宝箱

真夜中の午前二時
かすかな風が
心の中を流れて行く
金色に染まる麦畑と
細い道が闇の向こうに甦る

十三歳の少年が
白い雲を眺めながら
歩いている

新しい学生服を着た
わたしの娘が
少年の横を
自転車に乗って
走っていく

時は大樹の年輪のように
回りながら春の日を
幾たびもくりかえす

ああ、でも
わたしは知っている
時の神様が
微笑みながら
遥かな「想い出たち」を
永遠の宝箱の中に
そっと入れてくれることを

トップ
詩集