『邦語文献を対象とする参考調査便覧』(現在版)の書評
     書評者:久留米大学図書館長・教授 遠山 潤氏  (図書館雑誌98巻11号より)  
 
   

  本書は、1988年の初版を大幅に増補改訂したものである。1988年のときすでに「10年におよぶ編者の蓄積の成果」と本誌で評されているので、計26年間に及ぶ営為の結実ということになる。主題検索キー(50音順)、分類別参考図書一覧、人物関係参考図書一覧(50音順)の3部から構成される。タイプとしては『日本の参考図書』や『調査研究・参考図書目録』(TRC)と同じくレファレンス資料を探すための三次資料である。(略) 書名中のキーワードから書誌類を検査する道具としては『書誌年鑑』がよく知られているが、本体が分類順に構成されている点と、書誌に限らず文献中に潜む各種レファレンスツールへのガイドとなっている点が違う。そのツールの識別記号は次の通りで、広汎な捜索の跡がうかがえる。
   【1】解題、研究史  【2】書誌、物品目録  【3】巻末・章末参考文献  【4】年譜、年表
   【5】年鑑、年報、白書、統計  【6】人名事典、団体・機関名簿  【7】辞典、事典、索引
   【8】便覧、総覧、ハンドブック 【9】雑誌目録、総目次、総索引 【10】AV資料、図鑑、図版、地図
  本書には二通りの使い方がある。まず自分の着想語を主題検索キーで調べてみる。例えば、「イエスの方舟」(主題語)と引いてみる。すると "イエスの方舟 【3・4】 160081" と記述されているので、本書の書誌番号160081の箇所を見ると、"160081 169 イエスの方舟"という見出し下に 『父とは誰か、母とは誰か』 という書名が現れる。そして、その書名に付けられた【3・4】(種別記号)から、この図書には"イエスの方舟に関する巻末・章末参考文献、年譜・年表"が収載されていることが分かる。(略) もう一つの使い方は、分類別参考図書一覧を漫然と読みあさることである。これだけのキーワード検索を用意しながら、編者は「索く」という作業より、NDCを頼りに書誌を「読む」方が本書にもっともふさわしいと推奨している。(略) 初版との主な相違は、人物関係参考図書一覧を別立てとし、主題語、文献ともに倍増して充実を図り、冊子体とあわせてCD版を作り、冊子体の購読者にはCDの補遺版を1,000円で頒布するといった点にある。これにより、常に現在的なデータを保つという優れた利点を実現している。(略) 
  主題語の語彙統制は最小限に止められている。相互参照は見あたらない。主題検索キーは自然語の森、それもややジャングルに近い森という印象すら受ける。しかし、それは件名という図書のタイトルレベルで切り取った主題語の概念水準に慣れた眼が受ける新鮮な驚きに似ている。書誌自体は周到に分類統制されており、音順に排列された豊富な主題検索キーとの間を往還するのは楽しい。だから、冊子体とCD 版の両方があるが、冊子体の方を勧めたい。本書評でも参照した類書と併せて使えば、レファレンスサービスに深みや、するどさが増すことだろう。

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