現代人の法話 
〜 いつまでも万年青年で 〜

 私たちが人から歳を聞かれて、「私はもう七十歳」というのと「私はまだ七十歳」と言うのでは、精神年齢に天と地ほどの差が生まれるようです。人間には、歳をとるにつれて体力に衰えはあるにしても、気力の上では同じ年齢なのにやる気満々で顔にハリがあり、動作もきびきびとしているかと思うと、やる気もなくショボクレて、つまらない一生を過ごしてる人がいますが、どうしてこうなるのでしょう。
 何事をなすにしても年齢に関係なく関心を抱き、「やろう」とする気力さえあれぱ何時からでも始められ、いつまでも若々しくしていられるものです、それをやるかやらないかは本人次第で、躊躇しているのは、本人に「出来ない」のではなく「やる気」がないからだと思います。米国の企業家コーネリアス・ヴアンダービルトは六十九歳にしてはじめて鉄道事業に乗り出し、八十二歳で世界一の鉄道王になり、英国のヴィクトリア女王は、八十歳になってからサッスクリットというインド古典語の勉強に精を出したといいます。
 わが国でも歴史上に残る人物は、いずれも若くして偉業をなし遂げており、たとえぱ明治以降、坂本龍馬は三十二歳、芥川龍之介は三十五歳、太幸治は三十九歳、三島由起夫は四十五歳で早逝しています。それにひきかえ今日の日本人は生活条件に恵まれ、長生きしながらその一生を無為に過ごす人が何と多いことでしょう。長寿を約束され、物質的に豊かなことが精神を弛緩させているようで、物心共に因難の壁に直面し、それを打ち破る勇猛心や敵愾心がないと「やる気」が起きないのかもしれません。私たちは、今からでも遅くない自分のこの世でなすべきことに専心努力して、初めて生き甲斐が持てるのではないでしょうか。




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