表紙生きているのは何のため
 書 名 自分を変え、
日本を変える本
     生きているのは何のため
 出版社 新風舎
 発行年 平成15年9月初版発行
 大きさ 四六判、241ページ
 価 格 1500円(税別)
 目 次 序 論 新しい世紀を迎えるにあたって
第1章 自分自身に対する心構え
第2章 人に対する心構え
第3章 仕事・勉強に対する心構え
第4章 社会に対する心構え
第5章 日本国家に対する心構え
 あとがき
【本書「はしがき」より】
 かつて政治学者の高坂正尭氏は、国家が備えるべき条件として「どの民族も、自国への誇りを持たなければ国家たりえない」とし、ただし「同時に国家は他国への気兼ねなしには生存しえない」と述べたことがあります。これは国民自体にも言えることで、「私たちは自分への誇りを持たなければ自分たりえない、と同時に、周囲への気兼ねなしには生存しえない」と言えるのではないでしょうか。
 今日ほど政官財界の指導者層はもとより、国民自体の犯罪の多発や人心の荒廃は目に余るものがありますが、いくら文部科学省はじめ世の識者が声を高くして道徳の復権やモラルの高揚を説いても、これといった確たる提言もなく、それを説く人自身が「俺についてこい」といった勇気ある態度が見られそうもありません。このまま「何とかなるだろう」とタカをくくっていたら、ますます事態は悪化するばかりで、いよいよ土壇場に追い詰められ、国家も国民もアノミー状態(無秩序)になってからいくら騒いでも後の祭りでしょう。
 「そこのあんた、自分が好きか?」と叫んだのは路上人を自称する軌保博光氏でした。はたして私たちは自分が好きになり、その自分に誇りと自信を持ち、周囲に対しては謙虚さと尊敬の念をもって日々の生活を送っているでしょうか。先日、国際会議の席上でマレーシアのマハティール首相の演説を聞く機会がありましたが、原稿なしに英語で、格調高い自分の所信を堂々と述べているのを垣間見て、わが国の政治家はじめ私たち自身も、はたして自分の思想を持ち、周囲に自分の考えを自信と誇りをもって語り、他を説得するカがあるだろうかと考えさせられました。
 もしあなたがほんとうに自分が好きなら、その生き方に自信と誇りを持ち、周囲を思いやる気持ちを持ち合わせていると思われるので、この本を読んで貰わなくても結構です。ひとに迷惑をかけ、悲しませてまでも平気でおり、自分勝手なことをする人は、ほんとうは自分が好きではなく、むしろ嫌いだからこそ、その自分から逃げ、鬱憤晴らしに周囲に自分の不満や憂さを吐き散らしているのだと思います。
 私はかつての青年時代に自分が嫌でたまらなかったことがあります。どうしてこんな自分が生まれて来たのか、この世を恨んだこともあります。こんな嫌な自分がこれから生きて行くのに何の意味や価値も見い出せず、いっそのこと死んでしまおうかと日夜、悩んだこともありました。ときにはやけ酒呑んで周囲に当たり散らしたこともあり、そんな破れかぷれな毎日でひとつも事態は好転せず、ますます自分が窮地に追い詰められるばかりでした。ニッチもサッチもいかなくなり、何もかも嫌になり、ひとり管を巻いていたおり、ひょんなことから米国行きの誘いを受け、二の句を告げずそれに飛び乗りました。
 そこで待っていたものは、今まで地上の楽園と夢見ていた米国とは程遠いものでした。お金もなく、誰も助けてくれる人もなく、天涯孤独の生活を強いられて、異国の空の下で一人淋しく生きるのはほんとうに辛いことです。そこで、白分の存在とは何とか弱い、儚いものかと、その現実の厳しさを嫌というほど味わいました。が、よくよく考えてみると世界中のどこにいようと、私たちは孤独なことには変わりないことに気づきました。
 米国滞在もいつのまにやら十二年の歳月が経ち、日本に浦島太郎よろしく帰国してみたら、また別の意味の苦難が待ち受けていました。しかし、世の中はよくしたもので、そんな自分をも天はけっして見捨てず、今日まで温かく見守り、曲がりなりにも育ててくれました。そこでのいろいろな体験を経て、今ではどうにか自分自身が好きになれたような気持ちを持つことができ、その喜ぴや有り難さは筆舌に尽くしがたいものがあります。
 最近の読売新聞の世論調査によると、日本人の子供の半数以上が自分の親を尊敬していないと答えているそうです。また、世界価値観調査によると、世界七十四ヶ国で行った「貴方は自国民であることに誇りを感していますか」というアンケート調査で、わが国は下から四番目という体たらくです(高橋徹著『日本人の価値観世界ランキング』中公新書)。自分の親を尊敬できないばかりか、自分の属する国家も好きになれず、大人のしていることに信用がおけないとしたなら、どうしてしあわせになり、明るい日本の未来が約束されるというのでしょう。こうした悲しむべき風潮を黙視しえず、どうしたならぱ自分が好きになり、その生き方に自信と誇りを持てるのかという、日頃から考えて来た問題の一端をここに提言という形で発表させていただきました。
 もちろん、問題の指摘や提言だけでは十分ではなく、その考え方や生きざまを身を以て実行し、周囲に伝えるのでなけれぱ、誰も見向きもしないことでしょう。はたしてここに記した提言が正鵠を得ているかどうか、心もとない気もしますが、すくなくとも私自身はこうしたことを自分のできる範囲て実行したいと願っており、努めています。
 その間に得難くして得させていただいた「自分が好きになれた」喜びを自分一人でしまっておくのは忍びず、一人でも多くの方々に分かち合うべく、ここにささやかな私自身の人生を綴ることにしました。私のかつてのように、もし自分自身がほんとうに好きになれず、生きる自信や誇りを持てずに日夜悩んでおられるとしたなら、一度この本を読んでみて下さい。ここでの提言から、何かあなた自身が好きになれ、生きる勇気と自信がつくヒントがえられることを切に期待しています。
 内容は順序不同で、重復している箇所もあろうかと思いますが、今日、わが国の直面する諸問題への私なりの提言として、第一章に、自分自身に対する心構え、第二章に、人に対する心構え、第三章に、仕事・勉強に対する心構え、第四章に、社会に対する心構え、第五章に、日本国家に対する心構えについての私見を述べました。
 はたしてここに綴った私のささやかな提言がどの程度、読者の皆さんに納得していただけるか、心もとない気が致しますが、いささかでも今後の生き方のご参考になれぱ幸いです。



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