1999.12.10 SANKS

第三話・熊にやられた!


時は昭和の半ば、所は栃木県北部の村で その事件はおこった。

「この村は平和でええね。
「んだ、この診療所も患者が 少ねーでな、健康で平和な証拠だんべ。」

ばーさま達が 会話を交わしていると、村の駐在が飛び込んできた。

「先生、てーへんだ!この男を診てくれや。」
「こりゃー、ひどい。熊にやられたんだな。」
「いんにゃ、ちがうよ。タバコ屋のタネさんだ。」
「本当かね?こんなひどい傷をなんでまた。」
「こいつは泥棒だ。タバコ屋に押し入って、 ついでに昼寝してたタネさん
に乱暴しようとしただ。」

泥棒が意識を取り戻すと同時に タネのだんなが飛び込んできた。
「おめーか?おらの女房に手〜かけた奴ァ〜!」
「違うんです。確かに泥棒には入りましたが、ちょっと触ったら逃げようと
思ったんです。 でも、奥さんが気持ちよさそうに 触らせてくれて、、」
「馬鹿こくでねー」
「本当なんです。私の手をつかんで 、自分の方から、、その、、」
「おタネの奴が、まさかそんな・・・」
「いえ、だんなさん、奥さんは貴方と間違えて 私の手をとったようで、
人違いだと 分かったとたんに、私をこんな目に・・・」
「そうだろ、そうだろ」
「はい、気が付く前に 『小吉』さんて、貴方の名前をよんでましたから」
「・・・・・・」

駐在が言った。
「小吉は、隣のそば屋のだんなだ。」



この話は今までと違い、本の中から引用しました。 少しアレンジしてありますが
原文は「医者ともあろうものが・・・」見川鯛山(集英社)です。見川先生は栃木出
身の開業医であり、作家です。


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