、日本の民謡をいくつ歌えますか。歌えずとも、テレビ等で見聞きしたことは有 ると思います。私は子供の頃から唄が大好きでした。小学6年生の頃、ラジオから流れる民 謡を聴いた時、何か心に響くものを感じました。その時からいつしか民謡を口ずさむように なり、50才になった今日まで、歌い続けています。 民謡は大切な日本の伝統文化の一つであり、そのシンプルな歌詞とメロディーには、その 唄を育んだ地域の気候風土と大衆の生きざま、喜怒哀楽が凝縮されています。船頭唄や機織 唄、田植え唄や土突き唄等、今日では民謡に歌われる情景の大半は、実際には見ることはで きません。しかしこれらの唄からは、自然の豊かさや、ゆったりとした心のゆとりを感じる ことができます。 「船は櫓で行く 越名の河岸を お江戸通いの 高瀬船 ハァヤッサノコラサ」 これは私の好きな民謡の一つで、佐野市に伝わる「越名船唄」の一節です。私はこの唄を歌 うと、力強く舟を漕ぐ船頭さんの気分になり、元気が出ます。仕事上の失敗や人生の不安も 何のその、気持ちを明るくすれば、自ずと解消するものです。 私は、民謡のおかげで、様々な年齢、職業の友人に恵まれました。又、数多くの貴重な経 験をすることができました。例えば、世界には経済的に富める国もあれば、貧しい国もあり ます。一昨年は、世界一裕福な国と言われるブルネイ王国の日本大使館の招きを受け、多く の要人の前で日本各地の民謡を披露してきました。そして昨年は、ベトナム国で開催された 「日本−ベトナム友好祭」に日本代表団の一員として、ハノイ市民30万人の前で栃木県の 民謡を演奏する機会を得ました。この友好祭は、ベトナム建国以来初めてという大規模な催 しで、喜ぶ市民から笑顔の大歓迎を受けました。どちらのケースも、単なる観光旅行では経 験できないもので、民謡をやって来て良かったとつくづく感じています。 私はこうした経験から、幾つかの趣味を持ち、多くの経験をすることを勧めます。そして その中の一つに、生涯を通じて楽しめる日本の文化的趣味を加えてみて下さい。現在は国際 化の時代です。それだからこそ、自分の国、地域の文化をしっかりと身に付け表現すること そして相手の文化を尊敬し認めることが大切なのではないでしょうか。日本文化はけっして 難しいものではありません。私たち日本人自身が本来備え持っている感性を呼び起こせば良 いのです。しかし何においてもそうですが、やればやるほど奥が深いものです。文化は生き 物で、時代と共に少しずつ変わって行くと思います。しかし先人の心意気は、次の時代に伝 て行く必要があります。 私は、単に文献上の学問としての民謡にしてはならないと思っています。そのために、若 い文化人に期待したいのです。![]()