月かけのいたらぬさとはなけれとも なかむる人のこゝろにそすむ | |
【現代かな】月影の至らぬ里はなけれども 眺むる人の心にぞすむ | |
【出典】『勅修御伝』三十巻。『続千載集』の釈教歌の中に。『和語燈録』六巻〜諸人伝説の詞の中に | |
【私訳】月の光は、どんなところでもへだてなく照らしていますが、その光に気付き、美しいと仰ぎ見る人の心の中にこそ、美しく澄みわたるものでしょう。
【私釈】この和歌は、法然上人のご真作と伝えられる中でも最も代表的な歌であり、鎌倉時代の勅選和歌集『続千載集』(二条為世〜1320年)にも選ばれ、現在は、浄土宗の宗歌に定められています。(※浄土宗のホームページhttp://www.jodo.or.jp/jodo/jodoshu/naruhodo/index3.htmlには、サウンドファイルがあります。) | この歌は、「光明遍照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨の心を」と題して、詠まれております。「光明遍照・・・」の文は『観無量寿経』というお経の中にあり、「光明はあまねく十方の世界を照らし、念仏する衆生を摂取して捨てたまわず」と 訓読みされます。ここで光明とは、阿弥陀様の御身体から放射される光のことであり、「仏のお慈悲」を象徴しているものです。そしてこの光〜慈悲は、何物にも遮られることなく、全世界、すべての人を、広く、平等に照らし、お念仏をする人々に、必ずその救いの手を差し伸べられることが明らかにされております。 その意をうけたこの歌は、「仏のお慈悲」を「月影」に託して、常に私達を見守ってくださる阿弥陀様を自覚し、感謝する心の内にこそ、真の信仰が花開くことをご教示してくださっているものと思います。 |