見果てぬ夢 >>   04

 ガリアの家に泊めてもらい体を休めた翌朝、とりあえずの目的地としてガリアは自分の師匠であるスゥ=セノネースのもとへ行く事を提案した。
「あの人ならなにか知ってるような気がするんだよな」
「確かに」
 深く同意するシリア。紅月は勿論その人物を知らないが、二人がそういうのならそれに従うのが一番だろう。
 少し疑問に思って尋ねてみた。
「そのスゥって人、どんな人なの?」
「素晴らしく強い方だ。スゥに匹敵する力を持つ人は片手で足りるくらいしかいない、というかおそらくあの人が世界最強なのだろうな」
 説明を聞いて余計に人物像がわからなくなってしまった。
 とんでもなく怖い人だったらどうしよう……
 自分で言い出したくせに何故か顔をしかめているガリアの態度が余計に不安を煽る。紅月の顔が引き攣ったのに気付いたシリアは、苦笑してフォローを入れた。
「スゥは優しい女性だよ。基本的には」
 本当にフォローする気があるのか非常に疑わしい台詞である。
「すっごく不安なんだけど……」
「大丈夫大丈夫。会ってみればわかるさ」
 結局シリアに宥めすかされて、三人は旅立つ事になった。
 汚れてしまったこともあり、どうしても目立つ制服は着替えざるをえない。代わりにガリアの持っていた服を借りることになった。彼ら有翼人の服は、当然のことながら背中に翼用の穴が二つあいていた。翼を消して服を着て、それから翼を出せば着替えは簡単に済む。どういう仕組みかは知らないが便利なものである。まだ肌寒い今の時期は上にケープのような物を羽織っている。ちなみに紅月が渡された服には穴はあいていなかった。そういう服も持っているらしい。
 携帯食料など少ない荷物を纏めたら、隣町のルテキアへ出発である。
「どれくらいかかるの?」
「歩きだと一日かかるな。向こうに着いたらもう夕方になってるだろ」
 もともと歩くのは好きなのであまり苦にならないだろう。
 紅月は張り切って歩き出した。