現代人の法話 
〜 感謝の念を持つ 〜

 今日では科学技術の発達や経済発展のおかげで、いくら不況だとはいえわが国くらい生活が快適かつ便利な国はなく、お金さえ出せぱ何でも好きなモノが手に入り、好きなことが出来、かつてのように栄養失調で餓死する人を見かけません。このように物質的に恵まれた生活が送れるにもかかわらず、現状に満足せず、すべて得られるものに対しては当然視し、万一得られないと不満を訴え、相手や世間を恨んで、手段を選ばず「キレた」と称して爆発する人を見かけます。
 かつて外交官であった加瀬俊一さんは、はじめて外務省に入省し、初出勤の朝、お母さんがこう言ったそうです。「これから毎日、必ず守ってもらいたいことがあるのよ。一日のお勤めが終わって役所を出るとき、門のところでくるりと向き直って、今日一日、私のようなものを勤めさせて頂いて、有り難うございましたと、建物に向かって頭を下げなさい」と。
 はたして私たちは、加瀬さんのように「私のようなものでも」という気持ちでこの世に生き、職やお金やモノを得、したいことが出来ることに対して感謝の念を持ったことがあるでしょうか。



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