現代人の法話 
〜 仏壇が今後の必需品 〜

 今更、古臭い仏壇がどうしてこれからの世の中の必需品になるのか、いぶかる人もいることでしよう。しかしながら、これこそ私たち現代人にとって欠かすことのできないものであり、これからますますその必要性が高まって来ると確信しています。なぜかというと、今日、私たちの生活はあらゆる電化製品に囲まれて、それらの恩恵なしには一日たりとも生きていけないくらい便利なものになっています。が、家庭の成員がそれぞれ異なった生活の時間を持ち、お互いが一緒になって団欒したり祈ったりすることができにくい時代になっています。
 かつての三種の神器といえぱ「カー、クーラー、力ラーテレビ」であったものが今日では「カーとクーラー」は最早、常備品となり、今では「パソコン」にとって代わられ、「カラーテレビ」もワイド化しハイビジョンの時代になって来ています。こうした電化製品の内、「パソコン」は外部と自分の交信ができ、「カラーテレビ」は外部の情報を一方的に採り入れる媒体として、家庭にあって私たちの生活の効率や楽しさを高める必需品として現代生活に欠かすことのできないものです。しかしながら、「パソコン」や「カラーテレビ」は、そうした外部からの情報を受け入れ、受け答えする装置として便利なものであっても、自らの創造的な情報を発信する装置ではありません。過去、未来に思いを走せ、そうした創造的な自分の情報を発信するには祈りの場が必要であり、また、そうした姿を家庭の成員に見せることは、ばらばらになりがちな家庭の紐帯を結ぶ心の拠り所として欠かせないものになるでしょう。外国にはこうしたホーム・チャペルがないから、教会やモスクにわざわざ出掛けなけれぱならないのです。
 インダストリアル・デザイナーの栄久庵憲司さんは仏壇の効用を次のように述べています。「手を合わせて仏壇に向かうと祖先との会話が出来、自らの死後を思い、幸せを願い、精神の散漫を集中力で一元化出来る。どれもが祈りのカを必要とする。仏壇から無限の情報がからだに降りかかり、祈りは更なる無限の情報を仏壇奥深くに照射している。人生の決断は仏壇の前で手を合わせるに限る。仏壇は見事な精神集中装置だと思う」と。
 今日、用いられているキーワードの「PCB」と言えば、「ポリ塩化ビフェニール」という有機塩素化合物の略語で、大気汚染の元凶ですが、こうしたものは私たちの生活にとって好ましいものではありませんが、これからの世の中は「パソコンとカラーテレビと仏壇」の「PCB」が私たちの生活必需品として脚光を浴びるのではないでしょうか。



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