下野三十三番観音霊場 
〜 10番札所 岩谷観音 〜

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 寺 院 名 長泉寺(廃寺)・岩谷観音
(ちょうせんじ・いわやかんのん)
 宗  派なし(元天台宗)
 観 音 様 千手観世音菩薩
 御 詠 歌千代八千代幾世へぬらん岩谷水
       ながき泉のたえぬこの寺
 札  所参道入口の「はなやま電設」様
 住  所黒羽町堀之内
 駐 車 場同寺境内か参道入口近辺の路上へ
 略 地 図 の 表 示
【紀行文】
 8月の上旬、暑さが最も厳しい折、松尾芭蕉の『奥の細道』で知られます、ここ黒羽町を訪れました。
 観音堂へは、町中からは少々離れた県道沿いの看板を頼りに、参道へと入って行きますが、この参道、車1台がやっとの幅で、しかも急な坂道のため、運転に自信の無い方には、県道沿いに一時駐車させていただくことをお薦めいたします。
 その参道を登って行きますと、途中、県の天然記念物に指定されている、樹齢500年の名木“堀之内のツクバネガシ”がその枝を広げ、さらに行きますと、セミの鳴く声だけが耳に入ってくる境内地、うっそうと茂る杉林に囲まれた、岩谷観音堂がひっそりと私を迎えてくださりました。
 町の伝えによりますと、この地は、かつて『長泉寺』と呼ばれる鎌倉時代創建の天台宗の寺院であったらしいのですが、この寺が江戸時代に廃寺となってしまい、唯一、この観音堂だけが、『岩谷観音』として地元の方々に伝え守られ、親しまれてきたそうであります。ご本尊の千手観世音菩薩様は、伝教大師最澄様の作と伝えられ、町の文化財にも指定され、12年に1回、子(ね)の年にご開帳されるそうであります。
 下野三十三観音霊場の中にも廃寺となってしまった札所寺院はこちらを含めて何箇所かございます。長い時間の中では、諸行無常の風が、お寺へも吹き荒び、ついには廃寺となってしまったことでありましょう。しかしながら、この『岩谷観音』様のように、地元の人々の手に守られ、大切に伝えられてきた信仰、人々の安らぎの空間こそが、今そして将来の私たちにとって大事なものなのではないでしょうか。今回こちらへお参りさせていただいて、私はそれをこの『岩谷観音』様の静かなたたずまいに教えていただいたような気持ちにさせていただきました。観音様への思いが、御詠歌にも詠われてますように、細々ではあっても、絶え間なく湧き出る泉のように、千代八千代ならんことをご祈念申し上げます。
 なお、ご朱印は、参道入口の『はなやま電設』様でいただきますが、なにぶんご好意で納経所をお引き受けされていらっしゃいます。お仕事の差し支えにならないような時間を見計らってお願いするべきでありましょう。



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