自然から私たちが学ぶもの
       蔵 井  山本 豊  私たちの住む大平町は山と川のある町です。特に町の北西部の太平山、晃石山山麓 は緑豊かな自然に恵まれています。最近、田園を流れる小川にホタルが初夏の夜を舞 うといったうれしいニュースが届きました。 ところが、この山々をよく見ると、葉が茶褐色になってしまった松が目立っていま す。松が枯れる原因は松くい虫による被害と言われますが、山全体、つまり自然のバ ランスが崩れてきたからです。 山も含め陸地はもともと一番下の基礎に表土があり、そこに無数の微生物がいて、 有機物を分解して植物に栄養を供給しています。そして表土の上に植物、その上に植 物を食べる昆虫たち、その上に肉食性の昆虫や小動物、さらに上にそれらを食べるヘ ビや小鳥、一番上に肉食獣などの猛きん類が位置しています。このように自然界には 人間の力ではどうすることもできない食物連鎖といった生態系ができているのです。 生物の歴史を調べてみました。植物が水の中で生命が生まれ、海から陸に上がった のは約4億年前だそうです。その後、動物が海から陸に上がって棲息するようになり その動物の中から今の人類が進化し、地球上に住むようになったのは約2万5千年前 といわれています。ということは、単純に計算しますと、この地球上に生きる植物は 人間が地球上でくらすようになった期間のなんと16万倍もの長い間、自然の摂理を 守って生きてきているのです。 もし、人間が松くい虫を除去するため、自然の法則に反し殺虫剤を空中散布したら どうなるでしょう。まず、森に住む益虫も害虫もみな死にます。餌を失った鳥は森を 去るでしょう。鳥がいなくなったら、害虫が繁殖することになり山は荒れ果てること になります。森林を守るには薬にたよるのでなく、樹木の周りをきれいにし、森の土 を若返らせることが樹木を救う決め手であり、人間の都合に合わせるだけでは木は守 れません。  “人間よ自然に帰れ”ということは、人が自然と共に生きるだけでなく、人は自然 の原則を守れということなのです。 自然界に比べ、人間の社会はこのたった200年位の間に“より速く、より安くよ り便利”を目標にして“物”をつくり、“物”を追い求めてきました。そして自動車 所有台数世界の10%、アジアにおける日刊新聞の発刊数70%を占める日本。経済 大国世界第二位の日本になりました。しかし、いま日本は巨大な物質機械文明にそれ を生み出した人間が振り回され、押しつぶされ、日本人の心は砂粒のようにバラバラ 自分勝手な人間の集団になってしまったような気がします。 足利市が生んだふるさとの詩人、相田みつをさんが人間に対する自然からのメッセ ージを届けてくれました。自然の中に生きる人間として根っこを見つめて生きていく ことを願って……。 「花を支える枝、枝を支える幹、幹を支える根”、根は見えねえんだなあ」 もっと人間は自然から学ぶことが大切ですね。