現代人の法話 
〜 現代人の信仰とは? 〜

 最近、解剖学者の養老孟司氏は『バカの壁』を書いてベストセラーになりましたが、そこで彼が言わんとしていることは、日本人には話のわからないバカばかりいて、周囲に壁を作っているのではなく、「自分の中に壁を作って、自分が分かるもの以外から目をそらす」ことを指摘しています。すなわち、自分の分かるもの以外に関心を寄せず、しかも自分の理屈だけで、すべてわかっているつもりになっていることです。
 私も同感で、よく各地で講演や講義をするとき、聴取者はわかったつもりで領いてくれますが、それを問いなおすと何もわかっておらず、わかりやすい一言での結論や要点ばかりを要求し、ちょっと時間をかけて詳しく話をしようとするとソッポを向いてしまうことです。なぜわからなかったなら、好奇心や興味を持ってもっと広く深く知ろうと努力しないのでしょうか、疑問に思われます。
 世の中は私たちの知らないことや矛盾だらけで、それを一つ一つ解きほぐすことだけでも興味が尽きず、知れぱ知るほど人生は面白く、毎日が楽しくなって来ます。それを自分の知っている範囲で満足したとたんに自分の視野が閉ざされ進歩が止まります。「日々新たに」、今までの自分を一歩でも改善し新たな世界が開けて行くことを進歩といい、それこそ現代人の私たちにとっての信仰(進行)ではないでしょうか。



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