ラマダン(断食の月)
東京都 越桐 喜一
皆さんは、ヨルダンという国を知っていますか。入ると身体が浮いてしまう海『死
海』をはさんで、イスラエルの東側にある人口500万ぐらいの王国です。私はその
国で、20世紀と21世紀にまたがり1年余りを技術指導のため過ごしてきました。
世界に信者が10億人いるというイスラム教の国の一つで、教えに従って年1回1ケ
月間『神聖な月』として、ほとんどの人が一斉に断食の行を行います。これを『ラマ
ダン』と言います。
ちょうど、私の帰国の直前は、そのラマダンの時期と重なり、私も約1週間、現地
の人と共に断食の体験をしましたので、そのことについて少しご紹介しましょう。
これは日の出から日没まで約12時間(夏季は長くなりますが)一切口に食べ物を
入れない。お酒はもちろん水も飲まない。タバコも吸わないで日中はほぼ普段どおり
働くという修練です(夜食をとることは許されています)。病人、お年寄り、子供以
外、社会のほとんどの人は参加します。私の体験では、水を飲まないので、まず口が
カサカサに乾いてしまう。水の少ない砂漠のような地質のヨルダンで遊牧民的な生活
を行っている人の日常は厳しいだろうなと感じた次第です。
「なぜ、ラマダンの行を皆さんは行うのですか」と、たくさんの人に聞いてみまし
た。
皆さんの答えは同じ。まず、世の中の貧しい人の苦しみを体験する。そして、少食
は身体の健康に良い。砂漠環境ともいえる厳しい自然環境の中で、長い間生活を続け
てきた人々の歴史文化を思わせるものでした。
国民1人当たりの収入が、日本の十数分の一程度の余裕のない生活の中で、町中を
歩いていても、日常接する人々の感じは大変穏やかで、社会の中にある支援や協調と
いったものを感じました。
夕景の中、メッカに向けてひざまずいて祈る人々の姿は絵のようで、間近に起こっ
ているイスラエル、パレスチナ紛争を忘れさせる平和な姿でした。
ヨルダンにも現在仕事や観光でたくさんの外国人が訪れています。私の滞在したホ
テルでも、常時10ケ国位の人々が出入りしていましたし、アジアからも日本以外に
台湾、韓国、中国の人々が仕事で訪れておりました。
21世紀は、情報通信やコンピュータ利用の一層の進展もあり、色々な国の人々と
交流する場も飛躍的に増えると思います。
そういう時代に対応することになる、若い皆さんの自己確立と国際化への努力を、
心から願っております。
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