機動戦士ガンダム0085
予告編 ストーリー紹介
宇宙世紀0085 デラーズの反乱より2年
地球連邦軍はジャミトフの巧妙な政治工作により、主導権を握りつつあった。
また、前戦において目覚しい活躍を見せた コウ=ウラキは個人的にバスクに疎まれ、
新しく設立されたニュータイプ研究所のモルモットにされる所をカラバに助けられたのだが、
軍人として連邦に逆らう事をよしとせず、自分の進むべき道に悩むコウ。
しかし、自分の意思とは関係なく、戦乱に巻き込まれてゆく・・・。
とにかく、命は守らなければならず、宇宙へエウーゴを頼り脱出を試みるが、
プロト=ゼロ率いるニュータイプ部隊に襲撃される。
やむえず、カラバによって奪取したGP−03ステイメンで迎撃に出るが、
異常なまでのプロト=ゼロの戦闘力の前に危機に陥るコウ。
だが、ゼロのモビルスーツが至近弾を浴び吹っ飛ぶ!!
「な、なんだっ!!」
エウーゴのモビルスーツ来援!!
「赤いモビルスーツ・・・速いっ!! まさか・・・」
赤いモビルスーツはバズーカを3連射し、相手の動きを限定させた所へ
いきなりバズーカを投げつける!!
「ふんっ、なんのつもりだっ」
なんなく、サーベルでバズーカを切り落とす。
が、それこそが、赤いモビルスーツの狙いだったのだ。
切られたバズーカは、全弾ゼロの機体の至近距離で暴発した!!
「ぐぁぁっ!! し、しまったっ 謀られたかっ!!」
ゼロはすぐさま撤退をする。
「逃げる!?・・・まあいい。 今は合流が先だ」
赤いモビルスーツのパイロットは自分に言い聞かせるように言って、ガンダムと合流する。
「生きてるか!? ウラキ君」
この出会いがコウの新たな世界への一歩となるのであった。
主な登場人物
コウ=ウラキ:本編の主人公。
スゥ=シルフス:本作品のオリジナルキャラ
クワトロ=バジーナ:赤い彗星。 コウ達を導く。
プロト=ゼロ:ティターンズの強化人間
アムロ=レイ:一年戦争の英雄。 影でエウーゴを支援
一章 接触
「お〜い、コーウッ!!」
いつもの聞き慣れた親友のキースがコウを呼んでいるのだが、コウは今、その声はあまり聞きたくなかった。
あいつの言いたい事は、おおよそ分かっていたし・・・。
「昨日のニナとのデート、どこまでいった?」
「バッ、バカッ!! なんですぐそうなるんだよっ!!」
少年の様にムキになって応えるコウの態度に、キースはすべてを理解したが、あえて聞いてみた。
「おいおい、映画の後、どこにも行かなかったのかよ〜。」
「い、行ったさっ!! え〜と、喫茶店に行って話しとかしたんだ。」
「へぇ〜、で、どんな話しをしたんだ?」
「モ、モビルスーツのシステムアップのバランスの機動時に・・・。」
「・・・もういい。 少しでも期待した俺が馬鹿だった・・・。」
その言い方が気に障ったのか、いつもこうしたことには反論しないコウがこう言った。
「べ、別にいいじゃないか!! これが、俺達のやり方なんだから。」
「よくないから、言っているんだよっ!!」
いつものとぼけたキースとは思えない言葉だった。
「いいか、コウ。 今、反乱軍の奴らが力をつけてきているのは、お前も知っているだろ!?
戦いが拡大すれば、もちろんオレ達も出撃の機会が多くなるのは当然だろ。
もし、そうなったら、いつ死ぬか分からないんだぜ!!
今、生きていられる時こそ、やれる事をやらなきゃならないんだろ?」
「キース・・・」
勿論、コウにだってそんな事は分かっている。
だが、まさかキースに指摘されるとはおもわなかった。
それとも、コウ自身が戦いを忘れかけているせいもあったのかもしれない・・・。
「それにな・・・ いいかげんガトーのことはわすれろよ・・・。」
「なぁ・・・・っ!!」
図星だった。 頭の中と表面上ではふっきれて、お互いに忘れてニナとつきあってきたのだが、
心の底の感情では、どうしてもガトーの事が、いつまでもひっかがっているのであった。
また、傷つくのが怖かったから・・・。
オレはガトーの代わりなのか・・・!?・・・と・・・。
(キースが気付いているぐらいなのだから、もしかしたらニナも・・・。)
「ねーっ、コウッ!!」
後から、突然ニナが声を掛けてきた。
今 考えたいた事が事なので、この上なく取り乱すコウ。
「・・・? どうしたの?」
「あ、はははははぁ〜、 な、なんでもないよ!! ニナ。」
どこから見ても、何かある・・・。
「何?コウに何か用?」
キースが助け船を出してくれた。
「あ、そうそう。 コウ、すぐ司令室に来るようにですって。」
「バスク大佐、この男はいったい何物なのかね?
今回のムラサメニュータイプ研究所のニュータイプ立候補生は1名だったはずだが、
このコウ=ウラキとかいう者は大佐の推薦かね?」
と言い、2名分のファイルをバスクに見せてみせた。
この人物こそ、ティターンズの首領のジャミトフ=ハイマンである。
「ハ、この男は以前の戦いにおきまして、優秀な戦果を挙げています。
いささか、問題のある人物ですがパイロットとしては、一級である事にはかわりありません。
ニュータイプにはふさわしいかと・・・。」
「たてまえはいい。 大佐の本心は何なのかね?」
「・・・。 どういう意味だか、自分には理解できませんが・・・。」
「まあよい。 用件は済んだ、下がってよろしい。」
「ハッ、失礼します。」
バスクの考えは聞かなくとも分かっていた。
2年前にデラーズ軍に対して、バスクは、あのソーラレイシステムを強引に使ったのだった。
それも、かなりの見方まで巻き込んで・・・。
その中に、コウが含まれていた。
幸いにか、乗っていたモビルスーツ、ガンダムGP03デントロビウムは、
巨大な機体に重厚な装甲に守られていたため、どうにか生き残る事が出来たのだが、
あの「ソロモンの悪夢」の事、アナベル=ガトーに対して、命がけで戦闘していた最中、背後から撃たれたのだ。
見方であるはずにの連邦軍に・・・。
コウは激怒し、バスクの旗艦に対して発砲。
第二砲筒直撃、メインエンジン被弾の被害を出し、しばらくの間、航行不能に落しめた。
この件は、軍事裁判によって裁かれることになるのだが、バスクの蛮行は、
連邦の上層部によってすべて、もみ消され、結局、一部の人間以外は、知るところとはならなかった。
それどころか、コウ側についた弁護士まで、バスクを支持をしたのだった!!
この裁判中、コウは一言も発しなかった。
何を言ってもムダなのだから、この裁判を無視する事がせめてもの反抗だった。
この裁判の結果、コウは少尉に降格、一年の禁固刑で決着された。
その後、コウはガンダムGPシリーズを極秘にする事を条件に軍への復帰を認められた。
だが、バスクはこれを良しとしなかった。
バスクの逆らった者は、すなわち連邦の敵であり、悪なのだと、本気で考えていた。
彼は、権力に溺れた病人であった。
そこで、バスクはコウをムラサメ研究所へ送る事が何故、彼の復讐なのかと言うと、
ニュータイプ研究所などとは名ばかりで、強化人間などという戦闘人形を薬物や洗脳などによって
人為的に造る、非人道的で、非合法な人体実験所と言っていい。
今まで、「ニュータイプ候補」として、送り込まれた人数、54人。
そのすべてが事故死、又は戦死となっていた。
つまるところ、合法的に人を殺すことも出来たのだ。
それをまた、実行する研究所の人間もまた、自分の行為に自信と誇りを持ってしまった病人であった。
バスクが退室すると入れ代わりに、ガディが入ってきた。
「まだ、あんな男を使っていたのですか?」
ガディはまともな軍人であった。
普通に思考はあり、バスクの行為を知っている者ならば、嫌わない方が珍しい。
「あの男には、あの男しか出来ない事があるのでな。」
「・・・? 蛮行的行為なら得意そうですな。」
ガディは軽い冗談のつもりだったのだが、それは真実をついていた。
「ま、そういう事だ。 綺麗事だけでは済まされんのでな。」
この老人の一言で、このジャミトフたる人物がいかなる人間か理解し、また恐怖した。
ジャミトフは、バスクに綺麗事では解決出来ない、つまるところは反対派の粛清などをさせていたのだ。
だが、勿論そんな事をすれば非難の対象になってしまうので、その悪役をバスクに
買って出てもらい、非難の目をバスクに向けさせる事で、ジャミトフは目的を果し、安泰も図れるのだ。
そしてもし、バスクの行為が市民からあまりにも酷い反感を受けるようになったら、
ジャミトフ自身の手でバスクを罰すればジャミトフは正義ということで、バスクを倒したという事になる。
ジャミトフにすれば、目的を達成し、責任をとる必要もないので、バスクという存在は便利極まった。
バスクは使い捨てるからこそ、価値があるのであった。
が、これは本人には気付かせてはならないので、少しぐらいの勝手は認めてやっていた。
コウの件もそうだったのである。
「まぁ、こういう日はいずれ来ると思っていたけど・・・。」
モーラが寂しそうに言った。
コウを見送る為、いつもの3人が空港まで来てくれていた。
「ま、俺達ただの兵士にとっちゃ、選択権なんてありゃしないからな・・・。」
「キース、もう会えなくなる訳じゃないんだから、そんな言い方やめてくれよ。
だいたい、いままでずっと一緒にいられたこと自体、運が良かったんだから・・・俺達は・・・。」
「コウ・・・。」
ニナが心配そうにコウを見る。
「心配いらないよ。 今回の任務はテストパイロットなんだ。
戦いに行くわけじゃないんだから、テストが終わったら、またここに戻ってこれるさ。」
「でもね、ムラサメ研究所なんて正規軍の資料には何処にも無いのよ・・・。
おそらく、ティターンズの秘密組織かなんかだろうというぐらいしかわからない所に行くなんて・・・。」
「ニナ。 かと言って、行かない訳には行かない事ぐらい分かっているだろう・・・。
心配しすぎだよ・・・。」
そこに、今回コウを送る輸送機の機長らしき人物が声を掛けてきた。
「ウラキ少尉、まもなく出発の時間です。 搭乗してください。」
ああ、と頷いてからみんなに向かって軽く敬礼をした。
「じゃ、行ってくる。」
さりげない挨拶だったが、これから起きる事件をここにいる人達は、誰一人として予想していなかった・・・。
「ムラサメ研究所までは、向こうまで送る物資を載せた輸送機に搭乗していただきます。
あ、そうそう。 なぜか今回、護衛が付くそうですよ?」
輸送機に向かいながら、機長が説明をしてくれた。
「護衛? どうして・・・?」
「う〜ん。 どうも、上の連中の言う事では、これから行く航行ルート付近に反乱軍が進出
を始めてきているんだそうです。 まったく、困った奴らですよ。」
そう言いながら、これから乗る輸送機の方を指をさした。
そこには、輸送機の側に待機しているフライマンタUの機影が一機見えた。
(あれで護衛のつもりなのだろうか・・・? あんなもの一機で何が出来ると思っているんだ・・・。
あんなものだったら、かえって無い方がいい。
中途半端な護衛は、相手を挑発しかねないのだが・・・。)
と、思ったが、口に出すのは流石に非礼なので、頷いただけにすました。
コウが案内された機内には、先に一人だけ連邦軍制服を着た少女がいた。
その制服はパイロット用の物だったので、彼女もコウと同じテストパイロットなのだろうか?
その少女がコウに気が付いて立ち上がった。
どうやら、コウと同じアジア系のいようだ。
黒い髪が肩まであり、髪と同じ色の可愛らしいつぶらな瞳わ輝かせている。
18才ぐらいだろうか・・・?
「あ、貴方がコウ=ウラキ少尉ですね? わたくし、スゥ=シルフス伍長と申します。
少尉と供に、ムラサメ研究所に配属されることになりました。
いたらぬ事が多々あるかと思いますが、今後とも宜しくお願い致します!!」
そして、完璧な敬礼をコウへ向けた。
つい、見入ってしまっていたコウが慌てて、つい返した言葉は、軍人らしからぬ物だった。
「あ、その・・・や、やめてくれないか。 オレ・・・いや、自分はキミの事を聞いていないから
直属の上司って訳じゃないんだから堅苦しい挨拶とかは、ヌキにしてくれないか・・・。
そういうの苦手なんだ・・・。」
コウのズボラな言葉にキョトンとするスゥ。
「しかし、そういう訳には・・・。」
「いいの。 じゃあ、これ命令。 堅苦しいのは、やめてくれないか?」
「プッ・・・、ハ、ハイッ!!」
どうやら、今の言葉でスゥの緊張が一気に解けたようだ。
「ふうっ、よかった。」
「ん、なにが?」
「ウラキ少尉って、仕官学校を出てからパイロットだけで、今の地位になったんですよね?
だから、もうバリバリの軍人っていう人だったらどうしようなんて思ってたんです。
私、いつも怒られてばかりになるんじlたないかって心配してたんですが、・・・でも」
「でも?」
「こんなにかわいらしい人だったなんて・・・。」
「ぶっ・・・!! か、かわいらしい!?」
いままで、コウは貧弱とかパイロットとしてなっていないなど、
言われていた時代も確かにあったが、かわいらしい? ・・・オレが?
彼女にしてみれば、一応評価の言葉なのであろうが、それは少しも嬉しくないぞ・・・。
困惑してしまっている、コウにスゥはあわててフォローを入れた。
「あ、いえ別に外見とかではなくて・・・その、イメージとか・・・。」
「そ。それって・・・フォローになってないような・・・」
「う・・・す、すみません・・・。」
「い、いや・・・別に・・・。」
その後、なんとなく沈黙が流れた・・・。
スゥは、コウが気を悪くしたのではないかとハラハラしていたのだが、コウの方は
ただ単にニナ以外にけっこう好みの女の子と二人っきりということで、緊張しているだけであった。
しばらくして、この沈黙を何とかしようと思ったのか、スゥが突然コウに質問してきた。
「あ、あの・・・、コウ少尉ってどうしてパイロットになろうと思ったのですか?」
「え!?」
突然の質問に、コウは初め目を白黒させていたが、「う〜ん」と言いながら
頭をかいて自分が軍に入った頃を思い出してみた。
たしか、あの頃は本気で正義の為に戦うなどといって軍にはいったもので、それ以上の
事は、あまり考えていなかったのだが、具体的にパイロットに興味を持ちはじめたのは、
アムロ=レイとガンダムの存在だった。
一年戦争中はV作戦及びガンダムの情報は極秘事項であった為、コウのような
一兵士などには、ガンダムの存在すら知らなかったのだが、戦争が終結してからは、
もう、大変な騒ぎになり、たった一機のモビルスーツが戦いに大きく貢献したとして、
大げさに報道し、ガンダムとアムロを英雄として、祭り上げていた。
これは、たしかに戦争には勝利したが、世界は戦争の傷跡大きく、
何かしらの希望を求めていた欲求が背景にあったのだった。
「若き天才エースパイロット、アムロ=レイ」
「敵のモビルスーツ 50機以上撃墜したガンダムの奇跡」
「赤い彗星VSガンダム」
などの、その手の本が大量に出され、それらをコウも夢中になって買い漁ったものだった。
だだ、ニュータイプについて書いてある本はほとんど無く、
軍がニュータイプの存在を否定している者が大半だったので、
公式には、発表されていなかった為であった。
だが、ほんの一部の本だけはニュータイプについて取り上げた物も有ったが、
その内容については、全てが憶測で書かれたもので、
「人の心で敵を切り刻む」
「モビルスーツの動きすら支配する」
など、はなはだ現実離れした内容だった。
勿論、アムロはそんな事はしていないのだが、後々のニュータイプは
それに似通った事を、実際にやってみせたので、とりあえず的は得ていた事になる。
しかし、ほとんどの人は、これらをオカルトと同類としてしか見ていなかった。
人がそんなに便利になれるはずが無いと・・・。
だが、コウはこれらの話題よりもガンダムそのものに心を奪われていた。
しかし、そんな事を言ったら、それこそ本当にカワイイなんて言われかねないので、
無難に・・・。
「アムロ=レイのような、エースパイロットになりたくて・・・かな?」
まぁ、まんざらウソではないが、自分がまさかアムロのようなパイロットに
なれるとは、まったく期待したいなかった。 目標が高すぎるし・・・。
しかし、どういうことかコウは結果的にガンダムに、しかもアムロの乗っていた
型よりも遥かに高性能のガンダムを2機も操ったのだ。
運命というものは、まったく分からないものである。
もちろん、この事はスゥには言う訳にはいかない。
だが、スゥはコウの言葉に我が意を得たりといった笑顔になって、
「わぁ〜♪ 実は私もなんですっ!! すっごく、アムロ=レイの事が大好きで、
ファンクラブにまで入っているんですよ!!」
「・・・ファンクラブ!? ・・・なにそれ?・・・」
どうも、変な方向に話が進んでしまっている・・・。
「はいっ!! アムロファンなら結構有名なファンサークルでガンダムの戦い
などを研究した特集とかが載ってる、毎月の会誌とか・・・・
あ、そうだ!! ちょうど今月号を持ってますっ!! ほら、見てくださいっ!!」
「あ、ああ・・・。 じゃぁ、ちょっとだけ・・・。」
どうも、コウの好きとスゥの好きは別物のような気がして、あまり気が進まなかったのだが、
スゥの嬉しそうな顔を見ると、断り切れなかった・・・。
(テキサスの戦い特集)という所を見てみると、アムロの戦果は勿論、なんと
どこをどうやって戦ったのかを、操縦の説明つきで解説されていた。
・・・これは、もしかしたら軍のシュミレーションより勉強になるかもしれない。
「どうですか?」
「うん、すごく面白いね。 自分の知らない操縦のコツまで載っているとは、
正直驚いたよ。 これを読んだ知識はきっと役に立つよ。」
「ホントですか!? じゃぁ、私、この本をずっと読んできたので、実戦でも上手くやれますか?」
「う〜ん、それは、ちょっとどうかな?」
「どうしてですか!?」
「まぁ、たしかに、このとうりに操縦すれば、アムロ=レイの行なった近い動きは
マネする事は出来るかもしれないけど、それはあくまでモビルスーツを動かすだけの技術で
もっと大切なのは、どうしてこのような動きをしたのか? という判断だと思うよ。」
「ふんふん」
「でも、ちょっとこのガンダムのした判断をあやかるのはムリっぽいな・・・。
なにしろ、正面の敵どころか、背後や周辺にいるすべての動きを計算に入れているような
動きをしている。 実際、実戦でそこまでの状況把握するのは不可能に近い・・・。」
「じゃぁ・・・ダメですか・・・。」
「ま、それが彼がニュータイプと言われるゆえんかもね。 でも、これらを知識としてなら
いくらでも覚えたいた方がいい。 それを、頭と体で覚えていけば、いざっていう時にきっと役に立つ。
後は実戦で自分なりの戦い方を作っていくしかないね。」
「はいっ!!」
こうも素直に返事されると、偉そうに言ってしまった自分は恥ずかしくなってしまう。
「いや、別にそんなに真面目に聞かなくってもいいよ。
そんなに凄い話しをしている訳じゃないんだし・・・。」
「いいえ、コウ少尉のお話はとってもためになりますっ!! 私、まだまだ分からないことばっかりで
実戦の経験だってないのに、なぜかテストパイロットなんかに選ばれちゃうし・・・。
もう、本当は不安だったんですけど、優しい少尉さんに色々教えてもらえそうだし・・・
なんか、安心しちゃいます。」
「・・・ハハ・・・。 誉めすぎだって・・・。 ま、でも、教えてあげられる事はなんでも教えるけど、
あまり頼りにしてもらってもだめだよ。 ピクニックとかに来たんじゃないんだから。」
「クスッ・・・はいっ!! 了解ですっ!!」
と、言ってスゥは信頼した笑顔で、お茶目な敬礼をした。
(上官とかの威厳は、自分にはないらしい・・・)
と、苦笑するコウであったが、本当はコウだって仲間と別れたばかりで、正直な所
不安な気持ちもあったのだが、このスゥ=シルフスという少女は、なんとなく
ほっておけない妹のように思えて、コウの心を和ませてくれた。
《ゾォクッッ!?》
突然、コウの表情は険しくなった。 その変貌に驚くスゥ。
「あ、あの・・・、私何か気に障る事を言ってしまいました!?」
だが、コウにはその言葉の聞こえてはいなかった。
コウは、胃に圧迫感のようなものを感じていた・・・。
そう、これは戦場にいる時に感じる感覚!?
これは・・・。 直下後方から・・・?
コウは立ちあがり、窓の外を覗き込んだ。
(どこだ!?)
ふた呼吸後、キラリと雲の中で何かが光った。
「ど、どうしたのですか!?」
スゥには、さっぱりわからない。
今度は、コックピットに駆け込んで、驚く機長をよそに、
「機長っ!! 最大戦速で上昇をかけてくれっ!! モビルスーツだっ!!」
「え!? 何を言っているのです? 警報機はもちろん、レーダーにだって何もうつって・・・あっ!?」
レーダーには、たしかに何も映っていなかったが、レーダーには多数のノイズが入っていた。
障害電波は何かだ!!
「なんだ!? レーダーの故障か!?」
実戦の経験のない機長は自分の置かれた状況が理解出来なかった。
「なんでもいいから上昇だっ!! はやくっ!!
・・・・・くっ、来たっ!!」
およそ2km前方に、モビルスーツが立ちはだかった。
ドダイに乗ったジムUだ。
ジムは本来、赤を主体としたカラーリングだが、このジムは緑を主体色にしている。
明らかに正規軍ではない。
「あれが、反乱軍!?」
その、反乱軍と思われるジムUは、光音声で降伏勧告をしてきている。
どうやら、撃墜が目的だはないようだが・・・目的は積荷なのだろうか!?
「少尉!! どうしましょう!! 上昇ですか!?」
「いや、もう遅い・・・。 とりあえず、敵に従ってみせておいて逃げるチャンスを見つけるんだ。
今は、それしかない。」
ジムUが接近してきた。
盗聴されないように接触回線を開くつもりだ。
ジムUは輸送機と平行するように飛んで、ワイヤーロープをアンテナに引っ掛けてきた。
『我々はカラバの者だ。 今は敵対の意志は無い。
そこに、コウ=ウラキ少尉がいる筈だ。 彼と連絡をとりたい。』
「少尉・・・」
「よし・・・出よう。 時間を稼ぐから、脱出の用意を・・・。」
後ろから見ていたスゥが黙って頷く。
「自分がコウ=ウラキだが、カラバという組織は自分は聞いたことがないのだが・・・?」
『その件は後で説明します。 コウ少尉は、命を狙われていますので、我々が保護させて頂きます。』
「自分が!? そんな事をして、誰が得をする!? また、カラバが自分を保護して何の得がある?」
『あなたを狙っているのは、バスク=オ・・・』
そこで、突然通信が切れ、同時に ズドォォンッ!! という衝撃が襲ってきた。
コウは床に叩きつけられて、一瞬息が詰まった。
そこで、目に映ったものはジムUと輸送機を一緒に攻撃をかけてきている、
護衛であるはずのフライマンタUの姿であった。
なぜ!? と思いたい所だが、今はそんな事を考えている余裕はない。
すでに輸送機は動力を失い2つに折れそうになりながら落下している!!
「ウラキ少尉!! こっちですっ!!」
スゥが非常ハッチをきじ開けながらコウに声を掛けた。
すでにスゥはパラシュートを背負っている。
あとの2人の分も用意してあったのだろうが、さっきの衝撃でどこかに飛ばされてしまっている。
探している場合ではない!!
コウとスゥは目で頷きあった。
「行きますっ!」
スゥは力一杯、非常ハッチを蹴り開けた!!
ドッオッと、空気が入りこんできて、急激な気圧の変化で、耳がおかしくなりそうだった。
その時、機長の姿も目で探したのだが、どこにも見当たらない。
気絶でもしてその辺にでも倒れているのか!?
ドドォォォンッ!! と、また衝撃が来た。
さっきとは違う衝撃だ。
エンジンが誘爆しかけているっ!!
もうダメだっ!!
「機長も翔んでっ!!」
と、言い残し 2人は空へと身を投げた。
落ちて行く輸送機が見え、エンジンから炎が広がっていき、やがて燃料に引火して大爆発を起こした。
(機長っ!)
と心の名、なかで叫ぶが、もう手遅れだった。
そう思ったのは束の間、今度は、爆風に襲われ、2人ともバランスを崩し落ちていく・・。
一方、フライマンタUはしつこくジムUに対し攻撃を仕掛けていたが、ジムUの放った
一条のビームがフライマンタの機体をあっけなく貫いた!!
そして、ジムUは落ちて行くフライマンタなど無視して、先程飛び出した
人影を追って、急速降下していった。
コウは自由落下状態にいた。
体をなるべく空気抵抗を受けるようにして、なんとか安定を保っていたが、
ゴーグルすら付けていなかったので、目すら開ける事もままならず、スゥを探せずにいた。
(ここまでかな・・・。)
そう、諦め掛けたとき、誰かに手を捕まれ、力一杯抱きついてきた。
「ふぇ〜んっ、こわかった〜っ!!」
スゥである。 どうやら、向こうの方が先に見つけてくれたようだ。
「ふぅ・・・、 助かったよ、ありがとう。」
ぶんぶんと首を振って、スゥは泣き出してしまった。
おいおい、ゴーグルを付けたまま泣くと曇っちゃうぞ、と言いたいところだが、
今はそんなのん気なことを言っていられる状態ではなかった。
なにしろ、通常のパラシュートならまだしも、非常用の簡易パラシュートで、
なんとか地上までに減速させ、2人分の重さに耐えてもらわなければならないのだ。
いざとなったら、スゥだけでも助ける為、コウは飛び降りるつもりでいた・・・やるしかないっ!!
「よしっ!! しっかりつかまっていろっ!! パラシュートを開くっ!!」
パラシュートを開けば、その減速分の衝撃がくる。
その時にコウとスゥが離れてしまったら確実にアウトだ。
スゥは痛いぐらいに捕まってきた。
よしっ、とパラシュートの開く紐を引くと、ぐんっと引っ張られる感じがして
落下の速度が減速していく。
「ふぅ・・・っ、間一髪って所かな・・・。」
だが、やはりこのパラシュートでは2人の重さはきついのか、ギリギリと悲鳴をあげているし
落下の速度もまだかなり速い。
このまま降りられたとしても怪我は免れないか・・・。
その時は、着地寸前にコウが飛び降りればスゥは無事だろう。
そう思い、スゥの腕をいつでも振りほどける体制にしようとしたら、スゥがジャマをする。
「少尉、ダメですよっ!! 絶対に離しませんからねっ!!」
やれやれ、ばれていたか・・・。
しかし、ここはなんとかやらなくては・・・。
こkでパラシュートの紐でも切れたらそれこそ・・・。」
しかし、その心配は無用の物と悟った。
フライマンタUを撃墜したジムUが爆音を轟かせてゆっくりと近づいてきて
コウ達の下に周り込み、手を差し出してきた。
コウとスゥは顔を見合わせる。
「助けてくれるというのか? ・・・敵か・・・味方か・・・?」
2人はジムUの手のひらの上に上手く着地できた。
そしてコウはスゥにパラシュートを捨てるように言う。
ここで、このジムUからの逃亡はムリな事は分り切っている。
ならば逃亡の意志は無い事を示した方が得策だ
『コウ=ウラキ少尉ですね。 ご無事で何よりです。 さっそくですが
我々にご同行して頂きます。』
コウは頷いた。
というより、他に選択の余地がなかった・・・。
ジムUはゆっくりと雲の中に隠れていた船に近づいていった・・・。
ジムUはモビルスーツデッキに着陸し、そこでコウとスゥは降ろされた。
「スゥ伍長、そろそろ離してくれないかな? 痛いって。」
「あぅ・・っ!! す、すみません・・・、わ、私っ」
別にいいよと言う意味で、スゥの肩に手を置く。
そして、近づいてくる人物の方に注意を向けた。
スゥもそれに習う。
「ようこそカラバへ。 私、この船の艦長のハヤト=コバヤシといいます。
まさか、こんな危険な事に巻き込んでしまう結果になってしまって
まずはお詫びを申し上げたい。」
コウとスゥは目を見張った。
勿論、2人ともこの人物を知っていた・・・。
元ホワイトベースのクルーの1人・・・。 が、なぜこんな所に!?
と、思った束の間、警報がけたたましく鳴り響いた。
『敵襲ですっ!! 3時と8時の2方向からモビルスーツ約10機!!』
「なんだとっ!? いくらなんでも早すぎる!! ん・・? そうかっ!!」
ハヤトはコウに近づき「失礼」と言って、いきなり胸ぐらを掴んだ。
「少尉に何をするのっ!!」
スゥがかばいに入ったが、ハヤトは構わずに階級章をひきちぎった!!
軍人にとって階級章は自分の誇りでもあるにかかわらず、
いきなりひきちぎったばかりか、その上床に投げて踏みつけた。
さすがに、その行為にコウは青ざめる。
「なっ・・・なにをっ!?」
「やはりな・・・。 これを見たまえ。」
そこには、つぶされた階級章の中に埋め込まれていたチップのような物が見えた。
「こ、これは・・・!?」
「ほぼ、間違い無く発進機か何かのたぐいだろう。
人の心を平気で踏みにじるティターンズらしい手口だ。
彼女の方も調べてくれ、可能性はある。」
「・・・そんな・・・!!」
コウは本当に連邦に見捨てられた事を信じられなかった。
「で、こうなった以上は、君達にはすぐ宇宙に上がってもらう事になる。
ティターンズ勢力圏の地上では逃げ場がない。 宇宙のエウーゴを頼るといい。
運良く、6分後にシャトルで出れば丁度、合流出来るはずだ。 急いでくれ。」
「そんなっ!! ちょっとまってくださいっ!! そんな事、急に言われたって・・・!!」
「たしかに、信じろと言う方が無理が有るかもしれん。 だが、君がここにいる以上、
我々は必要以上に付け狙われる。 我々を巻き込む気かね?」
「いえ・・・。」
「とにかく、シャトルに乗りたまえ。 そろそろカウントダウンが始まる。
・・・少なくとも我々は君達の見方だ。 信じてほしい。」
「・・・分りました・・・・お任せします。」
「そうだ、この書類を後で見ておくといい。 君達の置かれた立場が理解できる。
あと、あのモビルスーツも君に献上しよう。」
そこには、シャトルに搭載している所の白いモビルスーツが見えた。
「ガンダムッ!?」
スゥが驚きの声をあげた。
だが、コウの驚愕はその比ではなかった。
正確にはガンダム試作3号機、GP−03ステイメンと言い、
かつてコウが搭乗した機体であった・・・。
な、なぜ、こんな所に・・・!?
「ま、そういう事だ。 さ、シャトルに急いでくれ。」
ハヤトは意味ありげに頷いた。
「ようしっ!! シャトルを衛星軌道上に射出する為、上昇っ!!
敵接触地点と思われる、2時40分深さ35度に空中機雷射出!!
8時の方向には弾幕を張って牽制せよ。
モビルスーツ隊は、本艦を中心にV時型の陣形を展開!!
ムリに敵を倒そうとしなくていい、シャトル射出までの時間を稼げばいいのだからな。
シャトル射出後。我々はすぐさま撤退するっ!!」
ハヤトの指示に慌しく人が動く。 ハヤトもブリッジに向かった。
「艦長!! まもなく3時方向の敵が空中機雷群に接触します!!」
「あわてるなっ、出来るだけ引き付けるんだ!! でなければ意味がないぞっ!!」
「敵モビルスーツ、機雷群を迂回してくるもよう!!」
「よぅしっ!! 今だっ!! 対空砲火、機雷群に向けて一斉制射っ!!」
各砲門から放たれた数条のビームが機雷群に向かって行った。
敵モビルスーツ達は、見当違いに放たれているビームには見向きもしなかった・・・
が、突然、一面が火の海となり、機雷群の爆風は敵モビルスーツを飲み込んだ!!
だが、その程度で倒せるモビルスーツではない事は承知の上で、
本当の目的はモビルスーツをドダイの上から叩き落す事だった。
狙いどうり、モビルスーツ達は爆風に吹き飛ばされていく。
しかし、2機のモビルスーツが辛くも爆風を逃れ、更に追撃してくる!!
「迎撃!! 主砲3連っ!! ジムU部隊、左右より追い込めっ!!!
本艦には一撃たりとも当てさせるなよっ、シャトルの射出軸が狂う。」
この見事なまでの戦いをコウはシャトルの中で見ていた。
自分の為に戦っているのであろうに、なにも出来ないなんて・・・!!
「ハヤト艦長、自分にも出させて下さい!! この、ステイメンなら!!」
「心配するな、この程度の敵なら負けない方法ならいくらでもある。
それに、そのガンダムは宇宙装備のままでつかえんぞ。」
「そ、そうですか・・・・。 すみません・・・。」
コウに昔の苦い思いが蘇る。
「なに、無事に宇宙まで送ってやるさ。 でないと、アムロにどやされるからな、
よし、カウントダウン、10秒前に入るぞっ!!」
「えっ!? いま、アムロって・・・!?」
「さっき渡した書類を見れば分る。 ほら、喋っていると舌切るぞっ!!
3・2・1・・・発射っ!!」
シャトルは一気に加速し、コウ達はしばらくGに耐えなければならなかった。
2章へつづく