エスティマハイブリッド

最近、エスティマハイブリッドとよくすれ違います。エスティマの中でのハイブリッド車の割合が多いと感じます。実際、ディーラーの人も多いと言っています。みんな省エネ、地球温暖化に関心が高いのでしょうか。いいえ、そうではありません。本気で地球温暖化防止に貢献しようと考える人は、2トンもある重い車は買いません。運動エネルギーは、1/2mV2乗ですから、m(質量)に比例して使用するエネルギー量も多くなります。エネルギー消費量を小さくしたい人は、mの小さい車=軽い車=軽自動車 を買うはずです。最良なのは自転車を買うことです。
エスティマハイブリッドを買う人は、ほどほどの加速性能が得られて、燃費も良いという理由で買うわけです。燃費については、比較の対象は、エスティマ2.4Lエンジン車ではありません。これと比較した場合、ガソリン代の差で元をとることはほとんどできません。3.5Lエンジン付きのエスティマと較べるわけです。加速性能は多少劣りますが、3.5Lエンジン車とは燃料(3.5Lはハイオク、2.4Lはレギュラー)の差と燃費の差から約2年で元(車の価格差)が取れます。

ハイブリッド車の特性で、走行中にブレーキを踏むと回生ブレーキが効きます。これは、このとき発電機をめいっぱい回してエネルギーを回収しています。運動エネルギーが電気エネルギーに変換されるわけで、体感的にはエンジンブレーキが効いているのと同じです。通常のブレーキに加えて、エンジンブレーキが同時に効くようなもので、ブレーキの効きが強く感じます。そっと止まりたいときは、ごく軽くほとんど効かない程度にブレーキペダルを踏めば、回生ブレーキだけが効いて、オートマを2ndに入れたときと同程度の減速をします。アクセルから足を離して惰性で走行しているときも、発電機を回して回生します。このときはエンジンブレーキ的な減速は感じませんが、一般の車よりも減速の度合いが大きいため、先にある信号が赤になったのを見て同時にアクセルから足を離すと、後ろの車との車間が縮まります。20km/h以下のごく低速になったとき、発電機への歯車(もしくは発電機そのもの)が回っているのを感じます。不快なわけではないですが、ガソリン車にはない感覚で、ハイブリッドシステムが付いていることを実感します。

エスティマハイブリッドのボディーカラーは専用色がある反面、色の選択肢が少ないです。選ぶなら「ライトブルーマイカメタリック」でしょう。
普通のエスティマの顔は、鉄人28号を連想する「こわい顔」系ですが、ハイブリッドは「ちびまるこちゃん」を連想する「小さい女の子の顔」系です。当然こちらの方がかわいいです。エスティマハイブリッドが売れる理由はこれだと思っています。私も購入した最大の理由はこれでした。オプションのレーダークルーズコントロールを付けるのはやめましょう。せっかくのかわいい顔が台無しになります。

エスティマハイブリッドを自分の車として乗ってみると、カタログではわからなかったことがいろいろわかってきます。
まず、ハイブリッド車というのは、究極の「オートアイドルストップシステム」なのですね。以前、「アイドル・ストリップ運動実施中」というステッカーを付けたトラックを見かけました。関係ない...(失礼)。 ハイブリッドだから燃費がいいのではなく、エンジンがアイドリング状態になったとき、エンジンを止めるから燃費がいいのです。エンジンがアイドリング状態になった時というのは、停止したときばかりではありません。アクセルペダルから足を離せばアイドリング状態になります。そのときエンジンを止めます。エンジンを止めて惰性走行になるわけですが、駆動軸が回る力を利用してモーターを回転させ、モーターを発電機として使って、発電した電力をバッテリーに貯めます。
普通のガソリンエンジン車は、高速道路など加速減速をせずに、一定のスピードで走れる道路を走行したとき燃費が良くなります。しかし、ハイブリッド車はそういうところでは燃費を稼げません。もちろん、燃費が悪いわけではありませんが、普通の車と同じです。ハイブリッドが得意なのは、渋滞路や渋滞とはいかないまでものろのろ運転の道です。アクセルから足を離せばエンジンが止まるわけですから、渋滞中はガソリンを使いません。低速走行時は、モーターのみで動きます。そのモーターの電源は減速時に稼いだ電気です。また、クルーズコントロールで60km/h以下の一定スピードで走っているときは、エンジンを切ってモーターのみで走る割合が多少多くなります。走行抵抗の分だけエネルギーを補充すればいいので、たいしたエネルギー量ではありません。そういうわけで、エンジンをこまめに切り、低速走行時はモーターのみで走るから燃費が良いわけです。

別なメリットは、ブレーキパッドがあまり減らないことです。軽くブレーキペダルに足をのせれば、モーター(発電機)による強力な回生ブレーキがかかるので、ローター&パッドによるメカニカルブレーキを使わなくても十分減速します。
「慣らし運転」というのがありますが、何を慣らすかというとそのほとんどはブレーキです。ローターとパッドの摺り合わせです。新車時やパッド交換時は、ローターとパッドが完全には密着していません。それを摺り合わせて密着するようにするのが慣らし運転です。ハイブリッドの場合、回生ブレーキで減速してしまうので、この摺り合わせがなかなか進みません。ブレーキが本来の効きになるまでには、普通のエンジン車より長い時間がかかります。しかし、それができてしまえば、回生ブレーキ+メカニカルブレーキで強力な減速が得られる上にパッドがあまり減りません。
また、エンジンが止まっている間は、エンジンオイルを消耗しないので、オイル交換の間隔も長くなり、標準的走行状態では15000kmごとに交換すればOKです。ガソリンスタンドのお兄ちゃんの「5000kmごと、できれば3000kmごとにオイル交換しないとエンジンに良くないですよ。」という口車に乗ってはいけません。
これらを総合すると、ハイブリッド車はガソリン代だけでなく、その他の消耗品も節約できるわけで、ハイブリッドによる価格上昇分の元を取ることは、難しくはないのかもしれません。

ハイブリッド車はスタート時にはエンジンが回りません。初めはびっくりします。スタートボタンを押してもエンジンがかからないのですから。ゆっくり発進するときは、モーターのみでスタートし、加速するときにエンジンがかかります。フル加速時は、前後のモーター&エンジンすべてが動いて加速します。加速度は、3.5Lエンジン車には負けますが、2.4L車よりはかなり速いです。しかし、後輪モーターが動く時間はわずかで、Sレンジにしてもほとんど同じです。フル加速時は、もう少し後輪モーターが回ってくれてもいいと思いますが、早々に止めなければならない事情があるのでしょう。後輪用モーターは、モーターとして動く時間よりも発電機として動く時間の方が遙かに長いようです。しかしながら、発進時の後輪モーターのトルクは十分で、たまに後輪だけホイールスピンします。

ハイブリッド車の最大のメリットは何なのか。燃費がいいこと? それはそうですが、400万円超のエスティマハイブリッドを買う人がガソリン代の差を云々するとは思えません。まして、レクサスLS600Hを買う人がガソリン代がどうこう言ったら笑いものです。何をもってメリットと考えるかは人それぞれで、いろいろな見方があっていいと思いますが、私にとっての最大のメリットは、ブレーキの効きがいいことです。エスティマハイブリッドに付いている普通に言うブレーキシステムは、16インチローターのごく普通のディスクブレーキです。17インチでもなく4ポットキャリパーでもありません。しかし、ハイブリッド車にはエンジンブレーキよりもかなり強力な回生ブレーキです。これについて説明します。
ハイブリッド車の場合、アクセルペダルから足を離したり、ブレーキペダルに足を乗せると駆動用のモーターが発電機に変わります。モーターと発電機は同じものだということはご承知と思いますが、ハイブリッド車の回生ブレーキは電車のブレーキと同じです。電車が減速するとき、機械的なブレーキはほとんど使いません。「電気ブレーキ」というやつで減速します。電車が減速するとき、ヒューンという音がしますが、ハイブリッド車も同じ音がします。これはモーターへの電力供給を切って、車体の慣性力でモーターを回転させて、発電機として動かしています。このときこのとき、発電機が高速回転してヒューンという音が出ます。そこで発電された電力を、ハイブリッド車の場合はバッテリーに蓄え、電車の場合は架線に戻します。運動エネルギーを電気エネルギーに変換しているわけで、運動エネルギーが減るということは減速することです。
ブレーキペダルを踏めば、メカニカルブレーキと回生ブレーキがダブルで効くので、強力なブレーキ力が得られます。エスティマハイブリッドの2トンの巨体に強力な減速Gを与えてくれます。メカニカルブレーキの効きは、タイヤのグリップ力に依存する部分がありますが、回生ブレーキはタイヤとは関わりありません。それによって、エスティマハイブリッドの貧弱この上ないタイヤでもきちんと止まってくれるわけです。ちなみに、電車がメカニカルブレーキと回生ブレーキをダブルで効かせたら、立っている人はみんな転んでしまいます。

エスティマハイブリッドはE−Four(電気的4輪駆動)と称しながら、4輪が駆動されるのはほとんど発進時だけで、通常走行時は雨でもずっとFFです。雨の中のコーナーリングは、車体が重いこともあり結構滑ります。滑ってから一瞬4WDになりますが、すぐFFに戻ります。これを4輪駆動と言っていいのでしょうか? 冬の雪道を天文台まで走るのはちょっと不安があります。路面が雪でも、定速走行時はFFです。
下りの緩いコーナーを50km/hぐらいで走っていたら、四輪ドリフト状態になって対向車線にはみ出し、ひやっとしました。これはFFだったからではなく、車体が重いからです。そのとき、回生ブレーキは最大まで効いている状態だったので、それ以上減速しようもなく、ハンドル操作だけで立て直しましたが、対向車が来なかったから、こうして記事を書いていられるわけです。

別な視点からエスティマハイブリッドの利点を考えます。
天体用としての究極の屋外電源がこの車です。この車、ハイブリッドバッテリーからAC100Vをとれます。それもMax1500Wまで。要するにAC100Vのドライヤーが使えます。屋外でドライヤーが使えたら・・・と思った人は多いことでしょう。湿気でレンズがくもるのは宿命ですが、ドライヤーさえあればあっという間に乾きます。乾かした後は、しばらく余熱で露が付きません。この車が来る前は、電気ヒーターを機材のそこら中に巻き付けて、コードだらけになっていました。これがウソのようです。
AC100Vを取れる車は他にもいくつかありますが、ほとんどは100W程度までです。Max1500Wというのは、私の知る限りこれだけだと思います。湯沸器も電子レンジも使えます。夜食の幅が広がり、快適な生活ができます。
ハイブリッドバッテリーがある程度消耗すると自動的にエンジンが掛かり、発電機を回して充電します。充電が完了すれば、もちろんエンジンは自動停止します。天体観測には大変便利な電源車です。また、車中で仮眠するにしても、セカンドシートが大変良くできており、オットーマンも付いて快適です(7人乗りの場合)。



ここまでは、購入してから1年以内の時期に書きました。上の記述では、いいことばかりのようですが、2年目以降に問題が出てきました。
購入してから1年ほどたった頃から、回生システムがおかしくなりました。通常なら、ブレーキを踏むとエネルギーメーターが、回収側にフルスケールまで振れて、運動エネルギーを最大限まで回収していることがわかります。これが普通ですが、しばらく運転していると、ブレーキを踏んでもわずかしか回収側に振れなくなります。ハイブリッドバッテリー残量はどんどん減っていくし、回生ブレーキが効かなくなるわけで、通常よりブレーキペダルを強く踏まないと同じようには止まってくれません。運動エネルギーが回収されなくなる上に、ブレーキの効きも悪くなるわけです。
私の車だけおかしいのかと思って、ディーラーでそういう方面に詳しいサービス担当を呼び出して聞いてみたら、他にも同じことを言ってきている客がいるそうです。また、私と全く同じ車に乗っている知り合いに聞いたら、本人は気づいてなかったですが、そう言われて注意してみてみたら同じ症状が出ているそうです。ディーラーからメーカーに問い合わせたら、制御プログラムがそうなっているとのこと。つまり、世の中のエスティマハイブリッドはすべて同じ症状が出るわけです。これが制御プログラムのバグなのか、そうせざるを得ない事情があってのことかは、メーカーは教えてくれないそうです。
仕方ないので、減速時にエネルギーを回収したいときは、めんどうですが手動で「S」または「B」に入れるようにしました。手動でやれば回生するので、私は制御プログラムのバグだと思っています。バグだとすれば、リコールに値する重大な問題でしょう。バグではなく、理由があってそういう制御をせざるを得ないのだとしても、問題点を改修してプログラムを入れ替えるべき重大な問題です。車というのは、路面状態・ブレーキ・タイヤ等の条件が同じとき、ある一定のスピードから同じ力でブレーキを踏んだら、停止するまでの距離は常に同じでなければなりません。これは自動車の基本中の基本です。現状のエスティマハイブリッドは、ときによって停止するまでの距離がかなり変化します。これは自動車としてあってはならないことです。エスティマハイブリッドの2トンの巨体を止めるには、あの貧弱なブレーキとタイヤでは不十分で、回生ブレーキがフルに効いてくれる必要があります。それが途中でなくなってしまうとすると、安全性の面からあまりお勧めできる車ではなくなります。それでもAC100V1500Wが取れる魅力で買った場合は、すぐに標準タイヤを捨てて、ブリジストンRE050 235/55−17に交換すべきでしょう。回生ブレーキがきかないときに少しでも安全に止まるためには、取り付けられる(取り付けても良い)範囲内で、最も止まるための性能が高いタイヤを付けるべきです。


エスティマハイブリッドは、購入後1年間は、加速が良くて燃費が良くてブレーキの効きもいい車です。しかし、2年目以降、それらがほぼすべてなくなります。燃費が大幅に落ち、回生ブレーキは効かないし、ハイブリッドバッテリーの残量がゼロに近い時が多くなり、その場合は、加速時のモーターアシストが無くなります。ディーラーに改善を要求しても、なしのつぶてです。ほとんど詐欺ですね。それでも、AC100V1500Wが取れるというメリットだけで、この車を乗り続けますが。

その後、ハイブリッドバッテリーを交換してもらいました。・・・といっても、簡単に交換してくれるわけではありません。詳しい話は「天文台日記」のどこかに書いてあります。ハイブリッドバッテリーを交換すると、すべて問題が解決して新車時の状態に戻ります。
私のエスティマは2年半の間に3回ハイブリッドバッテリーを交換しました。3年目の車検時に載っているのは4個目のバッテリーです。5年または10万kmぐらい持つはずのハイブリッドバッテリーを1年に1回交換しています。そうしないと新車時の性能が保てません。


プリウスで問題になったABS作動時にブレーキのききが弱くなる現象はエスティマハイブリッドでも出ます。さらにプリウスよりもエスティマの方が症状が重いと思います。なんでプリウスはリコールでエスティマは放置されるのでしょう。

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