MAXVISION 127ED

日本に新しい天体望遠鏡のブランドがやってきました。 「MAXVISION」
現在は天体望遠鏡ショップの「スカイバード」のみで販売されています。
「MAXVISION」は、中国の「晶華光学股分有限公司(JOC)」という光学メーカーが最近立ち上げたブランドで、ブランドの歴史は浅いです。それまでOEM(悪く言えば下請け)専門だったJOCが、初めて自社ブランドで製品を出荷するようになりました。ですから、メーカーとしての歴史はあり、世界中に数多くの望遠鏡を出荷してきました。シンタよりは小さいですが、それでも社員は3000人ぐらいいるそうです。

MAXVISION 127EDのスペックは   D=127mm f=950mm  F7.5
トリプレットアポクロマート。対物フードは脱着式で、収納時は反対向きにして、全長が短くなります。このフードがたいへん作りが良くて、お金をかけすぎでは・・・ と思ってしまいます。接眼部はクレイフォードで減速微動付きです。とてもよく見える8x50の正立ファインダー付き。

右の写真は、TOA130FとMAXVISION 127ED のサイドバイサイドです。このTOA130Fはタカハシで調整してもらって、帰ってきたばかりの非常にコンディションの良い鏡筒です。
この状態で見比べると、低倍率での星像のシャープさは同等で差を感じません。よく見るとMAXVISION 127ED は周辺部がわずかにピンぼけで、星像が大きくなっています。しかし、周辺部でピントを合わせるとシャープな点になります。要するに、画像湾曲があり、わずかですが中央と周辺ではピント位置が違います。しかし、それだけで、他の収差は実質的に無いと言っていいでしょう。ピントを中心と周辺の中間あたりで合わせると、全面シャープな星像になります。ただ、アイピースにイーソス17mmを使うと、イーソス側の画像湾曲と加算されて中央と周辺では無視できないくらいのピント位置に差が出ます。こういうのを相性が良くないというのでしょう。XWだとほとんど気になりません。広視野が必要ならXW30mmを使うのがいいでしょう。
しかし、イーソス17を使っても画面最外周の星でピントを合わせれば、シャープな点像になります。ここがイーソスもMAXVISION もすごいところです。
画像湾曲はTOAでもあって、それを補正するためにフラットナーがあります。
高倍率で星を見ると、エアリーディスクが中心にあって、そのまわりにきれいな同心円のディフラクションリングが見えます。二重星で分解能のテストをしたいのですが、このあたりでは常時、シーイングが悪くて限界性能まで行きません。そんな中でのTOA130との比較では、差がありません。TOAで見えるものはMAXVISION でも見え、MAXVISION で見えないものはTOAでも見えません。

金額が安いものなので、欠点もあります。対物フードを逆向きにして収納するとき、フード内部が対物レンズセルにこすれて傷が付きます。これが重なると内面のつや消し塗装が光ってきます。私はフード内面に植毛紙を張りました。脱着フードの関係で、対物レンズキャップがセルにねじ込み式です。このキャップも作りがよい高級感のあるアルミ製です。ところが、ネジのピッチが小さいため、ネジが噛んでしまって取れなくなる可能性があります。対物キャップに写真のような加工をしておきましょう。キャップの端のほう(銀線上)に2つ穴を開け、タップをたて短いネジをねじ込んでおきます(キャップのすぐ内側にレンズがあるので注意!)。写真は1/4インチネジで六角レンチで回すタイプです。これくらいがちょうどいいでしょう。いざというときは長い棒を2本のネジに引っかけててこの原理で回せます。
鏡筒バンドは2分割式ですが、片側に付き、1/4インチネジ1本でアリガタに固定です。問題ありませんがちょっと不安です。接眼部は2インチ天頂ミラーを使うと、ドローチューブを一番奥に入れても、アイピースの種類によってはピントが合いません。鏡筒が長すぎるわけですが、そこはどうすることもできないので、この場合、接眼アダプタの光路長を短くします。「ノウハウ集」の「MAXVISION 2in.接眼部」参照。
クレイフォード式の接眼部は眼視用には悪くありませんが、写真を撮るには精度と強度不足か。ファインダーが接眼部の周りを全週回転できるのはいいですが、足が短くて使いにくい。

難点はありますが、この鏡筒、あの値段でこの性能は驚異的です。13cmクラスの良い鏡筒を持っていない人は、まずこれを購入の第1候補に上げて良いでしょう。中国メーカー、恐るべし! ただし、JOCはOEMメーカーなので、MAXVISION ブランドではない、見た目にそっくりな鏡筒も出荷しています。見た目は同じでも性能は別物ですから注意してください。
ニコンED10cmやTOA130で十分に星を見た後にMAXVISION を見ても、全く劣るところなく、同等な星像が見えます。

 



レポートトップへ