表紙しあわせをつかむ65のヒント
 書 名 しあわせをつかむ65のヒント
     −釈迦の名言に学ぶ−
 出版社 浄土宗
 発行年 昭和62年2月初版発行
 大きさ 四六判、149+23ページ
 目 次 第1章 つまずきは人生の出発点
第2章 自分をよく見つめる
第3章 やるべきことを見定める
第4章 努力のみ奇跡を生む
第5章 輝かしい未来のために
付 録 和英対訳一日一訓
【本書「まえがき」より】
 わが国は最近、未曾有の高度経済成長をとげ、物質的には何不自由ない生活がいとなまれるようになったというのに、毎日がつまらなくて人生がむなしいと嘆く人がいるようです。
 先日も香川県に住む、二浪してやっとの思いで大学医学部受験に合格した一青年から「念願がはたせてしあわせなはずなのに、何かいつも心の中が満たされないのです。何かがつかえているようで息苦しい感しがします。私はどうかしているのでしょうか。お教え下さい」という悩みを訴えた手紙を受け取りました。皆さんは、そんなことはなく、はりきって元気よく毎日を過ごしていることと思います。そうであれば結構なことですが、もしそうでなくてこの青年のような悩みを心に抱き、だれにも打ちあけられないで悶々としているとしたらちょっと間題です。
 はたしてこの世に生を受けて悩みごとを持たない人がいるでしょうか?欠点や失敗のない人がいるでしょうか?もしいるとしたら、よほどお目出たい人か天才にちがいありません。大低の人は、だれもがいろいろな難関にぶつかり悩んだり苦しみながら、泣き笑いの人生を曲りなりにも歩んでいるのです。そういう私もそのうちの一人です。その私がどうして皆さんに聖人君子のような顔をしてとやかくお説教じみたことがいえましょう。
 「ではどうしてこんな本を書く気になったのか」と訊ねることでしょう。おことわりしておきますが、これはけっして皆さんを説き伏せて私の信ずる教えに引き入れようとして書いたものではありません。皆さんがこの本を読まれて人生の糧にしようとしまいと勝手ですが、要はしあわせになってくれればそれでいいのです。私自身至らない人間で、ヘマのし通しの連続です。そうした自分に向かって、どうしたならマシな人生が送れるかを自問自答し、「こうしたならばしあわせになるかもしれない」と、仏教の開祖である釈迦の直説として伝わっている『法句経』中の名言に直参し、その中から六十五句を選んで現代的に私釈したのがこの本なのです。
 日本語訳の『法句経』は、既刊の友松円諦・中村元・藤田宏達訳を参考に、拙訳を用いさせていただきました。また、英語でも学ぺるように英訳文をそえておきましたが、その大部分はトーマス・バイロン著の『英訳法句経』(ニューヨーク・ランドム出版社・一九七六年版)を引用しました。やさしい英語で書かれていますので、高校生程度の語学力があれば充分読めることでしょう。
 また、付録として、英語を学ぶ人や外国人にも本書を理解してもらうために、その抄訳ともいうべき一日一訓≠和英対訳しておきました。毎日の座右の銘として活用していただければさいわいです。
 皆さんの中には私のこれから述べる意見を「お説ごもっとも」とすなおに聞ける人がいるかと思えば、耳の痛い話には「もうやめてくれ」と最初から見向きもしない人もいることでしょう。現代は自由な世の中ですから、他から強制されて従う必要もなく、それぞれの裁量にまかされています。ですから、皆さんがいい目にあおうとひどい自にあおうとあくまで本人次第で、他人がとやかくお節介すべきことではないかもしれません。仏教ではこれを「自業自得」といい、自分が蒔いた種は自分が刈りとらなければならないことを悟る(発得)までほったらかされます。「そんなのいやだ、どうにかしてくれ」と泣きつかれても、私にはどうすることもできません。少しはなぐさめたり、はげましたりすることはできるかもしれませんが、最終的には自分の運命は自分で切り開かなければならないのです。したがってこれは皆さんに向かってというよりも、私自身に言い聞かせるためつづに綴ったものです。
 たまたま若い方々への心の糧となるようなものを、と浄土宗出版室からおすすめを受けて一本にまとめてみましたが、はたして皆さんのこれからの生き方にお役に立つかどうかわかりません。ご参考になればと思って書いてはきましたが、私自身まだまだ人生勉強の途上にあり、学ぶべきことが多々あります。これから、皆さんのお知恵を拝借して、よりよき人生のために精進努力してゆきたいと念願しておりますので、ぜひともご忠言やご意見をお聞かせ下さい。



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