現代人の法話 
〜 好奇心が進歩のあかし 〜

 世間には、何でも分かったつもりでいて、本を読まず、人の話もよく聞かず、ただテレビやラジオを通じて面白おかしいドタバタ劇を見聞きして一日が終わる、そうした日々を送る人がいるようです。それで満足し、有意義な人生を送っていると考えているなら、何も言うことはありません。人生は百人百様であり、それを他がとやかくいうのはお節介というものであり、越権行為だからです。しかしながら、それで「人生が何かむなしい、つまらない」と考えているのなら、お伝えしたいことがあります。
 今年九十八才になる松原泰道先生は「いまの若い人は本をお読みにならない。本を読まないとものを考える材料がないんですね。私は一日一ページを読もうという運動を始めています」と語り、高齢で明日のいのちがわからないにもかかわらず自ら率先実行しており、頭の下がる思いです。また、そうしたよき人との出会いによって人生の見方が変わるか測りしれないものがあります。私などは今までよい本やよき先師に恵まれ、それらからどれほどよい刺激を与えられ、とまどい勝ちな人生に活路を開かせていただいたかわかりません。
 それ以来「見聞触知みな菩提(真理)に近づく」と考え、何でも見聞きし、誰にでも会ってやろうと好奇心を働かせ、その良きところを見習い、悪しきところは反面教師として共に学ばせて頂きました。そして、自分自身は「無知や無関心は悪」と心得、毎日を至らぬながらも、仏様に喜んで貰えるような道をコツコツと歩んでいこうと願っています。自分の前に道はない、道は自分が歩んだ後にできると思うからです。




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