現代人の法話 
〜 お互いが情報の開示を 〜

 二十世紀のわが国は、欧米先進諸国に関するあらゆる情報が稀少性のゆえに価値を生んで、それの保持者や紹介者が珍重され、権威を保っていられる時代であった。
 二十一世紀はIT(情報技術)革命の時代といわれ、コンピューターを便いこなせれぱ、誰でもそうした情報にアクセス出来、最早や情報を独占することは不可能になった。この情報を共有できるという民主化の流れは変えることはできない既成の事実であり、その恩恵は計り知れない。しかしながら企業機密は別として、いくら検索しても、こちらの知りたい情報が入手できなけれぱ無用の長物であり、また、相手の情報を欲しくても、相手にもこちらの情報を開示して交換しないかぎり、相手も情報を開示してくれないこともありえる。
 私は及ばずながら米国から帰国以来、過去三十数年にわたり、関係知己に月報や出版物などを通じて自分の近況や保持する情報の開示に努めて来た。たとえそれが一方通行であろうとも、とかく閉鎖的な日本の社会の突破口になり、いままで知られなかった国内外の情報に精通して頂く一助になればと、ほのかな期待を寄せて来たからである。
 いくらマスメディアからの通り一変の情報が氾濫しているわが国とはいえ、まだまだ価値ある情報が入手できているとは到底言いがたい。親子や社会人のお互い同士が、たんなる世間話の交換ではなく、それぞれの真情や情報を開示してコミュニケーションを密にしたならば、誤解や無理解が解消し、風通しのよい社会になるのではなかろうか。



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