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漢字文化の授業「育」
                                                   新村 勲

前半の「土」「生」は向山洋一氏が上海実験学校でおこなった授業の追試です。「育」は大阪の奥清二郎氏の漢字文化の授業の修正追試です。授業参観にもってこいの授業です。フラッシュサイトをプロジェクターで投影して授業します。

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「土」という字の下の1本棒は何を表すかわかりますか?

列指名などで聞いていく

大地を表しています。
上の「十」これは何を表しますか?

列指名などで聞いていく。

みんなからだされた意見の中では「植物」が1番近いです。植物のどういう時でしょう。絵をノートにかいてごらん。
かけた人は黒板にかいてごらん。

画面で見てみよう。大地の中に種が入ります。芽が出て双葉をつけます。これが「土」です。
これがもう1回育ちます。本葉が出てきます。これが漢字になりました。何という漢字でしょう?ノートにかいてごらん。
かけた人は黒板にかいてごらん。

画面をみてごらん。正解は「生」きる。「生」です。
このように漢字には素晴らしい文化があります。
それでは、「育」つという漢字について考えていきましょう。
まず、画面にあわせて声を出して空書きしましょう。さん、はい。
「育」という字の上の部分は,どの字からできたでしょう。

  ア 十     イ 子    ウ 予

挙手で人数を把握する。板書。

答えはイの子です。子どもの子が逆さまになった形からできました。お母さんのおなかから生まれてくる子どものようすです。
 「育」という字の月の部分はどういう意味でしょう。

  ア (逆さまに生まれてきた子どもが)月日がたつごとに育っていくから月
  イ (逆さまに生まれてきた子どもが)肉がふえて育っていくので肉
  ウ (逆さまに生まれてきた子どもは)お日様が暖かいと育ちも早いから日
  
挙手で人数を把握する。板書。

答えはイの肉です。これは,肉がふえて成長し,育っていくという意味で「肉」が正解です。「育」は逆さまに生まれてきた子どもが肉がふえて育っていく様子からできたのです。
「育」は「そだつ」、「いく」のほかにもう一つ読みがあります。何と読むでしょう。ノートに漢字と読み仮名をかいてごらん。

  指名発表。

 そうです。答えは「はぐくむ」ですね。

奈良時代にできた万葉集につぎの短歌があります。

「 旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 吾が子はぐくめ 天の鶴群 」

まず、教師が百人一首風に朗々と読み上げる。
次に、短く区切って追い読みさせる。旅人の→旅人の。宿りせむ野に→宿りせむ野に。霜降らば→霜降らば。吾が子はぐくめ→吾が子はぐくめ。天の鶴群→天の鶴群。
次に、2つに区切って追い読みさせる。旅人の宿りせむ野に霜降らば→旅人の宿りせむ野に霜降らば。吾が子はぐくめ天の鶴群→吾が子はぐくめ天の鶴群。
次に、全文追い読みさせる。
3回読んだら座ります。全員、起立。
(実態に応じて変化のある繰り返しでテンポよく何回も読ませる。)

昔、奈良時代。国のために命がけで中国に勉強をしに行った人たちがいました。遣唐使といいます。息子が中国に渡るのに心配で心配で、無事を祈って母親が作った歌です。
「私の息子が旅をして,野宿しようとした野原に霜が降るようなことがあったならば,天かける鶴たちよ,どうか,そのあたたかい羽で私の子どもをくるんでください。」という意味です。わが子の無事を祈る母親のあたたかい心を表す歌なのですね。
 「育」と書いて,「はぐくむ」と読むのは,「羽+くるむ」が変化してできたからなのです。
 「逆さまに生まれ出た子どもが肉をつけ,成長するようす」を「育つ」としたのは,中国の先人たちです。
 その文字と意味に,「あたたかい羽毛で我が子を包み込むようす」という独自の文化の香りをつけたしたのが,私たちの遠い祖先の人々です。
 「はぐくむ」という読み方ひとつにも,日本人の心をあらわす文化があるのですね。
 きっとみなさんのお父さんやお母さんもみんなのことをこのような気持ちで育てているのでしょうね。

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