ななつがたけ北 天文台 製作記

設計コンセプト


天文台には、大きく分けて公共天文台と個人天文台があります。両者には歴然とした設計コンセプトの違いがあります。

公共天文台の場合、最優先されるのは「安全」です。安全性が最優先され、安全確保のための予算枠というものがあってはなりません。必要なだけのお金をかけるべきです。夜間、暗いところで使うものですから、あらゆることを想定し、「想定外の事故」というものを排除しなければなりません。
次に優先されるのは、使い勝手の良さです。天文台への出入りや望遠鏡をのぞくとき、無理な体勢や窮屈な姿勢にならなくても良い設計が必要です。もちろん、足を取られたり頭をぶつけたりするようなことがあってはなりません。自治体が作る天文台や営利目的の天文台なら、体の不自由な人でも見学できる設備も必要です。個人が作る天文台でも、不特定多数、天文についての知識のある人・ない人、いろいろな人が使う場合は、公共天文台と見なすべきです。一般公開するという場合は、オーナーはそれなりの責任を負わなければなりません。
これに対して個人天文台の場合、オーナーが良い点も悪い点もすべてを把握しているわけで、安全についてはオーナーが気をつければいいことで、最重要ではありません。それよりも、最小限の予算で最大限の目的が達成できる設備や機材をそろえることを考えればいいわけです。

「ななつがたけ北 天文台」は、天文台オーナーの知り合いが経営するペンションの敷地内に建設されます。天文台オーナーの考えとしては、自分が使うことがメインですが、ペンションに泊まっていただいたお客さんには、できる限り見学していただいて、他ではめったに見られないきれいな天体を見てもらいたいと思っていました。従って不特定多数の人が使うわけですから、「公共天文台」の範疇に入ります。
公共天文台の場合、望遠鏡の構造にも制約が付きます。ニュートン焦点の大口径反射というのはあり得ません。天頂付近をのぞくときどうなるかを考えれば当然のことです。赤道儀もドイツ式は望ましくありません。鏡筒側・バランスウエイトとも「突起物」であり、ぶつかる危険性があります。出っ張りを極力排除し、ケーブル類は露出しない構造がいいでしょう。
無難なのはフォーク式(片持ちも含めて)でしょう。できればクーデ式で、ピラーは1本足ではなく、2本足のアーチ型にして、車いすでも覗けるようにするのがベストです。まるで中央光学のPRのようですが、何の関係もありません。
「ななつがたけ北 天文台」は、そこまでの公共性は求めないので、片持ちフォーク赤道儀にリッチークレチアン望遠鏡を考えました。下の写真です。

昭和機械製作所製 25Eエルボ型赤道儀と
35cmF6リッチークレチアン望遠鏡



見た目もカッコいいし、昭和機械の社長は、天文台オーナーの学生時代の星仲間です。
具体的には、かつて「大学天文連盟」というのがあって、その加盟校の1年後輩です。

ついでながら、天文台建設地のペンションオーナーは、大学天文連盟の1年先輩です。














これで行こうと思っていたら、天文台建設場所になるペンションオーナーから予想外の言葉が・・・
「天文台をペンション敷地内に作るのはいいが、ペンションの施設として使うつもりはない。個人の天文台として作ってもらいたい。」

これによって、設計コンセプトが180度変わりました。公共天文台から個人天文台へ。
安全性を捨てていいのなら、設計は簡単になるし、予算も少なくて済みます。私としてはありがたいですが、ほんとにそれでいいのかな・・・? 
これによって、主鏡はF6リッチークレチアンからF4ニュートンへ。観測室の安全・快適設計も白紙撤回、または簡略化へ.。「観測機材」、「設計」のようなものとなりました。
一般の人に見学させてほしいと言われても、原則断ることになります。

しかしながら、この天文台の望遠鏡で、小型望遠鏡では見ることのできないきれいな星を自分の目で見たいという思いは同じです。その用途に適した光学系を入れます。もちろん必要なときは、簡単に写真撮影もできるシステムにします。








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