〜 伝染 プロローグ 〜
「壊れ物」
〜ある少年の日記より抜粋〜
8/1
僕は、壊れてている。
何時から、僕は壊れたのだろう?
・・・壊れている今の僕にはわからない。
ただ、壊れる前の記憶で一番最後に覚えているのは、
ただ何も無い「闇」の中にいた、というものだった。
僕は、ちょうどその時は、中学校の時、塾の帰りだった。
途中までいっしょに帰ってきた友達と別れて、
一人で家に向かう途中の道だったと思う。
家の裏庭に続く林を抜ける一本道・・・
僕は、この道が嫌いだった。
林の中から誰かに見られてるみたいで、怖かった。
昔から、暗いところが嫌いだった。家の中でもどこでもだ。
暗いのが怖かった・・・。暗闇の中で大きな目が見ているみたいで。
特に、この林の道の一番怖くて嫌いだった。
でも、なんだか・・・
その日だけは、特別だった・・・
なんだか、いやな予感がした。
何も変わらない日だと思っていたのに・・・
俺は、あの時にはじめて会った。
そう僕は、このとき壊れたのだと思う。
そのせいだろうか、暗いところが怖くなくなった。
むしろ、心の落ちつく場所になった。
8/7
最近、壊れたことに自覚したせいだろうか・・・
やたらと物を壊したくなる。
大切なものほど?
そうだ。昔から、大事にしてきたぬいぐるみ。
大好きなアイドルのCD、誕生日に買ってもらったラジカセ。
いまも、高校入学祝いに買ってもらったパソコンを壊した。
ああ、何もかも壊したい。
8/10
どーも、最近イライラする。
もう、何もかもわからない。イライラする。
壊したい!!何か壊したい!!
あれを壊したらすっきりするかもしれないね。
ああ、あれか!!
ふぅ・・・
少しすっきりした。何で早く気が付かなかったんだろう?
あんなに大切なものを忘れてるなんて。
おまけに、もう散歩に連れて行かなくていいし、
ワンワンって、もううるさい泣き声聞かなくてすむし。
ほんと、すっきりした。
8/24
あぁ!!
なんて、壊すって楽しんだ!!
今の俺には、これ以外の楽しみなんて無いのかも知れない。
この手で、ギュウっと締めたときの感触。
手に伝わってくる暖かさと首の肉のやわらかさ。
少しずつ弱まっていく息の音・・・。
そして、動かなくなった体を切り刻む・・・
バラバラに切り刻んでいくのがこんなに楽しいなんて。
やっぱり、小さい女の子はいいな!!
僕は、壊れている・・・
ずっと、昔に壊れていた・・・
あいつに会ったときから・・・
9/1
いま、あいつは寝ている。
そして、あいつが寝たいる間に日記に書いておく。
多分、日記を書けるのは、今日で最期だろうから。
あいつのことを書いておく。
あいつは、僕が中学校のときに生まれた。
いや、出会ったといったほうがいいのかも知れない。
僕は、あの時「闇」の恐怖に負けて狂った。
そのとき、闇の中からあいつが現れたんだ。
「狂気」という僕自身が!!
そして、この一ヶ月の間で、あいつが僕のことを操っていたんだ。
愛犬のチャッピーを壊し、隣の家の知佳穂ちゃんを壊したんだ。
僕が壊したんじゃないんだ・・・
あいつが悪いんだ!!
でも、今日あいつは、僕のことを壊すって言っていた。
もう、大事なものが無いからって・・・
言い訳は、終わりかい?
なにを言おうが、俺は僕なんだよ。
さぁ、壊そうか。
もう最期になりけどね。
これで本当の
壊れ物!!
になるのだからね・・・
プロローグ 終わり