短歌への誘い

作者  須黒敦子   大正15年8月8日 
              栃木県栃木市にて出生              
              短歌結社「地上」及び「下野歌人」在籍
              著作 短歌集「はなふきん」
              平成17年9月14日没

              住所 栃木市片柳町2−2−61
              

        
言い訳を拒めるごとし激つ瀬は
    息をもつかず山峡奔る


狂ほしく渓の流れを逸らせて
    
雨あし白く消ゆる水の面

理由など問答無用か岩を打ち
    
流れ逆巻く鬼怒の深谿

幾山を越えて辿りし湯の宿の
    窓に冷たく雨ふりしきる

峡深く二時間余り探り来て
    携帯電話の圏外にをり

山水画の中ゆくごとく辿り来て
    窓に俯瞰の深谿の霧

身に付くはかなしきものよ旅に来て
    炊飯忘れし夢に目覚むる

眠られず空回りする我が思考
    明けの烏に嗤はれるまで

進むとも躊躇へるとも「褄黒横這ひ」の
    中途半端はわが生に似る

平らかに夜のとばりの静まれば
    均衡保つわがやじろべえ

          つ ま ぐ ろ



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