表紙 「心をいやす仏教名言60」
 書 名 心をいやす仏教名言60
 出版社 転法舎
 発行年 平成9年6月初版発行
 大きさ 四六判、294ページ
 価 格 2,980円(税込)
 目 次 第1章 自分自身の心がまえ
第2章 ひとに対する心がまえ
第3章 物事に対する心がまえ
第4章 イザという時の心がまえ
【主 な 内 容】
今世紀に入ってわが国は度重なる戦争を体験し、第二次世界大戦後、国土の大半は廃墟と化しましたが、戦後は見事に復興し、戦前にも勝る経済的繁栄を謳歌しています。しかし、ここにきてそのバブルが崩壊し、政治、経済、文化のあらゆる面で行き先の定まらない迷走を統けているように見受けます。
 こうした不透明な世の中にあって、はたして私たちの精神的支柱となり、生き甲斐を与えてくれるものが何処にあるのか、もし従来の宗教や思想の中に、それがないとしたなら何処にそれを求めたらよいのかを、二十一世紀を真近にした歴史的転換期にあたり、深く考えてみる必要があるのではないでしょうか。(中略)
 日本人にとっては、神のような存在によって、自分がたえず外から見られているという考えに疎いところから、とかく誰も見ていないところでは手を抜き、自ら切り開くべき運命を消極的な宿命としてしか受け止められず、万事後手に回りがちです。今後は自業自得の精神でもって新たな運命を開拓する積極的な働きかけが要請されましょう。
 私たちの意欲や技能や根気次第で新しい運命は切り開かれるのであり、それは宇宙の理法という一本筋の入った絶対的な価値の下においてなされるべきことはいうまでもありません。
 はたして私たちは、そうした絶対的な価値を仏教から学びとって味わい、自分たちの生活に生かす心構えができているかどうか。もしできておらず、現状維持でこのまま推移していくならば、早晩、仏教を含めすべての宗教は理性が消費しうるものとして安易に信じられ利用されるか、もしくは理性を脅かすものとして頑に拒否して虚無に陥るより仕方がないでしょう。そのいずれをとるか、私たちは今、二者択一の重要な岐路に立たされているのです。
 残念ながら、現今の仏教教団に次代を背負うに足る政策や人材が豊富にあるとは到底思えませんが、少なくとも開教以来過去二干数百年の間、その浮沈にもかかわらず今日まで書き記されて伝えられた名僧知識の言葉には、二十一世紀はおろか、その後の時代をも照らし、人々を善導する名言が吐露されているのに気づかされます。それらをむざむざ闇に葬るのは見るにしのびず、筆をとった次第です。
 ここで取り上げた仏教名言はそのうちの一部分にすぎず、はたしてどこまでその真意に触れることができたか心許ないかぎりですが、今日の時代状況に照らし合わせてそれらを現代的に私訳してみました。誤解や曲解した部分も多々あろうかと思いますので、忌憚のないご叱正をお願いしたいと思います。
(※本書「はしがき」より)



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