下野三十三番観音霊場 
〜 観音様ってどんな仏様なの? 〜

 観音様は、大いなる慈悲をもって人々を救済することをお約束された有り難い菩薩様であり、数多い仏様の中でも、日本で最も親しまれ、広く信仰されてきた仏様でいらっしゃいます。観音様は、お経や仏像のお姿となって飛鳥時代に中国・朝鮮を通じて日本に来訪され、時には鎮護国家、時には広く日常的な招福や除災などを願うために篤く信仰されてまいりました。
 観音様は、正式には「観(世)音菩薩」、「観自在菩薩」といいます。お名前が数種類ありますのは、 古代インド語を中国語に翻訳する際の違いから生じたものです。また、菩薩様とは、悟りを求めて修行していらっしゃる方と言う意味です。仏教の教義から言いますと、自身の悟りを完成された方を仏陀あるいは如来とお呼びする(厳密に言えば仏様とはこの仏陀・如来のみを指す)のに対して、その位を目指して修行されている方、仏陀に次ぐ聖者を菩薩様とお呼びします。つまり、観音菩薩様・勢至菩薩様・地蔵菩薩様・文殊菩薩様などに代表される菩薩様は、仏陀より一段私たちに近い存在であり、仏陀に代わって、教えを弘めたり、願いなどを聞きとどけてくださる有り難い存在なのです。
 観音様についてのお経は、『観音経』や『般若心経』。「浄土三部経」と呼ばれる『無量寿経』、『観無量寿経』、『阿弥陀経』などが代表的なものです。
 『観音経』は、有名な『法華経』の第二十五章に「観世音菩薩普門品」として編入されているお経であり、観世音菩薩が大いなる慈悲と神通力をもって、限りない教えの門を開き、三十三身に変現して、生きとし生けるものを救済する偉大なるはたらきを説いたものであります。日本伝来以来、観音信仰はこのお経が説く、観音様を念ずれば得られるという様々なご利益が信仰の中心となってきたように思われます。もちろんこの三十三身が三十三札所の由来になったことは言うまでもありません。
 「浄土三部経」では、勢至菩薩様とともに、阿弥陀仏様の脇侍として、師仏の教化を助けていらっしゃることが記されています。すなわち本願を成就され仏陀となられた、救いそのものである阿弥陀仏様の徳を象徴した存在として、観音様、勢至様のお二人がいらっしゃり、観音様はあたたかい慈悲をもって、勢至様は正しい智慧をもって、様々な苦しみから人々を救済しようとされているのです。 浄土宗では、このお三方を「弥陀三尊」と称して、ご本尊阿弥陀仏様を中心にお祀りし、「三尊礼」という礼讃(メロディのついたお経の一つ)をもって讃歎供養いたします。



Back