現代人の法話 
〜 オープン・ハウスのすすめ 〜

 週末や日曜祭日にアメリカの都市郊外をドライブしていると、「オープン・ハウス」という看板のかかった建物が目につく。最初、新築住宅の売出し案内かなと思っていたがそうではなく、その日は「私のところはこういう所です」と各企業や家庭が屋内を一般公開してPRするための広告なのだと知った。日頃、地域社会に住んでいても、隣り近所にどういう企業があって何の仕事をし、どういう人が住んでいるのかわからないといったところから、お互いがよく知り合おうと、自主的にこうした「オープン・ハウス」を始めたようだ。
 ところでわが栃木県ではどうか。最近、発表された全国市民オンブズマン連絡協議会の「全国情報公開度ランキング」によると、栃木県は下から二番目だそうな。県議会の情報公開度は昨年に引き続き全国最下位だという。これほどまでにわが県は保守的で閉鎖的だとは知らなかった。何事をなすにも「出る杭は打たれる」と引っ込み思案で周囲におもねり、自分の腹の内を見せたがらず、孤立して疑心暗鬼になり、それでいて裏ではコソコソ立ち回って成功者には陰口をたたき、妬み心を抱いて引きずり降ろそうとするのがいわゆる島国根性というものである。こうした姑息な生き方は、これからの国際化、情報公開時代にそぐわないだけでなく精神衛生上もよくない。
 心理学者の宮城音弥氏によると栃木県の県民性は、「てんかん質」で「消極的、理想家肌、反抗的、だらしない、非合理的、向こう見ず」(同著『日本人の性格』による)だそうであるが、私はそう思いたくない。普段から、お互いが、企業機密やプライバシイ保持は別として、自分たちの仕事ぶりや持ち物をさらけ出して心の交流をはかっていけば、何かのときに近隣の理解や協力がえられ、切磋琢磨して進歩発展し、子供の非行化や凶悪事件も未然に防ぐことができるのではなかろうか。
(5月8日付『読売新聞』朝刊掲載)



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