現代人の法話 
〜 大欲は無欲に似たり 〜

 おそらくこの世に生を受けた以上、欲のない人はいないでしよう。食欲、性欲、物欲、名誉欲など、生まれてからこのかた数えたらキリがありませんが、こうした欲望が旺盛であること自体は、裏を返せぱそれだけ生きんとする活力がある証拠で、何らやましいことはありません。ただ、その獲得のために、相手を蹴落とし、周囲に迷惑をかけてまでも自分の欲望を満足させるところに問題があり、それらを如何にコントロールし、他人と共生できるかを考える必要がありましょう。
 私などはすでに七十年近くこの世に生き、今までに人一倍いろいろな仕事に携わり経験を積ませて頂いて、これ以上何もせず、何時死んでもよさそうです。が、人一倍欲深なせいか、まだまだこの世に未練があり、一日でも多く長生きして、もっともっとこの世の実相を究めたい気持で一杯です。しかしいずれは死ぬことでしょうから、それまでに私が今まで培ってきたものを他に伝える義務があり、そうすることによって私の大欲は社会に還元でき、無欲に似たものになるのではないかと考えていますが、如何なものでしょうか?



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