表紙 「仏教的生き方の構造」
 書 名 仏教的生き方の構造
 出版社 転法舎
 発行年 平成7年11月初版発行
 大きさ 四六判、370ページ
 価 格 3,460円
 目 次 第1章 今、ナゼ仏教が必要なのか
第2章 仏教的生き方の構造
第3章 仏教的生き方とは
第4章 仏教的死に方とは
【主 な 内 容】
 今日の世界では「モノ」の充足よりも「心」の時代だといわわて久しく、人々の宗教への関心が高まっているようです。かつて宗教といえば仏教とか神道とかキリスト教とかの既成教団が専売特許の独壇場と考えられ、人々の心の拠り所となっていましたが、それらが長い歴史のなかにあって次第に形式化し空洞化して、人々の魂をゆさぶるようなダイナミックなエネルギーの発源体にはなりえなくなった感があります。その間隙を縫って新しい宗教集団が輩出し、その活動の主なものはオカルト、星占い、姓名判断、超能力、奇跡など人間の魂の周辺的なものを充足させる呪術に偏っているように思えてなりません。したがって思慮深い人々にとっては、そうした宗教はなにか胡散臭いものと受け取れ、枯渇した既成宗教ともども敬遠したがるのも無理はありません。
 こうして自分以外のすべてのものを信じられなくなった私たちはどうして生きていったらよいのでしょう。ここで私たちは人間の原点に立ち還り、自分とその周囲との関係を見据えて共感できるような環境づくりをしなければならないようです。すなわち、自然的、人為的環境の中にあって、如何にしたらお互いが共存共栄をはかりつつ人間らしい、自分らしい充実した生き方ができるかを模索する時代が到来したようです。
 私たちはなにものかを信じていかなければ、一日たりともこの世に生きてゆけない存在です。たとえば、時刻表を信じなければ、そこに記されている電車の発車時刻に間に合うように出かけられません。人との待ち合わせの約束時間や場所も信じられなければそこへ出向くこともしないでしょう。勿論、それを信じたからといって約束の時間や場所に確実に電車が来、人が来るとは限りませんが、たとえ裏切られたとしても、それを事前に疑うべきではなく、自らは約束事をキチンと守るべきです。そうすることによって自分自身は後悔せず、人には信用されるようになるからです。宗教も同様で、それは私たちが必要にかられて生み出した文化の一要素で、それを信じることによってこの世の自分の「生」の確実さを祈る人間性のあかしだと思います。それを信じるか信じないかは個人の自由ですが、私は仏教という宗教的考え方の影響を受け、それに従うことによって自分のしあわせや安心立命がはかれるものと信じています。
 はたして読者諸兄姉の共感や同意をえられるかどうかわかりませんが、これから本文中にそれをご紹介することにより、混迷する世の中にあって、いささかでも皆さんのこれからの生き方のご参考になれば幸いです。
(※本書「はしがき」より)



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