現代人の法話 
〜 物の有難味を知ろう 〜

 戦後の高度経済成長のおかげで物が豊富に出回り、最近のわが国はいくら不景気とはいえ、着るもの食べるものにも不自由のない生活が享受できることは有り難いことです。特にデフレ傾向が加速して物価や地価も下降気味にあり、至るところで価格破壊がはじまり、必要なものが安く手に入ることは消費者にとって願ったり叶ったりです。しかしながらここで問題なのは、今まで安定していた物の価値が下がるということよりも、物の価値がわからなくなって来ていることです。
 最近、街では安売り競争が激化して、在庫をかかえるより現金化するほうが得策と思うせいか、中には原価割れで、百円とか一円とかで商品を投売り販売する業者が続出し、どう見ても採算が合いそうにありません。ここまで来ると価格はあってないようなもので、消費者にとっては有り難いものの、生産者や販売業者にとっては利益が上がらず、同業者は物が適正価格で売れずに倒産が増え、被雇用者にとっては低賃金で働かされリストラされて、挙げ句の果ては失業者が増える結果となります。この悪循環がわが国の経済活動を圧追して疲弊させ、国民生活を直撃して自らの首を締める結果となっていることに気づいているでしょうか。常識はずれの低価格のダンピングによって同業者を出し抜き、自分のところさえ儲かればよいという姑息な手段で物の市場価格を不当に混乱させることは、固くいましめなければなりません。
 多くの開発途上国では今もって食料や物資不足に悩んで、その日暮らしを余儀なくされています。政府はこうした事実を国民に周知徹底し、わが国の余剰物質や未だ使える中古品を地方自治体などを通じて回収し、こうした国に輸送費を負担して無償で提供したなら一石二鳥で、どれほど喜ばれることでしょう。



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