現代人の法話 
〜 人を思いやる 〜

 最近、自分の子をいじめたり、他人の子を見境なく誘拐したり、殺したりする事件が国内各地で頻発していることはご承知の事と思います。
 こうした例は今まであまりなく、自分本位の勝手気侭な気持ちからこうした犯行に及んでしまうのでしょう。それというのも、今日の世の中では知性や理性が麻痺し、他人の気持ちを考えず、自分の感情や利益を中心に、思いつきで行動をしてしまう短絡的な人間が多くて、それを差し止めるブレーキがきかないからではないでしょうか。
 ここで仏教の経典にある鬼子母神の話を想い出します。鬼子母とは「ハーリテイ」というインドの神様ですが、多数の子を持ちながら性格が邪悪で、他人の子を奪っては食べていました。それを見た仏は、ある時、鬼子母の子を一人隠してしまった。それを知って鬼子母は半狂乱になって探し求めたが見つかりません。そこで仏に居所を教えてくれるよう願い出た。仏は「お前は今まで他人の子を奪い食べて来たが、その親の気持ちをがわかるだろうか。お前の悲しみは、お前が食べたその親の悲嘆と同じなのだ」と論した。そこでやっと自分の身勝手さに気づき、それ以後は他人の子を奪って食べる代わりに、ザクロを食べるようになったと言います。そして、仏の弟子となってからは一子を抱いている姿をし、安産の神様として多くの人から親しまれています。
 お釈迦様はかつて弟子たちに次のように諭しています。「誰しも自分が一番可愛い。人も同様である。したがって人をも自分と同様に愛さなけれぱならない」と。



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