シャドウゲイト

FC、ケムコ ジャンル・アドベンチャー(1989年)

わたしこそ しんの レトロゲーマーだ!!

シャドウゲイトとは…

昔、ファミコン時代に発売したケムコのアドベンチャーゲーム。
魔王の居城シャドウゲイトに、王家の血を引く勇者が魔王ワーロックを倒すためにのりこむというストーリー的にはありきたりな物語。
しかし全くありきたりでないのは主人公「しんのゆうしゃ」(自称)の行動とテキストセンスで、見るもの全てを驚かせ、呆れさせる。

一言で言ってしまえば、このゲームは理不尽に死にまくるゲームで、あっという間に怪物に殺されてしまう主人公の貧弱さもさることながら、
プレイヤーのイタズラ心に素直に従って自殺行為を図ってしまう「死にゲー」です。

例)いどう>谷の穴

「ギャーッ!!
 おおごえを あげながら とびこんだ。」

〜(省略)〜

ざんねん!!わたしの ぼうけんは これでおわってしまった!!

そのパターンの多さと滑稽さとハイセンスさに皆ゲームの進行を忘れて死んでみてしまうほどだったといいます。
ざんねん!!ですませてしまう彼の潔さもさることながら、まさにゲームオーバーを死の芸術と高め上げた、
スペランカーを超える死にゲーであると考えています。

ほんの些細な事で死にまくる運命となったボスの名を語るわたしにとって、この死に様の多さは心を刺激しないはずがありませんでした。
何しろ40種類近くの死に様があるので、その中からチョイスして感想を交えて紹介したいと思います。


まずは、主人公「しんのゆうしゃ」がどの様な人物であるか、彼のセリフから紹介していきましょう。

まずはゲームスタート時の持ち物…「たいまつ1ぽん」
魔王を倒すのに全て現地調達で臨む、これだけでも大物感が漂ってきます。

「ひつようない。このたいまつ1ぽんでシャドウゲイトにちょうせんする」

まずは自己紹介してもらうとします。

しらべる>セルフ(自分に道具を使用する際のコマンド)

わたしこそ しんの ゆうしゃだ!!

「わたしの ゆうしゃとしての ちが さわぐ!!」

超自意識過剰主人公と言われるだけあって、言う事が違います。
自信満々ですが、ひらがななのでいささか迫力不足ですが…
さて、冒険中ある影の亡霊と対峙した時です。

「なっ なんだ!!
 ぼうれいが ゆくてを さえぎっている!!」


いどう>亡霊

こわくて ちかよれない。

さ…さっき…「わたしこそ しんの ゆうしゃだ!!」って、い…言ったくせに…
彼のパーソナリティを知れ…それとこれが同じだと思うのか?…自称勇者の主人公に。

こんなものは序の口です。

「ひいっ でっ でた!!
 スフィンクスだ!!
 どっしりと こしをすえ こっちを にらんでいる。
 どうしよう? どうしたらいいんだ?

ビビり過ぎです。「どうしよう?どうしたらいいんだ?」とは…動揺しすぎです。

ヒッ・・・ヒイッ!!
 だいじゃだ!! とぐろを まいている!!
 せまい ほらあなの なかには とてつもない
 きょうふが まちかまえていた。」

「ヒッ・・・ヒイッ!!」って、その情けなさ過ぎるビビり方は何ですか。

「う・・・うごかない?
 わたしは おそるおそる かおを ちかづけてみた。
 これは・・・・・!!
 ばかに している!!
 だいじゃは ただの つくりものだ。」


ようやく気づきました。「ばかに している!!」などと急に強気です。

ひえええっ!! でっ でた!!
 とうの てっぺんに のぼった わたしは おもわず
 あとずさりした。」


…この人、根拠のない自信があるくせに本質は臆病な様ですね…。
勇者はやめておいた方がいいんじゃないか?

まあ、でもしらべる>セルフしてみます。

わたしこそ しんの ゆうしゃだ!!

もう一度言う…
真の勇者やめろ。



○ちなみに彼が使える様になる呪文の数々です。

プーロ     →ロープを操る。使わなくてもクリアできる。
レナニゼカ  →強風の吹く場所で透明になれる。透明になると勇者も強気になる。
テラヨテラ   →置いてある地球儀が開く。名前の割にしょぼい。
ヒカレタイヨウ→ぶっちゃけ太陽拳。
ミチヨヒラケ  →ラストフロアへの道が開く。名前の通り。

非常におしゃれな呪文のセンスだと思います。



主人公である「しんのゆうしゃ」がどんな人かわかったところで…
ここからはこのゲーム最大の見せ場といっても過言ではない彼の辞世の句について紹介したいと思います。


1.たいまつの火が消えて死亡
このゲームでは、時間制限の様なものがあり松明の火で示されます。
灯火が弱くなると危機感をあおるBGMに変わり、消えてしまうと…死にます。
わたしはリアルタイムプレイ時、暗闇から魔物が襲い掛かってきて殺されるものとビクビクしていました。

「ああっ ひが・・・!!
 たのみのつなの ひが きえてしまった。
 くらい!! みわたすかぎり まっくらやみだ!!
 わたしは あかりを もとめて てさぐりで
 いどうしようとした。

 ゴンッ!!

 そのとたん あしがすべり かべに きょうれつに
 たたきつけられてしまった。


…滑って頭を打って死んだという何ともトホホな死に方でした。
自分がビクビクしていたのがバカバカしく思えてくるほどのしょうもない死に方でした。
「自爆…やつの最期は自爆…」


2.剣を自分に使って死亡
このゲームには装備のコマンドがありません。そのため装備を活用するには「つかう」のコマンドを使う事となります。
試しにつるぎを装備してみましょう。

つかう>つるぎ>セルフ


「わたしは つるぎのはを ひだりむねに ついた。
 ・・・ドクドクと ちが わきでてくる!!
 ああ!! なんて おろかなのだ。
 じぶんの いのちを じぶんで たってしまうとは!!

 ・・・わたしなきあとの せかいは やみに つつまれて
 しまうであろう・・・。」


                            話を進める前に言っておくッ!
                    おれは今このゲームのシステムをほんのちょっぴりだが体験した
                  い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『真の勇者に剣を装備させようと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにかゲームオーバーになっていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何が起こったのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    トラップだとかバグだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


…ポルナレフに代弁してもらいましたがなぜか自分の胸に突き刺して死んでしまいました。
確かに「自分に使う」という意味では正しいのですが…。
ちなみに説明書には「セルフ」の使用例に「自分に道具を使う際に使用します」と
つかう>マント>セルフ
の例とともに出ているのですが…これは製作側の嫌がらせでしょうか?

なお、つるぎ以外にもやりやおのなどがあるのですが、これも同様に左胸に突き立てます。

「わたしは ひかきぼうのはを ひだりむねに ついた。
 ・・・ドクドクと ちが(ry


む…無理だッ!火かき棒では無理だッ!
この人は何でも左胸に突き立てなくては気がすまない様です。


3.サメと泳ぎのガチンコ勝負して死亡
さて、湖のど真ん中に鍵を持った骸骨があります。しかし湖には泳ぎ回るサメの背びれが。果たしてこの鍵を手にできるのか?

「わたしは ガイコツに むかって およぎはじめた。
 グイッ!!
 さめだ!! もうれつな ちからで わたしの あしを ひっぱっている!!
 おろかにも じぶんの にくたいを えさとして
 さめに ささげてしまった。
 わたしが さめの いぶくろに はいりきるころは
 ここは ちの いけのように なっているだろう。


「飛び込んでみなよ---しんのゆうしゃァ!
 湖を泳いで鍵を拾ってみなよォ〜〜〜〜ッ
 おめーの泳ぎが早いか…オレの喰らいつきが早いか賭けてみるのも悪くね---ッ」
力技で鍵を取りに行った結果でした。
死に際になってもやけに冷静ですな。
しかし彼は思ったはずです。
「もしサメよりも早く鍵を取れる可能性が!万が一にでもあるっつーのなら!
 その鍵を取りに行かねえわけにはいかねえだろう…!」
可能性がわずかでもでもあるのなら挑戦する勇気…これこそ勇者の絶対条件です。

(※NGワード・「ノミと同類よォ----ッ」)


4.獣の入った金網を開け、食いちぎられて死亡
怪しい金網があるのですが、好奇心からうっかり開けてしまうと…!

「とつぜん くろいかげが わたし めがけて とびかかってきた。
 ひいっ!!
 なんだ? こいつは・・・。
 きみょうに へんけいしている!!
 よくみると くろい いぬのようだ。
 どうやら じっけんによって どうもうな けものに
 かえられたらしい。
 あれこれ かんがえているうちに けものは
 わたしの からだを くいちぎった。


まず彼には「あれこれ考えている余裕があるのなら逃げろ」と言ってあげたい気がします。
怪物がいる金網を意味もなく開けてしまう無用心さや、
無抵抗のまま殺される貧弱さもさる事ながら、
何よりも先にプレイヤーに対して説明をしてくれる解説力とサービス精神に恐れ入ります。
何よりも冷静に状況を解説できる解説力。これも真の勇者のエッセンスの1つです。


5.降りようとしたらはしごがなくて死亡
さて降りてみたら…あらかじめ下の階で移動手段を確立させておかないと恐ろしい事になります。

「わたしは くらやみを はしごづたいに おりていった。
 はっ はしごが ない!!
 おもわず あしを ふみはずして しまった。

 くらやみに らっかして しぬことは
 わたしの うんめいだったのかも しれない・・・。


途中ではしごがないとはいえ、足を踏み外すとはうっかり過ぎます。
しかしそんなうっかりミスによる死も運命として受け入れられる潔さ…まさに真の勇者です。


6.鏡を割ったら吸い込まれて死亡
鏡の裏に隠し通路があり、その鏡を壊す事で先に進めるのですが、うち2つは死のフェイクなのです。

「かがみが われた。
 おっ なんだ!!
 くうきを すいこんで いくぞ!!
 ・・・うわーっ!! からだも すいこまれてしまった!!
 かがみの そとには くうきが ない!!
 こきゅうが できない!!
 だっ だれか!! たすけてくれ!!


そもそもその鏡の中は何なのかとツッコミどころ満載です。
さあこの絶体絶命の状況をどう乗り切るか?
3択−ひとつだけ選びなさい


答え@−ハンサムのしんのゆうしゃは突如脱出のアイデアがひらめく。
答えA−誰かが来て助けてくれる。
答えB−誰も助けてくれない。現実は非常である。

答え-B


7.カール・ルイスの様に炎に投身して死亡
燃え盛る炎の海へと移動を実行します。

「うおーっ!!
 わたしは さけびごえを あげ ほのおの なかへ
 ホップ ステップ ジャンプ・・・ かーるいす!!

 わたしは もえつきてしまった。」


かなりのヤケクソ感が漂ってきます。
そもそも「かーるいす!」という掛け声は一体何なのでしょうか…リアルタイム時は確かにカール・ルイス最盛期だったと思いますが…
そんなツッコミはヤボだと思わせるインパクトがこれにはあります。

「さすがしんのゆうしゃ!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
 そこにシビれる あこがれるゥ!」


8.窓から投身自殺して死亡
高い塔にある窓へと移動してみました。

「むなしい さけび!!
 わたしの からだは ちゅうに ういた。
 ぐるぐる ぐるぐる・・・。
 なんの つながりもない いろいろな ことが
 あたまの なかを かけめぐる。
 さいごに わたしが みたものは あんこくの なかで あやしく ひかりを 
 なげかける ほしの またたきだった。


ただの投身自殺にこんなポエジーな表現ができますか?
命を捨ててアートを演出したいとしか思えません。


9.男塾名物油風呂で死亡
炎が消えたばかりの熱く煮えたぎる油へと移動します。

「わたしは はなを つまみ あぶらのなかへ
 とびこんだ。
 あづーっ!!
 わたしは とけてしまった。

 ああ!! わたしは ゾンビにも なれないのか・・・。


鼻をつまむなど無駄な抵抗もいいところだと思いますが…ほら「あづーっ!!」って。
何よりも「ああ!! わたしは ゾンビにも なれないのか・・・」という表現が死体すら残らない悲壮感を表現していますが、
死に際にこんな表現ができる人が他にいますか?
これではまるでゾンビになりたかったかの様です。


10.マグマダイバーで死亡
いどう>溶岩と実行してみました。

「わたしは なにを ちまよったか
 いきなり ようがんの なかへ とびこんだ!!
 ああっ!! からだが もえる!!
 ようがんは そうぞうどおり じごくの あつさだ!!

 どうして こんなことを させるんだ!!
 わたしは わたしの いしには はんして
 じさつこういを はかった。」


「どうして こんなことを させるんだ!!」初めてしんのゆうしゃに責められた事で、
今まで自分がいかにしんのゆうしゃの命を使って遊んでいた事を省みました。
しかしそれでも実際にプレイヤーの命令に従ってくれる彼の姿勢には落涙です。

「なんという皮肉!なんという奇妙な運命!
 そんな…主人公としての役目を果たすために自殺しなくてはいけないなんて!
 プレイヤーの命令に逆らえないとはいえ
 こんな誇り高い勇者を!忠実なる心の持ち主を!
 愚かな自殺行為に駆り立てる憎むべきはプレイヤー!
 許せないのはそれを可能とする製作側!!

特にインパクトのあるものを選んで紹介しましたが、先ほどのビビり具合を払拭する様な蛮勇です。
命を投げ出せる勇気と、いかなる命令にも従える使命感…
…まさに真の勇者…いえ「しんのゆうしゃ」に恥じない勇者の資質です。


まあこれこれこうな訳で…彼の幾度もの死(大部分は自殺強制だけど)を乗り越え、
魔王ワーロックを倒し、感動のエンディングを迎えました。
彼は王となり、善政を敷き人々に崇められた。

「なにひとつ ふじゆうのない せいかつ・・・。
 しかし ただ1つ たりないものが あるのだ。
 それは・・・・・!!

 このごろ また 「ぼうけんの むし」が
 こころのおくで さわぎはじめたようだ!!


 わたしは むいしきのうちに つぎの ぼうけんの
 たびじたくを はじめていたのだった・・・・・。」

          --- だい1わ おわり ---

♀「| ☆ ヽ
ヽラ丿-、☆|    
` ̄u/厶ヽ |     
ヽ) 'イ.9_) |ヘ、   お前何をやってるんだしんのゆうしゃーーーッ!!
 ハ ⌒J |'リ\   理由はともかく少しは懲りろーーーッ!!
ヽニ-ヘ u|へ\  
` ̄´r| / レ⌒   
ヽニソ/'/ /    
`二フ′,/,ィi

何だかんだで彼の発言と行為はわたしに根拠のない自信をくれたと思います。

「わたしこそ しんの ボスだ!!」

〜省略〜

「ざんねん!!わたしの じんせいは これで おわってしまった!!」

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