SBR感想

このページはウルトラジャンプに連載中のスティール・ボール・ランについての感想を書くページです。
基本的にネタバレなので未読の方はご注意下さい。

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#13〜26 #27〜32


#35 追憶の館C

敵スタンド、シビル・ウォーの術中に落ちたジョニィ。
敵スタンド使いの犯した1つの町の住民全てを犠牲にした罪。
おびただしい数のその亡霊達が、罪をなすりつけられたジョニィへと群がる。
無数の亡霊達はジョニィへと怨嗟の矛先を向け、ジョニィの手足は悲鳴を上げる。
そして、不気味な音と共に、ジョニィの手足は引きちぎられてしまった。
体内の遺体と共に…。

「……ジョニィ!!」

動けぬままその凄惨な光景を見つめるジョニィ。
その惨劇を前に、遺体の両脚部をつかみ上げる敵スタンド使い。

「『両脚部』がそろった!!ついに…
 このわたしが!」

聖人の両脚部を手にする敵スタンド使い、アクセル・RO。
遺体もジョニィの命も、みんな奪われてしまったのだろうか?

…のっけからスプラッター展開ですね。
以前ジャイロがサンドマンの攻撃で手足が切断された事もありましたがまさにホラー展開。
そう言えばジャイロが前回ラストで自分に向かってタスクを放ちましたがそこはどうなったのでしょうか。
時間の巻き戻しでも発生したのでしょうか?


#34 追憶の館B

敵スタンドの弱点である『清める水』を手に入れたジョニィ。
それを手に、ジョニィは敵スタンド使いの待つ館の中へと入っていく。
窮地に陥っているジャイロを助けるために。
自らの過去を弄んだ敵と、自らの忌まわしき記憶を打ち破るために。

目の前にいるのは彼のトラウマの象徴である白いネズミのダニー。
彼に向けたタスクの照準に躊躇いを持つジョニィの背後に謎の声が…

「心が迷ったなら…ジョニィ・ジョースター撃つのはやめなさい
 よいな…心が迷ったらだ…撃つのはやめなさい
 『新しい道』への扉が開かれるだろう…」

その男性は全身を傷だらけにして、茨の冠をかぶっていた。
ブラックモアの時以来登場していなかった「遺体の聖人」ですね。
ここまでわかりやすければ有名すぎて誰でもわかるんですがあえて皆黙っています。

一方、敵スタンドの攻撃で動けなくなっているジャイロ。

「本番はここからだ我がスタンド『シビル・ウォー』の攻撃はこれより完成される」

彼のスタンド、シビル・ウォーというそうですね。
しかし、ジョニィにとって最大の負い目であるニコラス・ジョースターの幻影を使った今、それ以上にジョニィを精神的に追い詰める手段があるのでしょうか?
それとも何かまだ隠された奥の手が?

ジャイロの元に駆けつけるジョニィ。ジャイロは動けない状態ながらも、ジョニィに「本体を狙え」と告げます。
しかし眼前にはこれ見よがしに跳ね回る白ネズミの姿が。
本体を倒す前に白ネズミを倒さなくてはならないと決意するジョニィ。

その瞬間、ふと彼の足元にある何かに気付く…
トロフィー、本、定規…定規には「JOJO」と名前が書いてますね。という事は…。

「な…何だ?全部だッ!ここにあるゴミは全部!!
 ぼくが今まで捨てたものだッ!!」

やはりジャイロ同様、自分の嫌な思い出の捨ててきた物たちが目の前に現れました。
その驚いた瞬間を狙ったかの様に飛び出す白ネズミ。
さらに畳み掛けるようにジョニィの捨てた物たちが体にへばりついてきますが、すかさず水で洗い流します。
元々既出の攻撃。それへの対策である水が存在する以上、この程度の攻撃はジョニィにとって大した効果はありません。
タンスの中に逃げ込む白ネズミを、ついにタスクの一撃が貫きます。

「や…やったぞッ!
 命中したッ!消えていくッ!」

タンスのガラスが割れ、ジョニィの足へと落ちていく。そう、ガラスです。ジョニィにとって割ったガラスと言えば…

「神は…連れて行く子供を間違えた…
 なぜニコラスの方が…あいつが落馬なんかするはずがなかった…」

出ました。ダメ親父です。清めの水の入った水筒を遮るかの様に持つ手を握り、水を使わせません。
途端に窮地に。そして、さらにジョニィの動揺も増して行きます。

「神が一人連れて行かれるならお前の方が良かった!
 ニコラスはお前のせいで死んだのだ」

自慢の息子を奪ったという憎しみ。出来損ないのお前が残ったという憤慨を呪詛の様に浴びせるジョニィ父。
もしかしたら父は自分の事をそう思っていたのではないか?というジョニィの疑惑や恐怖から生まれたものなのでしょうか?
それてもジョニィを追い詰めるために敵スタンドが利用して脚色しているだけなのでしょうか?
いずれにせよ、ジョニィにとって前回のニコラス以上のトラウマ。
兄ニコラスは死人ゆえに何も語りません。たとえ怨嗟の声をかけられたとしてもそれは疑念に過ぎない幻覚。
しかし父は違います。今もなおケンタッキーで生きています。
実際に勘当前に怨嗟の声を浴びせられ、度々死んだ兄と比較され評価されなかったという過去のある父です。
死んだ人間より、生きた人間から受けた一言が人にとって最大のトラウマになりうるという事なのでしょうか。

「(く…くそッ!う…撃ってやるッ!
  これはスタンド攻撃!!この幻覚に触られたら終わり!!
  『撃てる』!こいつを『爪弾』で消してやるッ!)」

自分に言い聞かせる様にタスクの照準を向けるジョニィ。しかしその目は涙で溢れ、手も震えています。

「心が迷ったなら撃つのはやめなさい。
 成長するのだ…再び『新しい道』への扉が開かれるだろう」

その瞬間、再び謎の声がジョニィに囁きます。背後にいたのはあの遺体の聖人。

ま…まただッ!誰だ!?今のは!
まさか!!まさかあなたは…

『イエス様』……!?

ああ、ついに出てしまいましたね。遺体の聖人の名前が。
あまりに大きな存在過ぎて、彼を扱う映画や作品が自粛されると言う究極の聖人が…
彼を扱ったためにキリスト教徒の大きな反発を呼び、放映禁止になった場所があるというダヴィンチ・コードは有名です。

『撃つな』という謎の言葉を告げる遺体の聖人。その言葉に困惑している内にジョニィ父はジョニィに迫ります。
反射的に放ったタスクがジョニィ父を捉え、鮮血を撒き散らす…。
まるで勘当された日、激情から思わず父を傷つけてしまったあの瞬間の様に…。
あまりに生々しい感触に激しく取り乱すジョニィ。再び迫る彼にタスクの照準を合わせるも、次の一撃が出せません。

「ジョニィよくこらえた!今だ!『本体』の位置がわかったぞ
 鉄球の回転で地面をエコーで探していたッ!お前の左後方だ!!」

ジョニィの耳に届いたのはジャイロの声。その言葉に突き動かされる様に後方へとタスクを放つジョニィ。
その一撃は敵本体の喉笛を貫き、風穴を開けます。どう見ても、完全なる致命傷・・・。
そしてジョニィ父も溶けた様に消えていきます。ついに倒したのか?

「そう・・・グハッ いいぞ・・・ジョニィ・・・ぶっぐっ これでいい…わたしの最終攻撃は…ついに…
 『完成』したな… …ぐっ…人は…
 何かを『捨てて』前へ進む」

謎の言葉を放つ敵本体。

「これから…ジョニィお前はわたしを『捨てて』…前へ進む…
 私を『撃ち殺す』とはそういう事だ
 ついにおまえは『わたしを殺した』
 わたしを『捨てた』んだ…わかるか?
 わたしが最終的におまえにやってほしかったのはこれなんだ

「だからこれからわたしのものを全ておまえがジョニィ・ジョースター!
 『おっかぶるんだ』!
 わたしが捨ててきた過去の罪を全てお前がな」

「これでわたしの過去は『清め』られた」

謎の言葉を発して崩れ去る敵本体。突然の様に目の前の死体とは別に現れる、同じ姿の敵本体。

「ついに我が『スタンド』『シビル・ウォー』は『完成』したのだ」

タスクを放つジョニィだがその弾道は何者かの手によりそらされてしまう。それは…

「これが…おまえがおっかぶった罪だ」

敵本体の背後から無数に現れる無数の亡者達。これがこの男の犯した罪と言うなら、
どれだけの人間を犠牲にしたのだろうか?
しかし言ってる理屈ががメチャクチャです。
突然立ちはだかって殺されたら「自分を捨てる」?
自分を捨てたから自分が犯した罪全てを背負わなくてはならない?
確かに人は他者を犠牲にして生きています。承太郎の「人は何かを犠牲にしていきていると言ってもいい動物」と言う言葉が頭をよぎります。人間は業の深い生き物です。それを宗教的には「原罪」と言います。
ジョルノも「去ってしまっていった人達から受け継いだものはさらに前に進めなくてはいけない」と言っていました。
それが残されたものの役目だと。
しかし、この男の場合は押し付けもいいところです。捨てたもクソもない様な気がします。


そう、男が犯したという罪。この無数の亡者に関わると言う罪。それが男の口から語られます。

1863年。望まない戦争に召集され、辺鄙な場所の見張りを命じられていました。
戦場の恐怖と代わりばえのしない闇夜の見張り。そんな日々は、彼の精神を蝕んでいきました。
彼はいつしか酒に逃避する様になりました。
そんな状態に最悪の事が起こります。酒に酔い寝過ごした時、ついに来るはずがないと思っていた敵軍が自分の足下を既に通過している光景が目の前に飛び込んできました。
敵軍の襲来を味方に伝える。それこそが今彼の果たすべき使命でした。
しかし彼はそれをしなかった。
今合図を送れば、自分の存在を敵に知らせる事になり、自分は殺されてしまう。
命惜しさに合図を送らず、酒を飲み…
町に火の手が上がり人々が虐殺されていく光景を、この男は眺めていた…

そしてその戦争はそれをきっかけに敗北へと向かっていった。それが今いるこの町。
ステージの地点、ゲティスバーグ…そう、南北戦争です。
スタンド名のシビル・ウォーとは南北戦争を意味していたわけですね。

だとすると、この男は直接的ではないにしろ戦争の敗北の原因を作った重罪人。
そうでないとしても、己の怠慢で敵の襲撃を許し、己の命惜しさに町の人々全てがこの男のために犠牲になった。

花京院「哲学者ぶっているが最低のサイコ野郎だ。ヘドが出る…」
スピードワゴン「こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーッ!!」

…という様な気がした、この瞬間でした。

「この亡霊どもはわたしが生きるため『捨てて』来た人間たちだ!!
 それを今おまえがおっかぶるッ!!」

その言葉を合図のように、無数の兵士の亡者達がジョニィに襲いかかる。
手足を引きちぎられていくジョニィ。あまりに理不尽な攻撃に、なす術のないジョニィ。

「わたしは『清め』られて蘇ったぞッ!そこにある『両脚部』ももらう資格ができた!」

( 0M0)<でたらめを言うな

…そう突っ込みたくなる程の訳のわからない理屈です。
自分の命惜しさに多くの人間を犠牲にし、他者に自分の罪をなすりつけて自分はのうのうと生き返る…
この男、罪悪感が本当にあったんでしょうか?
これこそ「悪よりも悪い最悪というものだ」という臭いがプンプンしてるんですが…

「うおおおおおああああ あああああああ」

手足を引きちぎられる激痛に叫び声を上げるジョニィ。
その指先の照準には、敵本体が…この絶体絶命の状況、残った力で奴を倒せるのか?

再び語りかける遺体の聖人。迷った時には撃ってはいけない。その言葉を繰り返す彼に…。

「もう迷っちゃいない。わかったんだ…さっきわかった!
 撃つべき場所が…爪弾は!!」

次の瞬間、ジョニィはタスクで自分の脳天を撃ち抜いた!

「自分を撃つッ!!」

その瞬間、タスクの穴がジョニィの体を吸い込むかの様にうねり体を飲み込んでいく。

「『黄金の回転』
 
 『新しい道』へ行くぞ」

ジョニィの行動の真意は!?このタイミングで来月は休載。
何としてもこの卑劣な敵を倒してほしいものです!


#33 追憶の館A

スティール・ボール・ランレース7.thSTAGEも選手のゴールを待つ時間となっていた。
もはや2割以下となった参加選手達。その中に名を連ねるジャイロとジョニィ。
その二人は僅差で2位・3位と並ぶ。
そして次の8、9.thSTAGEは短い区間。
この7.thSTAGEの勝者が優勝に独走する可能性が高い、最も重要な区画…。

オッズでも1番人気に上がるジャイロ・ツェペリ。それに続くジョニィ・ジョースター。
そのいずれか二人の優勝に胸を膨らませる世界中の人間達。
その二人の快進撃を冷静に眺める人間が一人…。
ファニー・バレンタイン大統領は二人が遺体を見つけた確信を掴む。

「全ては順調だ…いよいよ!『総取り』の時が来た…
 『頭部』を最後に残してこの我が国の『遺体総取り』の時がッ!!」

その揃った遺体を前に、ジャイロ達は謎の攻撃に苦境に立たされる…!



「『敵』か…な…何だと!?……
 こいつは『敵』かッ!!」

ジャイロの捨てたクマのぬいぐるみはなぜか彼の前に現れ、ジャイロの体の中へと侵入していく。
その不気味な攻撃に呆気に取られるジャイロの前に異形の存在が再び姿を現す。

「人は何かを『捨て』なくては前へ進めない
 それとも…
 ……『拾って』帰るか……?
 ジャイロ・ツェペリ」

敵だと認識したジャイロは掛け声とともに鉄球を放ちますが、異形の存在は体を分離させて回避します。
分離した頭部にさらに一撃を見舞うも、さらに頭部は分離してゴミの山へと消えていく。
ジャイロはこの存在をスタンドと認識し、どこかに本体がいる事を察します。

遺体の番人かと思ったら、こいつはスタンドなんですか。だとしたら一体何が目的?

さらなる攻撃を加えようと落ちた鉄球を拾おうとするジャイロ。
しかし、その鉄球は…
2個のはずの鉄球が無数に増え、床で回転の唸りを上げています。
その異常な光景のさなか、鉄球にジャイロは何かを思い出す…?

場面は移り変わってジョニィ。捨てたナイフに体内に侵入されかかっているジョニィ。
そのわき目でゴミと一体化していくホット・パンツは彼に逃げる様に告げる。
自分やジャイロを助けようとしたら必ず捨てなくてはならないハメに陥ってしまうと警告する。
ホット・パンツの体に溶け込む謎の男の子の姉を呼ぶ声。彼の存在は一体…?



目の前に爪牙を唸らせ迫り来る凶暴な熊。
岩場に追い詰められ抱き合いながら恐怖の悲鳴を上げる姉と弟が二人。
そう、それはホット・パンツと彼女の中に侵入している謎の男の子。
そう、あの男の子はホット・パンツの弟だったのです。意外にも予想どうり…!

二人の叫びも意に介さず、その爪牙の餌食にせんと繰り出される一撃。
その一撃は幼い頃のホット・パンツの足を切り裂き、苦痛の悲鳴をあげさせる。
その直後、不意に出た小さな衝撃音。何かを突き飛ばす様な…。
その瞬間、凶暴な灰色熊の姿は目の前から消えていた。
彼女に抱きつき恐怖の悲鳴を上げる弟の姿も…。

目の前にあったのは、何かにむさぼりつく灰色熊と、小さな男の子の靴…。
そう、ホット・パンツは死の恐怖の中、自分が助かりたいために自分の弟を犠牲にしてしまったのだ。

誰もその事実を知らない。しかし自分の命惜しさに弟を犠牲にしてしまった罪悪感は彼女の重い十字架となっていた。
彼女は修道院への門を叩き、神の僕となる事で自分の罪を許してもらいたかったのだ。
そして彼女は遺体を集め、今に至る…。

ホット・パンツの過去が明かされました。
意外にも予想通りでしたが、やはりあの男の子はホット・パンツの弟。
そして、その彼を犠牲にする様な行為をしてしまっていたのも的中。
ただし、これが原因で修道院の門を叩いたので動機としては逆でしたか。
その自分の罪から許されたいために遺体を集めていたのでした。


「でもダメだった…
 ここに『くつ』が落ちていたから…
 捨てて来たものからは絶対に逃れられない」

自分の心の負い目、捨てた過去ゆえに敵の手に落ち、遺体を全て奪われてしまったホット・パンツ。
人の過去、それもトラウマを武器とする事が敵は可能な様です。
過去に強い負い目を持つホット・パンツは格好の的だった様ですね。

ホット・パンツはジョニィに体内に侵入しようとしているナイフを水で洗い流す様に訴えます。
それを最後に、小さく折りたたまれ、ゴミと一体化されてしまいました。
敵の思惑を悟ったジョニィは、建物内に敵がいる事を確信する。
そして、腕を登っていくナイフを目に、ホット・パンツの言葉を思い出す。
水が必要だ。ジョニィが目を向けた先には、愛馬の荷にある水筒…。

「『水』なんだな……!?『水筒』!!必ず助けてやる、『ホット・パンツ』…」

打開策を見出したジョニィ。ゴミと一体化してしまったホット・パンツに助ける事を告げます。
この状況でもそんな事が言える辺り、ジョニィ、相当ホット・パンツに熱を上げているのだろうか…?

水筒めがけて走る(ジョニィは下半身不随なので腕の力でジャンプしているんでしょうが)ジョニィ。
しかし、その眼前に飛び跳ねる小さなネズミが…。
それを目の当たりにした瞬間、ジョニィの顔が凍りつきました。
そう、ここまで読んできた者は皆知っているあの存在。

「い…今のはッ!!ウソだッ!!
 そんな事があるワケがないッ!こっちに向かってきたッ!!
 今のは『ダニー』!!」

ジョニィのトラウマの象徴とも言える、白いネズミのダニーでした。
そう、思い起こせばトラウマの塊の様な存在だったジョニィ。
捨ててきた過去、それも自身のトラウマを武器とできる敵にとってジョニィはこの上もなく格好の獲物。
このままホット・パンツの二の舞になってしまうのでしょうか?



「オレの『鉄球』だ!…これら…『全部』」

一方のジャイロ。床で回転を続ける鉄球は全て同じ自分のものでした。
瞬間的にジャイロは自分が投げた2個以外に触れるのは危険だと察するジャイロ。
しかし躊躇している間にもクマのぬいぐるみの侵食は進行していきます。
その瞬間、敵のスタンドがゴミの中から姿を現します。

「『公平(フェア)』に行こう
 スタンド戦は----たとえば自らの弱点を相手に教えるような…---『公平(フェア)』さが
 精神の力(パワー)として最大の威力を発揮する
 『卑怯』さは『強さ』とはならないからな
 わたしの弱点はジャイロ・ツェペリ-------『水』で清める事だ」

スタンドの後ろに本体の影が姿を現します。
遺体の番人は大ハズレ。スタンド使い…それも大統領の部下の様です。
なぜ大統領所有の右手があるのか?と思いきゃこいつに預けてたんでしょうか。
絶対の自信があるから、とも取れますが無用心な真似をするな…大統領も…。

その余裕たっぷりの態度に怒りを隠せないジャイロ。攻撃しようと鉄球を手に取ります。
その直後、体にまとわり付く鉄球。敵の狙いにまんまと乗ってしまいました。
そしてその鉄球を手にした途端、ジャイロの頭にある出来事が蘇ります。
それは、死刑執行時、死刑囚が苦しんでいる光景。
自分が鉄球の失敗をしたために厳正な法の執行である死刑を残虐な刑罰にしてしまった負い目。
そして、父に叱責された苦い記憶。
その際の鉄球が、ジャイロの目の前にありました。

「うおおっ!!ジョニィィィィィィ------ッ!!」

トラウマを突かれた攻撃になす術のないジャイロ。このままジャイロも敵の手に落ちてしまうのだろうか。

ジャイロの声に我に返るジョニィ。ジョニィの目の前には、自分のトラウマの象徴とも言うべきダニーが飛び跳ねていました。

「あれは『ダニー』じゃあないッ!
 『ダニー』であるわけがない
 これは『幻覚』だ!『幻覚』を観せられているんだ……!!
 ぼくがいつも夢の中で見るやつと同じだ……
 そして『幻覚』だがあのネズミは止めなきゃあいけない」

『撃てる』

幻覚である事を自分に言い聞かせるジョニィ。
しかしネズミを狙うジョニィの指先は震えています。
それはダニーを攻撃する不安なのかトラウマを突かれた事の動揺なのか…
それが形になったかの様にことごとくジョニィの爪弾は回避されていきます。
ネズミが逃げ込んだ先は、ゴミとして転がっていたブーツ。それを好機とブーツを拾い閉じ込め、タスクを炸裂させる。
無数の穴の空いたブーツから滴り落ちる血液。

「やっやった!命中したッ!」

だがこの瞬間から想像がついています。SBRファンは知っている。
ブーツ。ジョニィのトラウマ。それはジョニィにとって最大のトラウマを意味するものの存在が…

「おまえがネズミを……!!森へ逃がしたせいだ…
 ジョォォォニィィィィィ」

滴り落ちる血の中、怨嗟の声を上げてジョニィをにらみつける男の顔。

「はッ!あああああ…
 こ……これはッ!」

「父さんの言うとおりネズミを池に沈めていれば…
 あんな事にはならなかった
 違うんならそう言ってくれ
 兄さんはおまえのせいで落馬した
 おまえがぼくを!!おまえがぼくを!!

 殺したんだああぁぁぁーーーーッ!!」

そう、ジョニィの亡き兄、ニコラス・ジョースター。
自分が原因で殺したかもしれないという負い目のあるジョニィには最大のトラウマ!
そして敵にとって最高の攻撃材料!
そのブーツは、兄の使っていた父から勘当されるきっかけでもあったブーツ。
ジョニィのトラウマでこれが出ないはずがありません。
それにしても、このニコラスのジョニィを恨む呪いの声。
ジョニィの負い目が強すぎるゆえにそう聞こえるのか、
それとも相手のトラウマを利用して相手を追い詰める様に脚色できるのか…。
何にしても非常に陰湿な攻撃です。
なにが『公平(フェア)に行こう』だ。

己の罪悪感に身を縛られるかの様にブーツにくるまれ、身動きの取れないジョニィ。
しかし彼が目にしたのは、鞍にある水筒。水さえあれば攻撃から逃れる事が出来る。
這いずって移動するジョニィへの目の前に現れたのはあのダニー。ジョニィへと一直線に向かっていきます。

「くそォォッ!!
 この『敵』ッ!!絶対にブッ殺してやるぅぅぅぅゥゥーーーーッ!!」

「ブッ殺す」なんてセリフは終わってから使うもんだぜ…
ジョニィの顔は涙目です。完全に負け犬ムードが漂っています。
しかし!わたしは感じました。ジョニィの自身のトラウマを利用された事の怒りを。
この時、罪悪感、過去の負い目を越えて、敵への怒りがそれを上回った瞬間なのだと…

しかし発射するタスクはかわされる一方。地面に穴を空けていくだけです。
やはり怒りでごまかそうとしているだけの動揺したやけっぱちの攻撃では通用しないのか。
白いネズミはタスクをかいくぐり、ジョニィの体へと侵入します。

「くそ…『白いネズミ』
 だが今…爪弾で狙ったのはおまえじゃあない
 おまえは必ず仕留める………
 だがその前に撃ちぬいておくものがあった。
 それを撃った」

ジョニィは、冷静さを失ってはいませんでした。タスクで撃ち抜いた先には、水を穴から滴らせる水筒が…。
水が降りかかるその瞬間に、白いネズミはジョニィの体から離れます。
水を浴びた途端に、ジョニィの体から抜け落ちるナイフとブーツ。
ホット・パンツの言葉通り、水は有効です。水さえあれば、攻撃から逃れる事はできる…。
そして水は敵にとっても大きな弱点の様です。白ネズミが水を浴びるその瞬間に離れたのもそのためかと。

「『水筒』もだが…
 そしてならったのは水筒だけじゃあない
 この建物には『古井戸』がある」

ジョニィの視線の先には崩れかかった井戸が。そして深くない場所に水脈がある事をジョニィは察します。
それも、タスクの爪弾で十分に届く距離に。
それを裏付ける様に、タスクで空いた地面の穴から水が吹き出ます。
それはこの敵を攻略する突破口…!

「『清める水』は十分手に入るぞッ!
 ジャイロのところに行くぞッ!この『敵』の持つ遺体は手に入れてやるッ!!」

涙目のジョニィ。その心の痛みの涙を怒りに変え、敵を倒すべくジョニィが立ち上がる。

「………………………
 これでわかった…『両脚部』を体の内に持っているのは……
 ジョニィの方だ」

敵スタンドの顔を浮かべ、不気味につぶやく白ネズミ。
自分の過去を乗り切り、過去を弄ぶ敵を倒す事ができるのか?
ジョニィ、反撃開始!



今回、色々とホット・パンツの過去が明かされましたね。
過去を忘れるのは間違っている事なのか?人間は捨てた過去や負い目からは決して逃げられないものなのか?
人は誰もが消し去りたい過去や負い目を持っているものです。
そしてそれは時に大きな枷となって自分の前に立ちはだかる。
しかし…過去はあくまで過去。人は逃げるなり決別するなり、何らかの形で捨てなければ先には進めません。
どんな形であれ、捨てたものには意味があるはずなのです。
「拾って帰る」という事は、その捨てたものを無意味にしてしまう事なのではないか?そんな気も、ふとしました。

そしてその人の過去を、トラウマを利用する相手は決して許せないタイプの敵です。
ジョニィ、何としても倒してほしいです。
ジャイロはもう敵の手に落ちている可能性も高いけど…。

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