私は、昭和52年宮城県仙台市に転勤になり、そこで書(大貫思水)と出会った。

 仙台駅前の書店で一冊の本を買った。本のタイトルは、「書道入門 全」。大貫思水著日本文芸社発行、定価850円だった。
 数ある本の中からなぜ選んだかといえば。自分もこんな字が書けたらいいな、書いてみたい。ただそれだけだった。
 本の最初のページに はしがき がある。
 要約すると、

 書は、心身合一して筆鋒を動かすことによりはじめて生まれる。書を学び行ずることにより、己の心を清め、深めていくものである。この書は、真正の書道、伝統をふまえて立つ書道ということを目標として、これに始まりこれに終わってはいけない。これを踏み台として飛躍あれと祈ってやみません。

 当時は、はしがきなど読まず「永字八法」の「永」と言う字を眺めながら「この字がうまく書ければすべての字がうまく書けるのか」ぐらいにしか思っていなかった。

 暫くすると、先生に付いてキチンと練習がしたくなり、大貫思水会長の主催する日本書学館本部へ電話して、仙台市内におられた故鴫原尚豊先生の書道教室を、ご紹介いただいた。

 その後も、群馬県高崎市、長野県松本市と転勤が続いたが、行く先々で先生をご紹介頂き、昭和62年まで長い転勤生活の間、書道を続ける事が出来た。
 生まれ故郷(栃木県栃木市)へ戻ってからは、日本書学館理事長の故初山祥雲先生にご指導を頂いた。
 平成14年7月からは臨書を始めた。故初山祥雲先生の恭栄支部による臨書会に参加させて戴いている。

 今私は、大貫思水会長の、真正端麗、用美一致、心技両輪の書を目指し日々研鑽(?)をしているが、はしがきの「これに始まりこれに終わってはいけない。これを踏み台として飛躍あれ」という大貫会長の願いとはほど遠く、未だ踏み台が見つからないでいる。

 これからいつまで書を続けられるか分からないが、努力していきたい。そして、その証として何かを残したい。そんな思いからこのホームページ「墨遊水月庵」を作成した。


                   平成17年12月  戸澤尚延