2001年、ニューヨーク。
「9.11事件」とよばれる同時多発テロ。
この事件からさかのぼること28年。
1973年、南米チリにおいて軍事クーデター。
1970年に自由選挙によって誕生した史上初の社会主義政権は、
アメリカ支援によるこの軍事クーデターによって崩壊。
アジェンデ大統領をはじめ、多くの民衆が虐殺される。
まさにその日が、9月11日。
もうひとつの「9.11事件」
この虐殺された人々の中に、ひとりのフォークシンガーがいた。
Victor Jara ビクトル・ハラ。
ビクトル・ハラは、チリの町や村を巡り歩き、人々の間で歌い継がれているフォルクローレを、現代の表現として歌った。
「新しい歌(ヌエバ・カンシオン)」運動をになう旗手のひとりであった。
ビクトルはクーデターの当日、チリスタジアムに連行される。
彼は、そこで連行された人たちを元気づけるために歌うが、ギターを弾けないよう、狂信的右翼憲兵に腕を砕かれる。
それでも、彼は人民連合を讃える歌『ベンセレーモス(我々は勝利する)』をうたいつづける。
そして、彼は虐殺された。
このサンチアゴの1973年「9.11事件」と、ニューヨークの2001年「9.11事件」とを結ぶ糸。
そこには、悲劇があり、そしてその記憶の風化がある。
そして、また悲劇は繰り返される。
この作品は、フィリア・プロジェクトの根幹のテーマであるふたつの「9.11」に橋をかけることによって、危機に瀕した世界の現在に迫ります。
いつでも笑顔でやさしく民衆のために伸びやかに歌う、ビクトル・ハラの歌声にのせて。
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