現代人の法話 
〜 及び腰にならない 〜

 何事をなすにあたっても、いつも自分の運命を自ら積極的に切り開かず、目和見主義でひとの後ろをついて行く人には「自分がやれた」という充実感や成功したためしがないようです。かといってひとの先に立って未知の世界を切り開いて行くには、ちようど「出る杭は打たれる」ように、あらゆる困難を覚悟しなけれぱなりません。
 かつてボーリングやフラフープが流行ったことがありますが、先見の目のある企業者はそうした需要をいち早く察知して先行投資し、普及し始めて他の追従者が出た頃には手を引き、次の企業に手を付けるようです。もちろん、そうした未知の世界の開拓は一種の賭で、まかり間違えば元も子もなくなる危険に陥ることもありえます。しかしそうしたことを覚悟の上で、積極的に仕事の先取りをするようでなけれぱ企業の成就は到底望めないことでしょう。
 かつて米国大陸の日系人とハワイの日系人の企業体質を比較した人がいます。彼によりますと、前者は少数派で、他に頼るものがないので自立心が強く、積極的に未知の世界を開拓する精神を持ち合わせ、他人種に伍して企業の成功者を見かけるそうです。しかし、後者は小さな島に住む多数派で、周囲の動向を絶えず気にしながら安全路線を歩むために、大抵外来の企業者に仕事のうま味を先取りされてしまい、その不甲斐なさを愚痴り、お互いけなし合ってぱかりいるそうです。わが国の政治や外交はもちろんのこと、その精神的体質も、いつも後手に回っているこのハワイの日系人のように見えないでしようか。



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