現代人の法話 
〜 仏教の日本文化への影響 〜

 大乗仏教が紀元六世紀に中国や朝鮮半島から日本にもたらされ、当時の摂政・聖徳太子がその仏教の「和」の精神をもって国を統一して以来、内外の既存文化を排除することなく等しく認め、多民族からなる日本人を共存させ、その文化を発展させて来ました。
 その大乗仏教の根底には「空」の精神があり、すべてこの世のものは「無常」や「無我」の相互相依関係にあり、「世間虚仮・唯仏是真」として固定的に捉えず、絶えず生成発展の過程にあるという考え方です。日本人は千三百年の間、無意識のうちにこの仏教の影響を受け、島国にあって内向きには同一言語、同一共同体を形成してその文化を共有し、外向きには絶えず外からのあらゆる情報を虚心坦懐に受け入れ、よりよきものを取捨選択し付加して、お互いが切磋琢磨して日本文化をリッチにして来たと考えられます。
 こうした日本文化に仏教の与えた影響を要約しますと(一)責任ある思想、行動の自由、(二)異質文化の受容、(三)愚者の自覚、(四)物心の簡潔・単純化、(五)心身一如の実践行、(六)他者への感情移入、(七)審美的な生活様式、などが挙げられましょう。以上、掲げた七つの仏教の特質は、今までの日本文化を発展させただけでなく、今日、各国家、宗教、民族、個人がそれぞれの主義、主張の下でお互いか孤立し、競い合い、行き詰まった世界の現状に突破口を開き、今後のあり方に示唆を与えるのではないでしょうか。




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