#32 追憶の館

4週間前、ミシガン湖畔で突然の悲報。
大会プロモーター、スティールの慟哭が響き渡る。

彼の前にあったのは最愛の妻、ルーシー・スティールの遺体。
彼女の死に動揺と深い悲しみとを隠せないスティール。
しかし、彼女の顔を目にした瞬間、スティールの様子が変わる。

「…ルーシー…じゃあ…ない…」

(あれはルーシーと違う
 わたしにはわかる………どういう事だ……?
 顔はどう見てもルーシー……なのに…「誰だ」?……あれは!?!?)


愛で繋がった夫婦ゆえか、直感で目の前の遺体がルーシーでない事を悟るスティール。

そして遠く離れた大統領邸宅に無言で読書にふける、スカーレット・バレンタイン大統領夫人。
彼女こそが、変装した本物のルーシー。
最愛の夫と遠く離れ、会う事も叶わない彼女は何を思うのか…?

レースも終盤、7th.STAGEが幕を開ける…



開かれるカタログ。その発注書に記入するのは…ジョニィでした。
ジャイロとジョニィ、キャンプしながらカードに興じています。

この長い大陸横断レース、あの程度の荷物でどうやって旅を続けているのか思ったらカタログで必要な日用品を購入していた様ですね。
まだ開拓途中のアメリカですが、この時代から既に通販などのシステムは出来ていた様です。

「文明だね」

とジョニィはつぶやきます。
現代では当たり前の様に行われている通信を用いた物品の販売。
ちょうどフロンティアもどんどん開拓され、資本主義社会の大量生産、大量消費の経済システムが構築されている現代への過渡期らしい光景です。
ジャイロもまたカタログを眺めます。

「おっ!!

そこで彼の目に止まったのは…。
クマのぬいぐるみ。レース開始時に紙や歯磨きを葉っぱで代用してでもぬいぐるみを荷物に加えたジャイロ。やっぱりそれが気になるのかよ!

チラリと見た先にはその例のぬいぐるみ。
右腕が取れて綿がはみ出しボロボロです。
それを見て、迷わずカタログに○をつけます。

ジャイロ、ぬいぐるみを何に使ったらそんなにボロボロになるんだよ!

それにしても、ジャイロのぬいぐるみはレースにまで持ち歩くものだからよほど大切なものだろうと思ったら大間違い。
てっきり思い出や約束の品かと思っていたら、何の事はないただの消耗品なのでした。
ダメになったら再び新しいものを買う。そういう存在だったんですね。
まあ…大の大人が使う(?)様なものではないんですが。

「ジャイロ見ろッ!!」

ジョニィの覗く双眼鏡に一人の人影が。その人物とは…

『ホット・パンツ』だッ!

久しぶりの登場となったホット・パンツでした。
よく考えてみたら大統領邸宅を襲撃したと言う事になり、もう既にお尋ね者となっているはずの
実質レースの表舞台から退場した様な存在です。
そんな人物がなぜこんな所を走っているのでしょうか?

「よし!追うぞッ!
 火消しして荷物をまとめろッ!
 あのくそ野郎から持ってかれた『遺体』を取り戻すんだッ!」


奪われた遺体を取り戻すべくホット・パンツを追うジャイロ。
ジョニィもまた、それに続きます。
そして、彼が落とした焼いた串焼き肉の破片が、道しるべの様に怪しく地面に転がり落ちる…。


場所は移り変わって町の中に。
ホット・パンツはある建物の中に入って行きます。
その建物を前に、ジャイロはつぶやきます。ホット・パンツの目的を叩きのめしてでもハッキリさせる事を…

「『遺体』が何者のものでヤツがそれを集めて何をしたいのかをな…」

そう、未だホット・パンツの目的は未だ不明。
敵ではないが、味方であるとも言いがたい。
わかっているのは、ネアポリス王国の人間であるらしいという事と、ヴァチカンの者で遺体を集めていると言う事。
謎を解き明かすために、二人は意を決して建物の中に飛び込みます。

そこにあったのは、大量のゴミの散らばる部屋と、そこに座るシスター一人…。

「この中に男が入って来たはずだッ!
 奥はどのくらい広いんだ!?」


声を荒げるジャイロ。突然の侵入者に、シスターは物怖じする事もなくジャイロを見やります。
その瞳にジョニィは何かを思う…。

シスターの口からこの場所は町のゴミ捨て場である事が語られます。
彼女自身も建物については何も知らない事を口にします。
ジャイロは不審の眼差しを向けます。
このゴミ捨て場が遺体の隠し場所であるかもしれないと言う事…
そして次に求める遺体の一部、胴体もここのどこかにあるのかもしれないとジョニィに無言で伝えます。
ジャイロはジョニィにシスターを見張る様に言うと、奥へと姿を消します。
直後、シスターを見つめるジョニィ…。

「ジャイロにはまだ言っていない。
 言う必要がないと思ったからか
 なぜ言わなかったのかはぼく自身にもまったくわからない

 君が『女性』だという事を…
 ホット・パンツ!」


ホット・パンツが女性だという事を知っているジョニィはいち早くシスターの正体に気づきます。
やっぱりホット・パンツの変装でしたか。ジョニィ、ジャイロには隠してたのかい。

ジョニィはホット・パンツに静かに詰め寄ります。遺体を集めている目的を話す事を。
しかし…

「氷の海峡で『両脚部』を手に入れたのなら
 決して離してはならない
 所持しているのは………ジョニィ
 あなたの方………!?」


彼女が口にしたのは遺体を手放してはいけないと言う意味のわからない言葉
その返答に憤ったジョニィはホット・パンツへとつかみかかります。
その瞬間にあらわになる彼女の素顔。その女性の姿にジョニィは何を思う…?

「君は修道女なのか?
 故郷では……普通の女性に戻ったりするのか?
 
………誰かを恋したりとかするのか?

えーっ??
ジョニィナンパしてるのォ?
ジャイロに隠し事をしていたばかりかジャイロがいないのをいい事にホット・パンツを口説こうとするとはふてえ野郎です。
ジャイロが見たら怒るぞ!

「ジャイロをここへ戻したら二人とも死ぬ
 だから向こうへ行かせた
 あたしの遺体は全て奪われてしまった」


ホット・パンツから驚愕の一言が。彼女は涙混じりで悲しみをこらえるかの様に続けます。
もう、すでに何者かの攻撃は始まっているという事なのでしょうか?

「決して離してはいけない
 
どうしようもなかった……あたしは捨ててしまった
 ああ

 神様……あたしは全部………
 
差し出してしまったわ………


何と、彼女の首筋から奇妙な子供の顔と手が、浮き上がっています。
その光景に思わず身を離すジョニィ。

「ジョニィ 絶対に捨ててはいけない
 あたしのスプレーさえ効かない…吹き出す事も出来ない
 
あたしが捨ててしまったから

捨ててしまったとはどういう事でしょうか?

あれほどまでに命を捨てる覚悟で集めてきた遺体を自ら手放してしまうとは、彼女に何があったのでしょうか。
ホット・パンツの体に食い込んだ奇妙な子供は体中に広がっていきます。

「お姉ちゃああ−−−−ん お姉ちゃああ−−−−ん」

大切な家族から離れてしまった子供の様に、奇妙な子供は悲しみの声を上げて泣いています。
一体この子供は何なのでしょうか?
次の瞬間、袋の口を広げたかの様にホット・パンツの体が大きく裂けます。

「ジョニィあたしはもう耐えられない
 教会に仕えても…神様に身を捧げてもダメだった…
 あたしが
捨ててしまったから…もう心が折れるわ…
 あたしは『聖なる遺体』を集める事が出来なかった…」


「『敵』かッ!
 『ホット・パンツ』ッ!すでに何者かに攻撃されていたのかーーッ」


ホット・パンツは既に敵の攻撃の術中に落ちていたのでした。
奇妙な子供とともに、ゴミ袋を丸めるようにホット・パンツの体が小さくくるまれていきます。


「『水』で清めて………ジョニィ
 もしあなたが捨てざるを得なくなったなら……
それを『清める』しかない

まるでゴミ袋に詰められたかの様に小さく丸く固められるホット・パンツ。
彼女はジョニィに何を伝えようとしているのでしょうか?

「ジャイロォォォオオーーーーーーーッ
 戻って来いッ!ジャイロ!ここには敵がいるッ!」


そのジョニィの声が聞こえたのか聞こえなかったのか…
ジャイロは足元のあるものに気付きます。
それは…右腕がない綿のはみ出した壊れたクマのぬいぐるみ。
そう、それはキャンプ中ジャイロが置いていったであろう彼の所有物でした。


「これは…」

そして、ジョニィもまた足元のあるものに気づきます。
それは、キャンプを去る前に落としていった、串に刺さった肉の破片…!
そう、
この建物のゴミの中には、彼らが捨てていった物が落ちているのです!

「『人ハ何カヲ捨テテ前ヘ進ム』
 
ソレトモ
 『拾ッテ帰ルカ』?」


いつの間にかジャイロの背後にいたのは、人とは思えない存在が発した奇妙な言葉。
まるでスタンドの像です。心なしか、遺体の目玉のスタンドの像に姿が似ている様な…
そして、目を疑うものがそこにはありました。

次の目的の遺体、『胴体部』。
しかも、ジョニィの持っている両脚部、ルーシーとDioが持っている目玉、まだ見ぬ頭部を除いた、
ほぼ全て揃っている遺体が、ジャイロの目の前に。
なぜか、ホット・パンツが未回収の大統領所有の右腕までもが。なぜこんな所に?

「『何だ?こいつは!?』
 『敵』!?
 その地面!!そこにあるのは……

 !!

 
『遺体』か!?そろっているッ!!

「はッ!」

次の瞬間、ジョニィの腕に食い込んでいく肉の破片。
そして、ジョニィの手に持つ壊れたぬいぐるみももた、ジャイロの腕へと食い込んでいきます。


この館は、捨てた物が集まってくる場所!?
そして、捨てた物達に襲われる…?
そして意味深な言葉を発した謎の存在。これは遺体を守る番人なのでしょうか?
ジョジョらしい奇妙な恐怖を匂わせ、次回へと続く!




さて、非常にジョジョらしい展開になりましたね。
まさかのホット・パンツ退場?しばらく奇妙な関係が続くかと思いきゃ…
そして、今回の敵は、恐らく遺体の番人の様ですね。
シュガー・マウンテンの様な、遺体を守る番人の試練なのでしょうか?
心なしか目玉のスタンドと像が似ているし…。

しかし気になったのはその番人らしき存在の話した言葉と、ホット・パンツの伝言。
命を捨ててまで、女性としての生活を捨ててまで手に入れた遺体を自ら手放してしまうとは一体何があったのでしょうか?
そしてさらに気付いたのは、今回の館は捨てたものが落ちている場所である事。
…という事は、あのホット・パンツの体に食い込んでいたあの子供は、
ホット・パンツが何らかの理由で捨てた家族か何かなのではないでしょうか?
そう言えば、今回さりげなく彼女は神に身を捧げた存在である様な事をつぶやいています。
ルーシーに「修道女の様に」とつぶやいていましたが、本当にそうだったんでしょうか。
そんな彼女が遺体を自ら手放してしまうと言う謎の行動…
つまりあの館にはそんなものさえも捨てさせてしまう何かがあるという事ですね。

ホット・パンツ…謎を残したまま退場しないでほしいですね。

そして、今回恐らく遺体の番人らしき存在。
彼の話した言葉は非常に哲学的です。

現代社会、大量に物を生産するとともに多くのものを廃棄しています。
それがゴミです。冒頭で簡単に者が購入できる様になった事をジョニィは「文明」と評しますが、
その背後には必ず捨てていかれるものがあると言うこと含んでいます。

そして、物とは別のもの…単なる消耗品とは違うもの。
捨てなくては未来へ進めないもの。それは形のないものであり、数多く存在します。
後悔、過去、迷い、思い出、しがらみ、自分を縛るもの…
数え切れないほど多く、多岐に渡り挙げたらキリがありません。
まさかホット・パンツが神に身を捧げ、遺体を集めるという目的のために自分の家族を捨てる様な行為をしていたとしたら…?
その負い目につけこまれた可能性も充分に考えられますね。

そして「拾って帰る」という言葉が意味しているのは何か?
過去に捨てたものに囚われ、歩みを止めてしまう事を示しているのでしょうか?

どうもホット・パンツを見る限りゴミの一部にされてしまう様に見えます。
自分の捨てたものがどこかに現れ、まるで怨嗟の念を持ったかの様に襲われ、ゴミにされる…
よく考えたらこれはものすごく恐ろしい現象ですよ。
捨てたものに囚われるなら、捨てたものと一緒にゴミになれという意味なのでしょうかこれは…?
それにしても本当にゴミとして捨てたものにジャイロとジョニィは襲われているから囚われるもくそもない気もします。
となると、単に捨てられたもの達の恨み…?

しかし矛盾したものも感じています。
以前の遺体の試練で「全てをあえて差し出したものが最後に全てを得る」という言葉があります。
今回は「決して捨ててはいけない」と言います。
この矛盾した言葉、一体どういう意味があるのでしょうか?

もう何もかもがちんぷんかんぷんで、そして次回が楽しみです。


#31 6度目のゴール

今回はスティール・ボール・ランのレースの部分が語られています。
今まで省かれていたレース内容ですね。

大陸横断レースと言えば聞き覚えのある名前ですがこの時代は自動車など存在しない時代。
馬も人間も生き物です。
彼らがしてきたレース中のケアや危険対策、休息の場所や方法などが語られていますね。
今までいつの間にかゴールしてたという感じだったので非常に貴重なエピソードだと思います。
レースだけなら1st.レースでも行われていますが、それ以降は数日間にわたって行われるサバイバルレース。
河もあれば砂漠もあり、雪原もあるまさに自然との戦い。

「とにかくこのレースは地形と天候を読み自分と馬の肉体と精神のエネルギーを温存しながら進む道だ
 温存しない者は負ける」


そう、今まであまり描写されてきませんでしたが彼ら選手の行程は非常に過酷な道だったのです。
それにしてもここまでの描写でジャイロとジョニィがどれだけ苦労してきたか、
そしてどれだけ苦難を共にしてきたか、、
イチャイチャしてきたかがよくわかります。(スイませェん)

SBRにスタンドが出てきたと聞いて、「えっ?あれって馬のレースの話じゃなかったの?」と言われた事もありましたし。
まあ…確かにレースはあります。
ですがその前に生存競争にも似た厳しいサバイバルがあるのも事実。
そして…

「ギリギリまで………
 こうして…
 とにかく…
 全ての何もかもが限界に達した時!」

「ようやくそのSTAGEの『ゴール』が見えてくる」


そう、ゴールが見えてくる。ゴールが見えてくるという事は…他の選手達との決戦の時がやってくるという事です。
まるで合図でもしたかの様に、同じタイミングでゴール前に集結していく選手達。
そして、今まで温存してきたエネルギーを最後に解き放つ決着の時です。

追ってくるのはポコロコ、ノリスケ・ヒガシカタ、バーバ・ヤーガ。
Dioを除き多くの優勝候補が脱落してしまった今、レースとしてのライバルは彼らの様ですね。
もちろんその筆頭は先頭に立つポコロコ…。

「ジャイロ!ポコロコだッ!!そのあとはヒガシカタ
 ポコロコが後方から来る………だがあいつはあまり問題じゃあない!
 一目でわかる…あの走行技術………騎手としては三流だ!」


呑気な事を言うジャイロ。確かに彼は騎手としてはプロには遠く及びません。
しかし、ただそれだけならここまで来れるはずも、トップ争いをできるはずもありません。

「そうか……ジョニィ?
 じゃあどういう理由で……あいつ……
 現在総合1位なんだ?」


そう、ポコロコは現時点でのトップ選手。決して油断など出来る相手ではないのです。
そして、彼に何としてもここで勝たなければジャイロの優勝の可能性は閉ざされてしまうのです。
ブリザードが後ろから吹きつけ、彼らの視界を閉ざす。

ポコロコに囁く『幻覚さん』(彼のスタンド)。
風はポコロコに味方する事を告げ、運はポコロコにあると彼を励まします。
ポコロコ、すっかり幻覚さんと話するようになりましたね。

「ここは絶対にどいつだろうと負けれねーからなレースの残りは3STAGEしかねえ!
 このSTAGEのポイントだけは…!!絶対にとらなきゃあいけねえんだからな!!」


ジャイロも気合は十分。ポコロコの幸運とジャイロの気合。どちらが勝つか?

視界を遮るブリザードが晴れた瞬間、ジャイロ達の目の前に現れたのは断層崖(クレバス)。
直進は出来ません。速度を落として迂回しては、勝ちはありません。
そこで彼らが取った行動は…!

「何発行くんだ!?
 ジョニィ!!
 オレは一発か!?それとも二発投げるかッ!」


「一発で十分ッ!
 速度は落とすなッ!
 黄金長方形!『爪(タスク)』!」


ジョニィがタスクを放ち、地面に穴が走る。それを追う様にジャイロは鉄球を投球。
鉄球に移った穴が鉄球を削り、一枚にむいたリンゴの皮の様に一本のワイヤーの様に伸びていく鉄球。

「な…なんだあ…ありゃあぁ……っ!!

ワイヤーと化した鉄球の上を綱渡りの様に渡っていくジャイロとジョニィ。
まさか…ッできるわけがないッ!!
速度を落とさずに馬に綱渡りさせる度胸と技術もそうだが…
馬二頭と人間二人分の体重を支え切るほどの強度があるのか!?

呆気に取られる読者とポコロコ&幻覚さんを脇に…
ブリザードの中を突っ切るジャイロとジョニィ。
ブリザードが晴れた先にあったのは、大歓声の中ゴールを通過する二人の姿でした。

「ジャイロ・ツェペリ!!ジャイロ・ツェペリ!!ジャイロ・ツェペリ!!ジャイロ・ツェペリ!!
 その後に続くのはジョニィ・ジョースターーーーッ!!
 ブリザードと氷の海峡を越えて来たのはジャイロ・ツェペリだッ!!
 一着でゴォォォォォォオーーーーーールッ!!


ジャイロの一着でゴールという目的はついに達成されました。
これで現在一着のポコロコにも何とか追いすがる事ができました。
遺体も手に入れ、レースのポイントも獲得、苦難続きのジャイロでしたが今回は希望が見えてきました…


しかし!!
遠く離れたブリザード吹き荒れる氷原に不穏の影が…
血まみれのブーツ。
息も絶え絶えで這いずりながら動く重症の男…こいつは…
倒したはずのマジェント・マジェント!!

「死に…たくねえ
 あ…あの野郎…
 ウェカピポ…
 許さねえ…ブッ殺す…
 裏切り…やがって…くそっ


 ルーシー・スティールだと…?聞いたからな!!


何と、マジェント・マジェントは生きていたのでした
ウェカピポがジャイロ達に協力する事も、
ルーシーがジャイロ達とつながっている事も彼に知られてしまいました

ウェカピポとルーシーが危ない!

最後の波乱の予感を残し、7th.STAGEへと続く!!

今回はレース描写であれだけ激しい戦いがあったからか、円満に終わったかと思いましたが…
そうは問屋が卸さなかった!!
さすが荒木先生です。普通に終わそうとは思わない!!
さらなる波乱と危機の予感を残し、次回に続く!!


#30 ウェカピポが来る!

敵の片割れマジェント・マジェントを倒したジャイロ。
しかし依然として圧倒的に不利な状況には代わりがなく、ウェカピポがジャイロ達の眼前に迫る…!

「絶対に必要なのは『黄金の回転』だ
 
自然が創り出すコピーではない『黄金長方形』ッ!!
 それが必要だッ!」

ジャイロ・ジョニィ両者の力の秘密である『自然物の黄金長方形』が封じられている状態です。
氷の世界でスケールになる動植物がなく、
黄金長方形になるように訓練されたというジャイロの手も負傷して代役を果たさなくなっています。
所々にイメージとして浮き出る欠損した黄金長方形。どうやってに入れるのか?

「ジョニィ援護だけしろ…オレは『狼』のところへ行く

ジャイロは黄金長方形のあるこの場で唯一の自然物…それを狼の体に見出しました
マジェントに撃たれた例の遺体を持っている狼ですね。
そこから自然物である黄金長方形のスケールが手に入る、そう踏みました。

「投げたぞォォォーーーーッ!」

ウェカピポが投げた鉄球はなぜか一発。
その一撃を防御すべくジャイロも投球する。

…しかし、ジャイロの鉄球はウェカピポの鉄球にかすりもせずウェカピポ本人に真っ直ぐ向かっていきます。
防御ではなく、故意にジャイロはウェカピポ本人を狙ったのでした。
黄金の回転ができない以上、ウェカピポの鉄球にパワー負けするのは目に見えている。
それならばあえてウェカピポ自身を攻撃する方を選んだという事でしょうか。
ジャイロは防御しない。…という事は…

「こ…この『鉄球』ぼくがひとりで止めるのか!!」

ジョニィが何としても止めなくてはジャイロがやられてしまいます。
タスクの爪弾を連射するジョニィ。

「ジョニィ何としてもはじき止めろォーーー!!
 やつの一球だけはッ!絶対にッ!!落としてくれッ!!」


あらゆる面で不利な状況にあるジャイロの唯一のアドバンテージ、ジョニィという仲間を頼りにしての作戦でした。
しかしウェカピポの鉄球は、それ自身を止めても小さな粒状の衛星弾が存在します。
残り5発。

「おおおおおおおおおおお!!!!」

死に物狂いで残りの爪弾を衛星弾に放つジョニィ。ついに鉄球と衛星弾が失速して的を外し、落ちていきます。

「やっ…やった、お…落とせる」

しかしジョニィはこれで10発全弾撃ちつくした状態です

「(だが次はどうする?『爪弾』はもう…)」

ジョニィの言葉の通りです。何とか一発しのいだというだけ。
ウェカピポの手元にはもう一発の球が残っており、投げた鉄球は使い手の手元にいずれ戻ります。
それに追い討ちをかけるように、落ちていった鉄球から残った2発の衛星弾がジャイロとジョニィを狙います。その一撃を受けるジョニィ。

ウェカピポに迫るジャイロの鉄球。
ウェカピポの胸に唸りを上げる鉄球がめり込んでいきます。
やったか?と思われたその瞬間、ジャイロはウェカピポの手のひらで回転する鉄球を目にします。
体中が絞られたかのようにねじれるウェカピポの体。
そして、ジャイロの鉄球が力を失い地面に転がります。

これは…5巻でジャイロがシュトロハイムの銃弾に対してやっていたものと同じです。
そう、ウェカピポもジャイロ同様に、回転で体表を硬質化して防御する技術があったのでした。

「ジャイロの言う通り『黄金の回転』じゃあなきゃダメだ…
 『長方形』がなくては…ヤツは倒せない…」


やはり黄金長方形のないこの場所でウェカピポを倒す事はできないのでしょうか?
…となればジャイロの取るべき行動は一つ。

最も用心すべきはその態度だ、何としても『長方形』を
 見つけようとするその姿勢!!」


ウェカピポにもそれは当然の発想でした
狼めがけて走るジャイロを狙うウェカピポ。

「ジャイロォォ二発目が来るぞォーーーーーーーッ!!」

ウェカピポの投げた鉄球を、鉄球で迎え撃つジャイロ。
しかし、ウェカピポには衛星弾があります。
その衛星弾は、ジャイロではなくなぜか真横へと飛んでいきました。
その先にあるのは…狼の体。氷が衛星弾で砕かれ、狼の体が水の中へと沈んでいきました。
衛星弾まで自由に操作できるのか!

ね…狙われた…先に『狼』を…!!狼が氷の下へ!」

「おまえが狼の遺体で『黄金長方形』を探そうとするのは必然!
 最後にそれをつぶして仕上げだ…
 これで長方形は全て潰した!学ぶものはない!」

徹底したウェカピポの戦術。ジャイロにとって最後の希望が断たれました。
呆然と見つめるジャイロの視線がそれをよく表現しています。

ウェカピポの手元に戻っていく2発の鉄球。ここで明らかになりましたが衛星弾も元に戻っています。
どういう仕掛けなんだ。
一方のジャイロはウェカピポの左側失調により左側の鉄球をキャッチし損ねました。

「『左側失調』…これでわたしは2投
 一手!
 わたしの方がこれで『上』へ行けたようだな」


もはや絶体絶命です。防御すら不可能です。ジョニィのタスクは弾切れ…

「(くっ…どっ…どこにもない…バカな!
  どこにも『黄金長方形』がッ…)」

オ…オレは今まで…
『正しい道』を進んでいれば必ず『光』が見えるはずだと信じて来た…

だが今にはどこにも!
…そんなバカな!どこにも見えないッ!

まだ何もかも途中だというのに…

『黄金長方形』がどこにもないッ…
ここで旅が終わってしまうのかッ!

オレはまだ何ひとつ決着をつけていないッ!


非常にまずい状況です。ジャイロが諦めかけています。
ジョニィがヘタれるのは何度もありましたが、常にジャイロは何らかの奥の手と打開策を隠し持っていました。
そのジャイロが完全に追い詰められている事を自覚している。
正真正銘、切り札はないという事です。

ジョニィの絶叫とともにウェカピポの鉄球がジャイロに迫る。
死を覚悟したであろうその瞬間、頭に浮かんだのは父・グレゴリオの言葉でした。

ジャイロ、この社会と人の心の中のあり様には限界点がある…
『死刑制度』『延命』それは矛盾した特異点なのだ
我々ツェペリ一族は社会のその考えに立ち入ってはならないそれが我々一族の役割…
ネットにはじかれたボールなのだ

思えばツェペリ一族は世襲の死刑執行人という命を奪う仕事をしています。
その反面で表向きは人の命を救う医者の仕事も行っています。
確かにこれは大きな矛盾です。
ジャイロは必死に救える命を救おうとしますが、その一方で罪人の命を奪わなくてはいけない役目を背負わされています。
これは社会では奪うべき命と救うべき命が両方存在するという事なのでしょうか。
少なくとも、グレゴリオは国家と言う社会保全機能の判断に任せ、
処刑すべき人間の判断には不可侵の姿勢をとってきました。
テニスのボールがどちらに落ちるかという例えは命に鈍感になっている表現に聞こえなくもないですが

だがツェペリ一族は『奇跡』の存在も信じている
『奇跡』が起こる事を祈ろう

ボールがネットの向こう側に落ちる事を…


とは言っても、グレゴリオはやはり人間であって、できる限り多くの命が救われる事を願っているようです。

「雪だ…こんな時に雪が降ってる…」

『奇跡が起こる事を祈ろう』という言葉に突き動かされたのか、突然振り出した雪を目の前に、
ジャイロはウェカピポの鉄球へと投球します。
激突しうなりをあげる鉄球。黄金の回転でない鉄球が負けるのは既に実証済み。
しかしその瞬間、ジャイロの鉄球はウェカピポの鉄球を砕き、ふたつ目の鉄球へと激突します。

「わ…割れた?ウェカピポの鉄球がッ!ジャイロのが残っている…ッ!」

その瞬間、ジョニィはジャイロとウェカピポのいる場所に雪が降っているのを目の当たりにします。
ウェカピポが狼の氷に衛星弾で砕いたので、水しぶきが舞って寒さゆえに瞬間的に雪になったのでした。

「信じられない…
 『雪の結晶』が作られて降って来てるぞ!
 結晶は『長方形』……!!

 
『黄金長方形だ』ッ!!
 ジャイロの目の前に自然が作った黄金長方形が降ってくるッ!!」


突然起こった奇跡のからくり…
それは目の前に振ってきた雪の結晶から黄金長方形を見つけ出し、黄金の回転を成功させていたのでした。
そのジャイロの全ての力を発揮した鉄球はウェカピポのふたつ目の鉄球をも砕き、ウェカピポの脇腹を貫通していきます。

脇腹にポッカリと風穴を空け、右手の小指を失ったまま立ち尽くすウェカピポ。
もはや勝敗は明らかです。
…奇跡は起きました。

11人の男から狼が遺体だという事を知った故にウェカピポ達は狼を先に始末しました。
そしてその狼から黄金長方形のスケールをとられまいとウェカピポは狼を水の中に沈めました。
その氷を砕いたゆえに、最後にジャイロに黄金長方形のスケールを与えてしまった。
偶然がいくつも重なった故の、勝因でした。

「雪が降ったのは偶然だ…まさに偶然
 オレは全ての行動を断たれていた…勝っていたのはあんたの方だ」


「全ては『結果』だ
 ジャイロ・ツェペリ君は選ばれたんだ…『何かの力』があんたの方を選んだ…
 この旅をこの先前に進むのはあんたの方だと…」

 
雪が降ったのはなるべくしてなった奇跡なんだよ
 偶然じゃあない
 『選ばれた』……『奇跡』だよジャイロ・ツェペリ」


まさに勝因は偶然が重なったゆえの偶然でした。
ジャイロも諦めかけていました。しかし、運命は彼を見放してはいなかった。
奇跡は起きたのです。

刃物で自決しようとするウェカピポ。しかしジャイロはそれを鉄球で阻みます。
とどめを刺す事を要求するウェカピポ。命令に失敗した以上、帰るべき場所はない。
妹という家族を失った以上、命令を成功させなければ生きては帰らないつもりだったのでしょうから。

「あんた、帰るべき場所がないとでも言うつもりか?」

ウェカピポの発言の意味を察したのか、ジャイロは告げます。
ウェカピポの妹は生きている事を。

グレゴリオは、彼女は盲目が『故に生かされている』とジャイロに告げます。
もし目が見えていたら、彼女の元夫の父親に命を奪われていた、と。
そう、グレゴリオが彼女の失明を治療しなかったのは強大な権力の制裁を恐れての事ではなく、
彼女のためを考えての事でした。
もし、ジャイロの手術が成功していたら彼女の命はなかった。そう告げます。

ウェカピポの妹、やっぱり生きてたんですね。ジャイロは偶然のアクシデントから手術を失敗しました。
しかし、それが幸いして彼女は生きながらえています。
これもまた、偶然でした。偶然のアクシデントが生んだ奇跡とでも言うべきなのでしょうか。

妹が生きているという言葉に耳を疑うウェカピポ。

自分達の馬が戻ってきたことに気付くジョニィ。そう、レースは依然続行中なのです。
この戦闘によるタイムロスは致命的。しかも、原住民の秘密のルートは見つからないまま…
と、思いきゃ狼が撃たれた場所から丸太が顔を出しました。
そう、これが湖の上でも馬で渡れる原住民のルート
またまた偶然ながら発見できました。これでレースの巻き返しも可能です。

「『奇跡』か…
 『奇跡』を信じる… …か」


ウェカピポはうなだれたままつぶやきます。
どんな経緯とはいえ、最愛の妹がどんな形であれ生きている事を知った。
彼にとって、これもまた奇跡以外の何者でもありません。

ジャイロはウェカピポにルーシーのことを守ってくれないかと頼みます。
忘れてはいなかったんですね。ウェカピポは返答こそしていませんが、
命令に失敗し妹がジャイロの父にかくまわれている以上、大統領につく理由は失っています。
これは心強い味方となるか?

死んだと思っていた妹が生きていた奇跡。
その事実に落涙するウェカピポを背後に、遺体両脚部を手にしたジャイロとジョニィの旅は続く。


偶然と奇跡。そう言うしかない展開の巻き返しの回でした。
この偶然をご都合展開、漫画だからと言うのは簡単です。
しかし、この世の中にはどうにも偶然という言葉では片付けられないものがあるのも事実です。
事実、偶然で起きた出来事が人生を大きく変えてしまう事も決して少なくない訳で…
そう思うと、やはり運命というのは存在するのではないか?
荒木先生もコミックスコメントそう述べていましたね。
でもドラゴンズ・ドリームや一巡後の世界の起こるべき未来はあまりにも露骨な気がしますが。
昔見た映画並の意地の悪い運命の仕業という感じです。

そして奇跡。漫画では当たり前の様に起こる奇跡ですが、
それがご都合的展開と見られるかは描き手の技量しだいです。
できすぎだと思えない辺りはやはり荒木先生ですね。
奇跡にすがるよりも自分の力を当てにしろ、とはよく聞きますが、
絶体絶命の時にこそ味方してくれる力というのはあるものですね。うん何か吉良みたいだ。

個人的な印象に残るのはウェカピポ。彼の性格から考えれば、ジャイロに協力してくれるとは思います。
大統領の配下になったのも国を追われたからという理由でしかなさそうですからね。
何よりも印象的なのはラストのウェカピポの涙。
既に死んだものと思っており、帰るべき故郷も守るべきものもなく、
生きる希望も失った彼にとって彼女が生きていたというのはまさに奇跡以外の何者でもなかったと思います。
失ったものが帰ってくる奇跡。そんなの、あったらこれ以上なく嬉しい事はありませんよね…
とか言うとジャッジメントにつけ込まれそうですか。

強敵ウェカピポを倒し、遺体を手に入れたジャイロとジョニィ。
残るは頭部と胴体部。レースも残りあとわずか。
次回へと続きます…


#29 ウェカピポのやり方

診療所に灯るマッチの火。それを見つめる女性の瞳は何の反応もしない。
自らのミスに憤るジャイロ。手術は失敗した。
ウェカピポの妹の視力は完全に失われてしまった。
自らの責任と無力さに煩悶するジャイロを、父グレゴリオを静かに見つめていた…。

「まさかッ!『黄金の回転』が失敗ッ!

その黄金の回転の失敗。それを再現した様にウェカピポの鉄球はジャイロの鉄球を叩き落した。

やはりジャイロの手術は失敗していたようでした。
その黄金の回転の失敗がその兄であるウェカピポの前で再現されるとは何とも皮肉です。

ウェカピポの鉄球から放たれた無数の衛星が二人を襲う。
ジョニィがタスクで相殺するも、その影でもうひとりの敵、マジェントが動き出しました。
そして突然例の狼を射殺。まず遺体を確保しようと言う事でしょうか。
ジョニィの撃ち漏らしの衛星からジョニィを守るためにジャイロが左手を盾に。手に風穴が空きます

そして左半身失調によって消え始める鉄球。
背後から忍び寄るマジェント。

「悪い知らせだ…『爪弾』を10発撃ちつくした。再生するのに少なくとも十数秒…」

さらにタスクを使い切ってしまったジョニィ。ジャイロの目もまた、焦りに染まっていきます。
そう、その視線の先にあるのは…自分の風穴の空いた手のひら。
そこに黄金長方形のスケールは既になく、景色にも黄金長方形のスケールはありません。

「ウェカピポ
 『ひとつひとつ』…敵の利点を封じ込める…それが王国王族護衛官の警護と戦闘時のやり方


 『黄金長方形』そのスケールを『ひとつひとつ』オレからもぎ取っていくために
 この生命のない世界−−−ー『氷の海峡』を攻撃地点として選んだ!」


全てはウェカピポの計画通りでした。

「そしてヤツらに衛星の衝撃波は伝わってる…『左側失調』は開始するッ!

「ジャイロ『左側」が消えていくぞォーーーーッ

視界から消えていくマジェント。ジャイロが左手に拾い上げた鉄球すら消えてしまいました。
マジェントは爪弾を使い切ったジョニィを後回しにし、ジャイロに銃口を向けます。
ジャイロは氷上のキズ跡の軌跡を利用してマジェントの位置を予測しようとします。
銃弾が放たれる直前に鉄球が放たれる…も肩にかすめた程度。
反撃の銃弾がジャイロの腹部に命中します。
ジョニィは地面に落ちた鉄球を手探りで探そうとするも、左側失調のため手探りですら認識できない。

それにしてもいつも思いますが、驚いたりパニックの役はいつもジョニィだなあ…
それをジャイロに諭してジャイロが起死回生のプランを温めていたというのがすっかり定着パターンに。
と言う事は…

「だが安心しろ…ジョニィ、左側の敵の事ならオレらの勝ちだ
 『第3の鉄球』が今手に入った


直後、自分の被弾した腹部から銃弾を抜き出すジャイロの手が…しかし…

「おいマジェント!謙虚にふるまえッ!おまえ用心してるんだろうな!?
 おそらくワザと撃たせた。
 今の『弾丸』!『鉄球がわり』に撃ち返されるぞ」


どこまでも抜け目ないウェカピポ。
銃弾を撃つよりも早くジャイロの銃弾の投擲が炸裂するも、直前でマジェントのスタンドに阻まれる。
銃弾は攻撃をそらされ、空高く飛んでいきました。

「ガ…ガードされた」

目の前には地面に落ちた鉄球と、銃を構えるマジェント…
鉄球を拾おうとジャイロは考えているのだろうが、マジェントが当然それを見過ごすはずもありません。
ジョニィのタスクも装填中…絶体絶命です。
ジャイロはマジェントが撃ち殺した狼が遺体なのかと問いかけるが、ウェカピポは早くしとめる様に促します。

ジャイロに向けて発砲しようとするマジェント。
その瞬間、脳天から真一文字に彼の体を貫通する一撃が…。
それは彼のスタンドが弾き飛ばした鉄球代わりの銃弾でした。

「おまえさんの防御のスタンド…いま少しの時間解除しないでかぶってりゃあ良かったのにな…
 空へ上がった弾丸が落ちてくるまではな


防御が鉄壁ならば、防御を解除した瞬間を狙えばいいというジャイロの計算でした。
頭から血を噴き出し倒れるマジェント。
前には無言で接近するウェカピポ。一人倒したものの、窮地には変わりがない。

「ジョニィまた来るぞッ!『爪弾』は指に再生したかッ!
 すぐに撃てるようにしろッ!!」


依然ジャイロは危機感と警戒態勢を微塵も解いていません。
数の上では有利になったものの、鉄球の性能は明らかにウェカピポの方が上、
おまけに黄金長方形のスケールが封じられているために本来の能力も発揮できない状況です。
窮地は依然変わらず。強敵ウェカピポにどう立ち向かうのか?
次回へ続く!


…今回はサブタイトル通りまさしく「ウェカピポのやり方」という展開でした。
ひとつひとつ周到に相手のアドバンテージを潰して常に自分に有利な状況に追い込んでいく…実に計算高い相手です。
常にジャイロの手を予測してマジェントに注意を促すなど、洞察力も只者ではありません。
この状況をどう打破するかがこの回の見所な訳ですが、状況はさらに悪化してますね。
マジェントは何とか倒せたものの、どう見てもウェカピポの方が鉄球の性能と威力で圧倒的に上回っています。
どうやってこの状況で倒すんでしょうね?

さて、マジェントの鉄壁のスタンドの防御ですが、その攻略法は防御を解除した瞬間に攻撃するというものでした。
確かに単純ですが、最も有効な方法だったのかもしれません。
どうやら今回を見る限り、防御中は攻撃や行動ができない仕組みのようですしね。
直前で遺体を持っている狼の話をするなど、弾丸が落ちてくるまでの時間稼ぎだったようですね。ジャイロもまた周到です。

しかし気になるのが、マジェントのスタンドの防御の仕組み。
前回を見る限りだと全て地面に流してしまうと思ったんですけどね。
例のシーンでも前回と同じ地面に手をついている防御体勢でしたし。なぜ上に飛んでいったのでしょうか。
明らかにジャイロは上に飛んだ後、戻って落ちてくる(ターンする?)様に仕組んでますよね?
ただの落下エネルギーではあんな威力にはなりそうにないですし。
…となると、マジェントのスタンドは威力が劣るものは威力やエネルギーを吸収して地面に流して、
威力が強いものは軌道を変えてそらしてしまうという解釈でいいんでしょうか?
角度や命中部位も関係あるのかもしれませんけど。

それにしても、以前サンドマン戦の講釈で石ころをかわりに使った時は
「ごつごつした『石くれ』だから回転が全く不完全だ…」とかぼやいていたので、
球形でない銃弾では失敗しないのかとか思ったりもしたんですけどね。
ある程度丸みがあって回転もできる銃弾だからあれだけの威力があったっていう解釈でいいいのでしょうか。

何にしてもウェカピポ戦、楽しみにしています。
彼の妹との因縁がどうなるのかも含めて。


#28 氷の世界

ジャイロの脳裏をある思い出がよぎる。
診療所に運び込まれた女性。それは、あの死んだと言っていたウェカピポの妹だった。
ジャイロは、父がしなかった目の治療をする事を決意する。
しかし、その時に驚くべき不測のアクシデントが…

ジャイロは彼女を救えなかったのだろうか?

場面は移り変わり、現在。
突然、ジャイロとジョニィの左半身がゴッソリ抉り取られたように消えた。

これは『左半身失調』ッ!
 今やつの『鉄球』をまともにくらっていたら死んでいたが…『鉄球』の衝撃波でもこうなる!!

幻覚ではないか?と思ってはいましたが、鉄球が起こす衝撃波による影響だそうです。

「ツェペリ一族のとは違う…!王族護衛の戦闘のための鉄球の能力なんだッ!
 『WRECKING・BALL』『砕けゆく鉄球』と−−−−−…名付けられているッ!


やはり戦闘と処刑・医療のための技術の差が出ました。
しかしジャイロ、ウェカピポの能力を知っていたようで意外。
しばらく時間があれば左半身失調の麻痺も解けるとジョニィに告げますが、一つの問題が…!

「それよりも問題はソリに乗って『左側』に回り込んだもうひとりの敵だッ!
 今!オレらは『左側』のヤツを見る事ができないッ!!

 もうひとりのヤツがここへ近づいて来てるはずだッ!
 それがオレの国の『護衛官が使う戦闘方法』だッ!!」

なんとそこまで知っていたジャイロの王族護衛官コンビネーション。
左側が見えないジョニィに、右側から一回転して左側を見ろとジャイロが助言。
そこで見たのは、ジャイロの視界の死角からショットガンを構えるマジェント・マジェント。

ショットガンと同時に放たれたジョニィのタスクが、マジェントを直撃されるかと思ったその瞬間、
マジェントの背後からバッタの様な頭部をした何かが彼の体を覆った

マジェントもスタンド使いでした!久々に像が出てきたスタンドですが、ライダーみたいでイカスな。

当たったタスクは全弾マジェントのスタンドの体表を伝わり、地面へと流されてしまいました
ジャイロの鉄球もまた、回転の力が地面に流されてしまいました。
ホワイトアルバムの様な身にまとう防御タイプのスタンドの様ですが、
違いは衝撃に耐えているのではなく攻撃を自分の外へと流してしまっているという点。
あった様でなかった防御法ですよ、これは。
…いや、ストレイツォやサンタナで少しだけあったか。

ジョニィ、弾切れです。ハーブで爪が生えるまで数十秒間攻撃手段を失いました。
何か黄金の回転ver.のタスク、初登場時ほどの威力がなくなってきた上に弾数制限がついて、なんか強い気がなくなってきましたね…。
ウェカピポが遺体を持っていない自分たちを攻撃した事をいぶかしがるジョニィに、ジャイロはウェカピポが遺体のありかを自分で突き止めたのではないか?と推測。
11人の男達の生き残りは、ジョニィが遺体を手渡した時の地図を盗み見ていた事が判明しました。
その地図には、狼の様な、犬の様な動物。
「遺体は移動しているかもしれない」との言葉を思い出すウェカピポの視線の先には…
ジョニィについて来ている群れからはぐれた子供の狼。

まさか!?
ウェカピポも子オオカミが遺体を持っているのではないか?と確信を抱きました。

一方なぜか早くリロードが完了したジョニィですが、回転がうまく成功しなかった事を告げます。

「黄金の回転の話をしているんだよ。
 さっき性格に回せば一瞬早くあいつに命中したかもしれない…
 でも正確に回せなかったんだ君はどうしている?
 この場所でどうやって回せばいい?


そう、ジョニィはサンドマン戦で判明した様に、自然物から黄金長方形をスケールに黄金の回転を行っています。
それは教え手であるジャイロも同じです。
その原因は、黄金長方形のスケールになる自然物がない氷原であるから…。

そう、威力がない様に感じたのはジョニィの黄金の回転が不完全だったからの様でした。
その証拠の様に、通常のタスク同様爪が普段より早く生えてきている。
威力がなくなったのではなく、強化版に失敗して威力が出なかったのですね。
うっかりしてました。

有無を言わさないウェカピポの鉄球が再び放たれた。しかも2発同時。
鉄球で応戦するジャイロですが、拮抗する事もなくたやすく下へと叩き落されました
空中でうなりを上げる様に回転を続けるウェカピポの鉄球。

「ツェペリ一族の求めるもの!『黄金長方形』から得られる…無限の回転パワーは…
 『生命』と『自然』への深い洞察から生まれる…
 彼らの鉄球に『敬意』を払うならな…

 だがここは『氷の世界』
 その『黄金のスケール』がどこにある?

前回、『彼らの鉄球に敬意を払え。そうすればわれらに敗北はない…』と言ったのはこういう訳でした。
氷が割れれば極寒の海に沈む氷原で仕掛けてきた理由は、これだった訳ですね。
エネルギーの元である黄金長方形封じ。
ウェカピポの戦闘用鉄球技術。
そして、マジェントの鉄壁の防御。
最大の武器を封じられたこの状況で、二人のコンビネーションにどう対抗するのか?次回に続く!

前回からの色々な謎が明らかになりました。
ウェカピポの鉄球の衝撃波による左視界の麻痺。
襲ってきたのは遺体の目星がついたから。
氷原で仕掛けてきたのは黄金長方形のスケールになる自然物がないから。
…こんな訳でしたね。
手の内が知れている相手と言うだけあって、その弱点を突いた戦い方をしてきます。
なるほど緊迫感のある戦いでした。

しかし気になるのは冒頭の回想シーン。
なんとジャイロがウェカピポの妹の治療に当たっていたのでした。
そして、その様子から見るに…治療には失敗した様な予感?
妹が死んだ原因がこれだとしたら…ますます因縁が深まりそうですね。


#27 鉄球vs鉄球

氷点下35度という氷の世界。そこに妙な二人組はいました。

その片方の男、ウェカピポの回想から物語が始まります。
彼、ウェカピポは、とある国の王族護衛官をしていました。
ウェカピポは妹の幸福を望み、裕福な財務官僚の息子に妹を嫁がせました。
しかし、それが悲劇の始まりであると知らずに…。

彼の妹は、夫に日常的に暴力を振るわれ、それが原因で左目の視力も失っていました。
ウェカピポは妹のために教会と法王庁に婚姻無効の許可を取り付けました。
しかし、その事が妹の夫の逆鱗に触れ、決闘となる…。

「さっそく始めるか。もたもたする事もない…一瞬でカタをつけよう」
「ああ…武器は『剣』なのか?」

その瞬間、剣を投げ捨てた男の口から驚きの言葉が。

「当然!『鉄球』だッ!」

えっ!?
今回最大の衝撃の場面!?

「祖先から受け継ぐ『鉄球』ッ!それが流儀ィィッッ!!」

意外ッ!それは鉄球!!
何と、男、そしてウェカピポもジャイロと同じ鉄球の使い手だったのでした!
鉄球はツェペリ一族だけのものではなく、使える人間が他にもいる事が判明しました。
しかも、結構多そうですね。

激突する互いの鉄球。ウェカピポの鉄球が競り勝ち、男の頭を砕き貫きます。
勝者は、ウェカピポでした。

「確かに…見事!『決闘』は見届けた…
 しかしウェピカポ…そなたは最初から終わっていた…どっちみち終わっていたのだ」


直後、決闘の見届け人が放った鉄球がウェカピポに直撃する。
投げたのは、あのジャイロの父でした

たとえ決闘に勝ったとしても、国家にとって極めて高い地位にいる人間の息子を殺害してしまった彼は権力により消される運命にある。
ならば彼を死んだ事にしてやるから国から出て行けというのが、彼の主張でした。

ウェカピポは最後まで自分に非はない事を主張し、再度の攻撃で意識を失った。

そして遠いアメリカへと渡り、国への市民権と永住権を条件に、大統領の配下となった。
…それが彼の経歴でした。

驚いたのは、鉄球の技術を持っていたのはツェペリ一族だけではなかったという事。
王族の護衛という戦闘能力の求められる地位にある彼が身に付けていたのは不思議な事ではないかもしれません。

…しかし彼の妹の夫までもが鉄球を扱えたのが不思議です。
よりによってあんな最低の暴力男に使えるのが何と言うか…
財務官僚とか言ってましたけど…ジャイロの国では由緒正しい貴族の伝統技術だったりするんでしょうか。

…そう言えば『ネアポリス王国』という名前が出てきたのはこれが初めてでしょうか?
イタリアとは思ってましたが、第5部のあのネアポリスなんですね。

彼らの名前はウェカピポ、そしてマジェント・マジェント。
SOUL’d OUTが元ネタですね。
彼ら二人が、今回の敵のようです。
妙に気だるそうながらテンションの高いマジェント。
それとは逆にそっけないウェカピポ。チームワーク大丈夫なんでしょうか?
どうやら彼、ウェカピポにはツェペリ一族以上の鉄球の技術がある様です。

回想シーンからわかる通り、彼は非常に家族思いで責任感の強い人間である事が伺えます。
妹の夫も最低な男でしたし、(いいのかよ、「お前の妹は殴りながらヤリまくるのがいい女だったんだよ」って…)
命をかけた正当な勝負で勝った彼を、権力で問答無用に踏みにじった怒りと悲しみは計り知れないものがあるでしょう。
彼の戦いにかける決意が並大抵のものではない事をうかがわせています。。
おまけに恨みのあるグレゴリオの息子であるジャイロが相手となるとさらに…。

しかしグレゴリオ、以前の死刑判決異議を申し立てたジャイロへの態度といい、
仕事と国家に忠実でありすぎる故にろくには思われない発言ばかりしていますね。

舞台は移り変わってジャイロとジョニィ。
薄い氷を渡ろうと思案中です。
ここで明らかになる現在のレース順位。

いつの間にかトップに躍り出ていたポコロコ。
実質レースの表舞台から降りたホット・パンツがそれに続きます。

後は、3位ジョニィ、4位Dio、5位ノリスケ・ヒガシカタ、
現在ジャイロが6位となっています。トップのポコロコとは100点以上差がつけられています。
大丈夫なんでしょうか。
しかしポコロコ…ここで登場、しかもトップに出てくるのは危ない様な…今までのジンクスがありますから。
特に…ドット・ハーンの様な…

遺体は現在の氷の下にあるのかもしれないと言うジョニィ。
しかしここでポコロコに1位になられたら自分の目的であるレースの優勝、
そして少年の恩赦という目的の達成は不可能に近くなる。
葛藤してますねジャイロ。
遺体とレースの両立だけでも大変なのに、よくトップ集団順位を維持できてますね。
今回、ここで戦闘してたら間違いなくポコロコに負けると思いますが。

ジャイロは氷を目の前にし、『原住民のルート』があるかもしれない、と推測を立てます。
氷が厚く馬でも渡れるルート。そのルートを行く決心をします。
そこで現れたのが…ウェカピポとマジェント。
ジャイロも顔に見覚えがある様ですね。

ついにジャイロめがけて鉄球発射!
すかさずジャイロは手持ちの鉄球で応戦し、激突。
しかし、このパターンは回想シーンの決闘と同じ状況…と言う事は…!

「ジョニィ伏せろォォォーッ!!
 『衛星』が次に襲ってくるぞォーッ!!」


激突する鉄球から放たれた小さな鉄球の粒。
これはウェカピポの鉄球についていたイボの様なものでしょうか。

そして突然、体半分が空間ごとごっそり削られたように消えてしまうジョニィとジャイロ
攻撃を食らったわけではないはずなのにこれはどういう事でしょうか?
一応会話はできているので命に別状はない様ですが…。

「ツェペリ一族…あの一族の『鉄球』の長所…は…
 『黄金長方形による力(パワー)…我らはその上を行く!

ついに始まった鉄球と鉄球の戦い。
しかもウェカピポにはジャイロの鉄球の謎を知っており、
さらにそれ以上の技術を持っているという。
実に波乱の状態で、次回に続きます。

さて、気になるのはウェカピポの経歴ですね。王族護衛官という事でした。
そしてジャイロは処刑と言う儀式のためのもの。
その応用として表向きの仕事である医療にも用いています。

戦闘用の技術と、非戦闘用の技術。
これがどう彼らの戦いの差に出るのか、気になるところです。

また、鉄球の使い手はジャイロの祖国には決して一人ではなく、一族ごとに独自の技術がありそうです。
もしかしたら少数ながらも結構使い手はいそうですね。
実際回想シーンでウェカピポは鉄球の使い手を倒していますし、対鉄球の技術もあるのかもしれません。

そしていきなり体の半分が消えた状態。
攻撃がクリーンヒットした訳ではないので回転催眠による幻覚辺りだと思っているんですがどうでしょうか。
確か6部のリキエル戦、ロッズを操って飛蚊症にしたシーンがありましたからね。
マジェントのスタンド能力かもしれませんが。

鉄球対鉄球、そしてタッグ戦、楽しみな点が多いですね。
ジャイロは直接的な面識はなくてもやはり顔見知りではある様です。
おまけにウェカピポはジャイロの父を恨んでいるはずです。
因縁だらけのこの戦い、どうなるんでしょうか。

…それにしても、マイク・Oの話では遺体を手に入れるまでは泳がせておく、というはずだったんですが。
ジョニィもその事を不思議に思っていました。
命令が行き違いになっているのか、ホット・パンツに遺体を奪われたのがきっかけなのか…。

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