腎不全・エイズキャリア・白血病キャリアとは

この病気のキャリアである事に、大騒ぎする必要は全くありません。
起こってくるであろう様々な症状をきちんと勉強しておく事によって、
ニンゲン側の心配事や恐怖も減ってくるはずです。
どんな心構えが必要なのだろうと、そこからたくさんの人は始めています。
知らない事を怖がって騒ぐよりも、
知る事を始めて進んでゆきましょう。

この病気のキャリアの子と非感染の子を一緒に生活させることを
推奨する目的で書いてはおりません。
もし特別な状況下において感染している子でも
同じ空間で生活させなければならないことがあった場合に
少しでもニンゲン側の心配事を減らせれば・・・、
怖いからといって、エイズ・白血病ウィルス感染猫を家に入れることを諦めない人が増えてくれれば
という思いから、書かせて頂いております。
共同生活をしてゆく上で、この病気のキャリアの猫から非感染猫へ
全く感染しないとは言えないと同時に、
高い確率での感染もまたしないのだという事を、知って頂きたいのです。



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腎不全とは

腎臓は、体内の老廃物を血液から尿へ排出し
代わりに必要な栄養素を再吸収する大切な器官です。
また、血圧の調整や赤血球の生成も行います。
年齢が進むと自然に老化し機能の低下は訪れますが、
それ以外にも塩分の多い食事などが原因で加速してしまいます。
日頃からの食事管理は、非常に重要です。


腎臓は一部が機能しなくなるとしばらくの間は、他の部分で無理をして補うために、
なかなか症状が現れません。
しかし1度機能が失われた部分は2度と回復はしないので、
いかに早期発見がその子のために大切であるか、ご理解いただけると思います。
いよいよ臨床症状が現れるようになってしまった状態を腎不全と呼び、
急性と慢性に分けられます。
猫に最も多い病気のひとつが、この慢性腎不全なのです。

高齢になり腎機能が約60%程度落ちるまでは、
ほとんど兆候がなく気づかないことが非常に多いそうです。
尿が薄くなってきたり、便臭が少なくなってきたりして
腎機能不全という状態が分かった時には、
すでに約66%以上の腎機能が失われています。
さらに進行し、腎不全という状態になると、
お水をよく飲む、尿量が増加する、だるそう、食欲低下、
体重減少、下痢、嘔吐など

の症状が見られるようになります。
ロスくんは、やって来た当時にすでにお水をよく飲み、
ものすごい量のおしっこをしていました。
触れない子であるために、なかなか病院へ連れて行くことが出来ずに、
とうとう嘔吐まで始まってしまいました。
やっとの思いで病院へ連れて行くと、「中程度の腎不全」と診断されたのです。
この時点で、およそ75%以上の機能が失われ、もう回復はありません。
放置した場合には、身体中に老廃物が溜まってしまい、
尿毒症をおこしてやがて死に至ります。

2度と機能回復が望めないこの腎不全。
しかし、適切な治療を施せば、すぐに死に直結する病気でもありません。
症状を改善し、進行を抑えることによって、
その先何年もまだまだ生きることが可能な病気でもあります。
どうか、診断を受けても「もうだめだ」とすぐに諦めないで下さい。
愛猫の病気を受け入れ、それぞれに合った治療をしながら
共に生きている飼い主はとてもたくさんいます。
彼らが一生懸命生きる手助けを、私達はしていこうではありませんか。


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絶対不可欠な食事管理

食事管理は、かなり重要な治療になります。
たんぱく質の過剰摂取を防ぎ、リン・カルシウム・ナトリウムを制限しましょう。
カロリーを十分にとらせて、筋肉量を落とさせないことも大切です。
ロスくんの場合はメインの食事は療法食ですが、
なかなか食べてくれない時には上記のポイントを押えた
別のフードをあげるときもあります。
療法食をなかなか食べられない子には、
その子が食べられるフードをあげることも必要です。
食事量を落として体力が低下してしまうと、回復するのは何倍も大変ですし、
病気の治療どころではなくなってしまうからです。

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こんなSOSに気づいて!

年齢が7歳以上になるが、血液検査・尿検査を受けたことがない。 人間の食品を与えている。(特に塩分が多いもの) トイレチェックをしていない。 きれいなお水が常時用意されていない。 便臭が気にならなくなってきた。 尿量が増えてきた。 お水をよく飲む。 寒暖が激しかったり、ストレスがあるという環境にさらされている。 体重減少、食欲不振。

少しでも思い当たる点が見つかるようでしたら、
すぐに病院で血液検査・尿検査を受けさせましょう。
何事もなく健康であると分かれば、骨折り損でも良いのではないでしょうか。
愛猫が腎不全であると知った時に、ほとんどの飼い主は
「どうしてもっと早くに、気づいてあげられなかったのだろう・・・。」
と自分を責めます。
周りの人たちがどんなに慰めてくれようとも、もしもっと早くに検査していれば・・・と
後悔し続けるのです。
早期発見であれば、治療費もかなり軽減されると思います。
ロスくんの場合は重度ではなかったので、入院も集中治療もいりませんでした。
入院が必要なほどまでになってしまってから病院に行った子とは、
おそらく大きな差があると思います。
早ければ早いほど充分治療をしながら生活しても、
決して負担にはなりません。


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エイズキャリアとは

一般的にエイズキャリアと呼ばれている猫達は、エイズの猫と区別されています。
猫のエイズは、猫免疫不全ウィルス感染症(FIV)の猫が、
最終的にエイズとされる基準を満たす 症状に至った時に、はじめてエイズと診断されます。
人間のエイズと似てはいても全く別の病気であり、ウィルスも別のもので、
猫から人間やその他の動物に感染する事はありません。


キャリアと呼ばれている猫達はFIVの無症状期間にあり、
発症を待たずに寿命を迎えるものも多く、
未発症感染猫状態で生涯を閉じる猫がとても多いのです。
ご存知の方は、もうたくさんいらっしゃいますよね。
このウィルスは太古から存在していた事が明らかになっていますが、
なぜ今まで、私達は知る事がなかったのでしょう?
それには、2つの理由があります。
まず、ウィルスの発症するまでの潜伏期間が長い事。
もうひとつは、猫の平均時寿命が飛躍的に延びていること。
ウィルスは確かに存在していたにもかかわらず、私達の目の前に現れる前に、
宿主である猫が命を落としていたというのが現実です。
このウィルスは、発見されたアメリカでは感染率が低く、
日本やイタリアのような人間が密集して暮らしている国に多く見られます。
現代の猫は人に頼らなければ生きる事が出来ず、
そして どれほど猫達が人間と近くに生きていて、
離れられない存在かを知る事ができます。
人が密集する場所では猫も密に暮らし、必然的にテリトリーを争ってケンカが生じ、
結果として感染が増えてしまうのです。
絶対に感染を防ぎたいと望むのならば、完全室内飼いを徹底することです。


このウィルスに感染すると、1ヶ月を経過した頃から
下痢やリンパが腫れるなどの症状が現れて
急性期という期間を過ごします。
その後、数ヶ月して症状は無くなり、多くの場合2〜3年から十年以上も有り得る
無症状キャリア期に入るのです。
やがて慢性の病気が進行し始めて、エイズ関連症候群と呼ばれる状態になります。
ウィルスが攻撃するのは、病原菌や様々なウィルスに対抗するT細胞です。
徐々に免疫力は失われて、多くは口内炎をわずらい、
引掻き傷などが治りにくくなります。
痩せてきたり、下痢が続いたり、発熱があったりしながら
更に進行し、基準を満たしてはじめてエイズと呼ばれる状態になってゆくのです。

発症すると猫にとっては辛い病気ですが、その感染力は弱く、舐めあい程度ではあまり感染しません。
感染猫の血中や唾液から、非感染猫の血中へウィルスが侵入して、はじめて感染する程度です。


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白血病キャリアとは

これは、猫白血病ウィルス感染症(FeLV)と呼ばれ、感染力は強くはありません。
唾液と尿にウィルスが見られるので、よほどベッタリと生活していなければ、ほとんど感染はしないでしょう。


このウィルスは白血病だけではなく、
貧血や免疫力の低下などを起こす事でも知られており、
たまたま白血病に至った猫から発見されたためにこの名前が付いたそうです。
以前は、このウィルスがエイズを引き起こす前述のウィルスだとも思われていました。
このウィルスに感染しても、治ってしまう猫がたくさんいる事を知っておきましょう。
どうしても感染を防ぎたい場合は、ワクチン摂取という選択肢があります。
これは80%程度の効果があるといわれておりますが、万全の体調で受ける事が望ましいでしょう。
そして、万全を期すためにはやはり、完全室内飼いを徹底することです。


生まれたての子猫がこのウィルスに感染した場合は、
ほとんど100%の持続感染(体のどこかで常にウィルスが増殖している状態)
で命を落としてしまいます。
離乳期を過ぎて50%程度になり、1歳を過ぎると10%しか持続感染にはなりません。
症状は複合的で、発熱や食欲の低下など、他のウィルスと同じ症状が出てきます。
感染後、3〜4週で血液検査にて陽性が出始めます。
それでも急性期を治療などにより上手く乗り切り猫の免疫力が勝てば、
その後は陰性に転じてゆきます。
気をつけなくてはならない点は、血液検査の結果陰性に転じた後
骨髄にわずかにウィルスが数ヶ月以上潜んでいる事があります。
しかしほとんどの場合、その後ウィルスは消滅して、
もうこのウィルスには感染しなくなります。
女の子の場合、陰性であっても少なくとも1年間は、
母子のために妊娠させないようにしましょう。
検査は1度だけではなく4ヶ月程度の期間をおいて2度行うか、
検査対象の子を外界や感染猫と隔離してその期間を待ち、検査するということは、
もうたくさんの方がご存知ですね。
もし持続感染の場合でも、絶望してあきらめるにはまだまだ早すぎます。
このウィルスから起こってくる重大な病気は、もっと何年も経ってから出始めるので、
その時その時に応じた治療をしてゆけば、長い寿命を全うする事は充分可能なのです。

このウィルスは唾液と尿に出てきますので、これを考慮した上で、
その子にあった生活状況を考えてあげましょう。
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2005・3・2にロスくんが闘いを終えてから、7月に同室だった子( FIVのみ陽性)のウィルス検査を実施しました。
結果は、FeLV陰性でFIVは変わらず陽性。ロスくんからの感染は、ありませんでした。