Audi S4

Audi S4、レクサスGS 3.5AWD、日産GT-R。 これらはどれも、車重がほぼ同じ1700kg台のハイパワー四輪駆動車です。さらに価格もほぼ同じ。



しかしながら、車の性格はかなり違います。まず、運転したときに感じる車の重さがかなり違います。GT-Rが最も軽く感じます。いとも簡単に軽々とコーナーをすり抜けていきます。重量物が中心近くに集まっているからでしょう。それに近いのがS4。S4はコーナーで左右の後輪の駆動力を変える三菱で言うAYC(ヨーコントロール)が付いています。「駆動力で曲がる」感覚が楽しい。それに対して、GSはかなり重く感じます。巨体を揺さぶりながらコーナーを回っていく感じ。別な言い方をすれば走りに重厚感があります。
このクラスの車を高級車ととらえるか、走りを楽しむ車ととらえるかで評価は全く変わりますが、GSは明らかに高級車です。アクセルペダルを床まで踏めば、旧レガシー2.0GTと同程度の加速をするし、コーナーリングにも不足はありません(ただし、タイヤを235のRE050に換えた場合)。GSでたまにはそういう走り方をしてもいいですが、普段はゆったりと余裕を持って走る車でしょう。
これに対して、S4とGT-Rは積極的に走りを楽しむ車です。この2車には重厚感など必要ありません。実際の車重よりも軽く感じる走りができた方がいい。GT-Rは圧倒的な加速が魅力です。S4はそこまでの加速はしませんが、GSやレガシーGTより少し上の加速をします。しかし、S4は卓越したコーナーリング性能があります。

S4の最大のメリットはボディーサイズが小さいことでしょう。車幅はそれなりにありますが、ハイパフォーマンス4ドアセダンにしては全長が短く、車高も低いのでコンパクトに見えます。反面、値段の高い車には見えません。しかし、いかにも「後から付けました」という感じの空力付加物がなくて、不必要な派手さがありません。最初から空力を重視した美しいボディーです。こういうのを「羊の皮を被ったオオカミ」というのでしょう。こういう車は日本車にはなくなってしまいました。
走りを楽しむ車として許せるボディーサイズはここまでです。GT-Rは幅が広すぎ、GSは全長が長すぎ。
4WDシステムも三者三様、本格的なフルタイム4WDといえるのはS4だけ。GT-Rは通常はほぼFRで、「滑ったら4WD」です。GSは一世代(二世代?)遅れた4WD。トヨタは4WDシステムをスバルから買えばいいのに・・・

価格はどれも約800万円。 GT-Rは安い!と思います。S4はそれなら買ってもいい、GSはちょっと高いかな... という値段です。購入後の維持費として、GT-Rはかなり高価な整備費用がかかります。GSは普通の整備費用がかかります。S4は3年間点検整備無料です。

皆さんはフルタイム4WDのすごさを知っているでしょうか? 大雨の高速道路を走るとすぐわかります。ハイパワーFR車だと90km/hぐらいでハイドロプレーニングが起こり、それ以上のスピードが出せません。フルタイム4WDだと同じ条件で120km/hぐらいは楽にいけます。雨の日のGTカーレースでは、インプレッサやレガシーB4の独壇場になることからもフルタイム4WDのメリットがわかります。

Audi車には国産車ではあまりお目にかからない機能があります。
・EPB(エレクトロメカニカルパーキングブレーキ) 別称 ホールドアシスト
 このスイッチをONにしておくと、信号待ちなどで停止したとき、自動的にパーキングブレーキ相当のブレーキが掛かり、ブレーキペダルから
 足を離しても停止しています(急な坂道でも)。夜はブレーキランプが消えるので、後ろの車がまぶしくありません。
 アクセルペダルを踏むと解除されます。ただし、車庫入れなどでバックするときは、解除しておかないと面倒なことになります。
 これの前提として、AudiのDCTはクリープがあります。トルコンATと同じ感覚で、それに慣れている人は全く違和感がありません。
・ダウンヒルアシストコントロール
 長い下り坂でアクセルやブレーキから足を離して、何もしなくても一定のスピードで坂を下ってくれます。
 アイスバーンの下り坂では、これに命を預けた方が安全だと思います。この機能にON・OFFはありません。常時働いています。

S4を購入して半年が過ぎましたが、何の不満もありません。すばらしい車です。日本の狭い道を走る車としては、世界最高でしょう。車幅や全長など、どうでもいいような広い道路網が整っている国では、さらに良い選択肢となる車がありますが、日本ではこれしかないでしょう。
タイヤはピレリの製品が付いていましたが、スポーツタイヤとしてはグリップがイマイチです。しかし、滑るときは四輪が均等に滑るので、四輪ドリフトが何の不安もなくできます。四輪ドリフトしても回転半径が大きくなるだけで、行きたい方にいけます。運転がうまくなった!と思わせてくれる車です。


オーナー1に遅れること8ヶ月、オーナー2も audi S4 を買ってしまいました。オーナー1とは色違いだけの黄色。
営業担当はオーナー1と同じ人です。目黒まで行って買ってきたんですね。
早速、オーナー2からS4のレポートが届きました。以下の通りです。


最近の車は以前では考えられないくらいのハイパワーです。ちょっとした車でも250馬力は当たり前、300馬力オーバーもごろごろしています。で、これだけの馬力を路面に伝えるのはタイヤのみで、その接地面積はレターサイズ程度でしょうか。しかも大部分の車は2つのタイヤのみを駆動しているので、タイヤ1つに150馬力以上を担当しているわけです。私もずいぶん車に乗ってきましたが、FF、FR、RRに限らず、2WDでは伝えられるパワーに限界があると思います。車重やタイヤにもよりますが、2WDでロスを無くパワーを伝達するには150馬力程度が限界かもしれません。最近乗っていたBMW135iやALPINA B3、昔のW124 500Eではタイヤが動力を伝えられなくなった場合は、電子デバイスが上手に介入してパワーを絞り伝達ロスを少なくしていました。パワーを絞っても十分まだパワーがあるので楽しみは十分ありますが、伝達ロスは伝達ロスです。

もちろん解決策はあります。その一つが、4WDだと思います。私自身のスポーツタイプ4WDの所有経験は現在も含め3台です。4WDはいろんな分類があるのですが、パートタイム4WD、オンデマンド4WD、フルタイム4WDのなかでスポーツタイプは事実上オンデマンド4WDとフルタイム4WDだと思います。以下は後輪軸にモーターを使う方式やツインエンジン方式を除外した4WDの雑感です。

オンデマンドタイプもいろいろです。ボルボやVW、アウディの横置きタイプ、ベンツの4-maticなどなど。でも私の中でのオンデマンド4WDの代表はGT-Rです。これは基本的にはFRで、必要に応じてフロントにトルクが配分されるシステムです。この「必要に応じて」がとても複雑巧妙になっており、それぞれのタイヤの速度や各種Gセンサーをフルに活用してトルク配分をコンピューターが決定しています。また、最近のオンデマンド4WDは優れものが多く、特に最新のハルデックスカップリングを利用したものは、リヤに5%程度のトルクをあらかじめ配分しており、状況に応じてトルク配分を増やしていくような仕組みで、完全な2WDの状況はあり得ないようです。私は最新式のオンデマンド4WDの経験がないためか、この方式はあまり好きではありません。自分自身のType 964カレラ4と友人のR32 GT-Rを比較した結論です。FRからフロントにトルクが繋がるタイミングについて行けず、少し怖い目にあったせいです。まぁ、これだけで決めてしまうのもどうかと思いますが・・・(TTS/TT-RSには乗ってみたい)。

いわゆるフルタイム4WDですが、これについてもいろんな種類があります。スポーツタイプのフルタイム4WDはアウディクワトロからだと思います。その他、さまざまなタイプが派生してきました。アウディのクワトロやポルシェ、ランチャデルタ、アルファ・ロメオなどなど・・・これについても枚挙にいとまがありません。ビスカス・カップリングやトルセンデフから完全な電子制御方式への変更など、それぞれがさまざまな進化をとげています。この中で私が所有していたのはType964カレラ4とランチャデルタHFインテグラーレです。高速道路でも雨の中でも雪道でも恐ろしく安定しています。コーナーリングも速いです。でも、制御というかコントロールは難しいと思います。特にカレラ4では、カレラ2と比べると自分の「力」でコントロール車を制御している気持ちが希薄でした。スピードレンジが高すぎて、どう考えても自分のコントロールの限界を超えているのが明白だからです。でも、RRで素人が無理なく楽しむにはあの方式しかないと思います(RRでリアが滑ったときは凄く怖い・・・本当に怖い・・・)。ランチャはかなり楽しめました。これは明確な原因は不明です。車の性格なのかもしれません。とにかく痛快な車でした(いつもヒューズを携行する必要はありましたが)。

以上ように4WDも楽しんだのですが、やはり自分でコントロールできる範囲がいいのかと思いFRに回帰することにしました。でもすでに車は恐ろしいまでのパワーになっていました。200馬力でももてあますのに300馬力オーバーは素人には扱いきれません。コントロールしているように思っているだけで実際は電子デバイスの「手のひらの上」です。それでも大パワーのFRはおもしろいものですね。最終的には小振りなボディーにハイパワーエンジンのBMW135iに乗って楽しく過ごしていました。湧き上がるトルクと暴力的な加速、バランスの取れたコーナーリングでこれも最高の1台でした。
ところがその蜜月期は比較的短期間でした。4枚のドアが必要になったわけです。4枚ドアの痛快な車はないものか・・・でも小さいヤツはダメだし・・・。M3セダン以外には存在しません。でも今のM3はV8で400馬力オーバーです。実際に400馬力オーバーの車にも試乗しましたが、これはどう考えても4WD以外では成り立たないのではないかと確信しました。あまりにも運転が難しい。電子デバイスがすぐにパワーを絞ってしまいます。

ということで話が戻りフルタイム4WDです。今度はもっと進歩した4WDを探すことにしました。フルタイム4WDでは前後のトルク配分をいろいろと調整する場合がありますが、私が探しているのはさらに後輪左右のトルク配分を制御するタイプです。この機構を持つ車はかなり少なくなります。私の知る限りでは以下の5車種です。
アテーサETS—ProのGTR V spec
AYCのランサーエボリューション
リアスポーツデファレンシャルのアウディS4/RS5
ポルシェ・トルク・ベクトリングをオプションにしているポルシェターボ
ダイナミック・パフォーマンス・コントロールのBMW X6
(ホンダのSH-AWDを搭載するレジェンドは生産中止)

しかもこのなかから4枚ドアである程度の大きさだと
AYCのランサーエボリューション
リアスポーツデファレンシャルのアウディS4
しかありません。さすがに44歳でランエボのあのアグレッシブなデザインは辛い。当然ながら我が家の首領様の許可も出るわけがありません。

ということで今アウディS4に乗っています。結局はオーナー1と同じ選択になりました(色は違います)。現段階で車としての機構がもっとも進んでおり、普通のデザインで、普通に乗れる車、しかも4枚ドアはS4以外に存在しないと思います。まだ少ししか乗っていませんが、凄い車です。自分の運転が上手くなったと錯覚するほどいい車です。電子デバイスを含めた車の介入が自然で自動車版「鼓腹撃壌」だと思います。車に「操られているけれどこれならいいか」というのが結論です。



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