現代人の法話 
〜 憂国の士よ出でよ 〜

 最近のわが国の政界をはじめ教育界、宗教界などの現状を垣間見るに、内憂外患の重大事が山積しているにもかかわらず、いずれの指導者も人気取り攻策による一時しのぎの場当たり的な解消策でお茶を濁しているように見受けます。それはかつて中国の知日家・胡蘭成氏が「日本人は物事の本質を大事にしない。情勢がいいときには本質など考えなくてもいいという。情勢が悪いときには、いま本質論では間に合わないと考える」と述べていることと合致します。
 ところがこうした世界の趨勢や本質論に目もくれず、世の指導者はお山の大将気取りで、折りからの右肩上がりの情勢に酔って戦前は軍事大国を目指して猪突猛進し、戦後は経済大国を目指して投機に走り、バブルの崩壊後は国民の意気や自信や誇りを喪失させて来ました。その結果、アノミー状態に陥った国民は、自分の属する国家や社会や宗教がどうなろうと「我れ関せず」で、沈没寸前の日本丸の船上で勝手気儘な享楽生活を送っているようです。
 こうした危機感をいち早く察知してか、経団連会長の奥田碵氏は『日本経済新聞』(四月七日号)で、「資源の少ない日本が生き残るためには、今後、時代の先端を行く高度な科学技術の開発と、それを担う人材の養成が急務であり、そうした他国の垂涎の的となるモノを輸出する企業体や、信用され尊敬されうる人材を盛り立てる必要がある」と述べています。




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