イーソス13mm  (6mm,8mm,17mm)

イーソス(Ethos)というアイピースをご存じでしょうか。テレビューから発売されているアイピースで、焦点距離13mm、見掛視界100度という超広角です。テレビュー・ジャパンのWebサイトはこちら
Webサイトにあるイーソスの説明は、私どもの天文台を念頭に書いたのではないかと思える内容です。オーナー2はしっかりそれに乗って、出張で東京に行ったついでにテレビュー・ジャパンに行き、まとめて2個買ってきました。

このイーソスというアイピース、ものすごい高性能です。良い光学系の鏡筒を持っている人はぜひ買ってください。テレビュー・ジャパンで「特価 92,400円」となっています。もちろん1本あたりです。しかし、これを一生使うと思えば、安い買い物です。買うなら、自分の天文人生の中のできるだけ早い時期に買うべきです。1日でも長い期間、これで星を見た方が幸せだと思います。

何がすごいかというと、Webサイトにある説明に誇張もハッタリもありません。書いてあるそのままの見え方です。
最大の特徴の見掛視界100度ですが、視野の最外周まですべての星がシャープな点になります。そして、最外周まで歪曲収差を感じません。「最大角倍率歪曲は視野全体のわずか1%」とありますが、1%という数字を納得できます。「低反射率と高透過率、ハイコントラスト」も強調されていますが、「おっしゃる通りです」という感じです。「快適なアイレリーフ」とうたっていますが、これは普通です。目の位置に比較的シビアだし、めがねをかけたままでは無理です。でも、「超広角の13mmとしては」快適だと思います。目に一番近いレンズがすぐそこにあるので、汚れやすそうだし、夜露で(涙でも)曇ります。欠点と言うほどではありませんが、仕方ないところでしょう。

これをNP127双眼望遠鏡に付けると別世界です。もちろん、2個並べて取り付けても目幅以内です(毒キノコやXW30はダメ)。以前は、パンオプティックや31.7mmスリーブのナグラーで見ても、その広視界とシャープさに驚いていましたが、それよりもずっと上です。見かけ視界が100度もあると、目をぐるっと回さないと全視野が見えないのではないかと思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。両目で正面を見れば、全視野が見えます。さらにすごいのは、「アイピースを覗いている」という感覚がありません。望遠鏡なしで、普通に星空を眺めている感じです。人間の目は片目で100度以上の範囲が見えていますが、きちんと物体を認識できているのが100度ぐらいなのだと思います。ですから、両目でまわりの景色を眺めているのとほとんど同じ感覚です。もしくは、松本ミラーが付いているので視線が斜め下にいっているときは、宇宙船の広い窓から宇宙を見下ろしているように見えます。
焦点距離が13mmですから、ある程度倍率が上がりますが、倍率が高いのに広角ということは、見かけの視野円が大きいということで、目の前に広大な星の世界が広がっています。M31とその伴星雲が宇宙空間にふわっと浮かんでいる感じと宇宙の奥行きを感じて立体的に見えます。

せっかくテレビュー・ジャパンサイトの例に出ているので、35cmF4反射鏡で二重星団を見ました。まさに写真の通りでした。倍率が100倍を超えるので、二重星団の距離がかなり離れて見えますが、確かにコントラストがよく、両方とも視野内に入ります。ただし、パラコアが必要です。さすがにこれが無いと周辺のコマ収差が大きく出ます。イーソスの説明書に、パラコアの可変バレルを最も伸ばして、2インチスリーブを使うよう指示されています。そうした場合、視野全体の星がすべて点です。

我々がイーソスのファーストライトで最も注目していたのは、ε180EDに付けたときどうなるかでした。問題は星が点になるかどうかです。F2.8という急角度で光が入射してくるわけですから、それを視野の隅まで点像にするのは難しいことです。これまでε180EDで隅まできれいな点像になったのはXWだけでした。
イーソスは、みごと! 視野全体の星を点像にしました! 倍率38.5倍,瞳径4.7mm,実視界2.6度,歪曲なしのすばらしいRFTになりました。ε用アイピースはこれ1本だけでOKです。ただし、タカハシの接眼部では、ドローチューブを最も奥に入れても惜しいところでピントが合いません。私の場合、あと1mm奥にいってくれれば、というところでした。そこで、タカハシの接眼部を旋盤加工して3mmほど短くしました。たかだか3mm短くなるだけですが、これでほとんどの人が合焦するはずです。ε180EDには、イーソス13mmが1本あればそれで十分ですから、ぜひこの組み合わせとこの加工をお勧めします。「ノウハウ集」参照。

イーソス13mmが1本あれば、他の10mmから20mm程度のアイピースはいらなくなります。そのあたりのものが複数ある人は、すべて売り払ってこれを1本買うのもいいと思います。
オーナー2がテレビュー・ジャパンに行って、店長に「2本まとめて買うと良い鏡筒が1本買えてしまうという値段は高すぎる!」と言ったら、「じゃ、20万円の鏡筒1本買うとそれで満足できますか?」と言われたそうです。確かに、新規に20万円の鏡筒を買うより、既存の鏡筒にイーソスを付けた方が満足感は大きいと思います。1本なら10万円しないし・・・

こちらもご覧ください。オーナー2のレポートがあります。



後からイーソス8mmが追加になりました。
8mmの方は、外見的な構造は同じですが、直径も多少細くてレンズは設計的に全く別物です。スマイスレンズを換えてもう一本作りました、という製品ではありません。しかし、見た目の星像はイーソス13と何も変わりません。倍率が上がっただけで、見かけ視界100度の超広視界が視野周辺まで見事にシャープで歪みのない点像になります。
ただ、欠点というほどではありませんが、イーソスの13mmと8mmは同焦点ではありません。かなり違います。13mmを外してそのまま8mmを付けると星が全く見えません。大幅にピンぼけで、星が拡散して見えなくなっています。
また、両方とも2インチと31.7mmのデュアル
スリーブですが、31.7mm側が出っ張っているので、フィルターは31.7mm用しか付けられません。


そしてまた、6mmと17mmが追加になりました。なんで6と17mm? 5と20なら全部買うのに... 6,8,13,17という刻みは細かすぎます。この後、4mmと22mmが出るならそれでもいいですが、難しそうな気がします。22mmだとかなり太くて大きいアイピースになりそうですね。
17mmが届きました。2インチスリーブだけです。外径は13mmと同じで、多くの人は双眼装置や双眼望遠鏡に使用できます。これもすばらしいアイピースでした。焦点距離が違うだけで、13mmや8mmと同じ見え方です。ピント位置は8mm、13mmともかなり違います。見かけ視界や星像の良さを優先すると、同焦点という設計は無理なのでしょう。ほとんどの望遠鏡の場合、合焦範囲内に入るのでピントを合わせ直せばいいだけですから、この性能を考えるとそれくらいは問題ありません。しかしながら、ε180EDに17mmを付けるとダメでした。ピント調整範囲に入りません。でも、13mmで十分です。17mmで合焦したとしても明るすぎで、日本の空では実用的ではありません。



(後日追記)

後日、現在のε180EDの接眼部は、こんな形に落ち着きました。アイピースはイーソス13mmしか使いません。現在は眼視専用鏡筒として使っているので、β-SGRはただの飾りです。






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