現代人の法話 
〜 小事にこだわり、大事を忘れるな 〜

 先頃の太平洋戦争で当時のわが陸海軍はお互いが主権争いにうつつを抜かし、予算の分捕り合戦を展開して、その合間に米国と戦争をして惨敗したという笑い話があります。こうした失敗は今日でも延々と続いており、最近の政界での大臣の不祥事や失言にまつわる与野党国会議員たちの確執は、国家が存亡の危機に直面していることをそっちのけで、お互いが勝った負けたの綱引きに忙殺し、時間と税金を浪費している有り様です。どうもわが国では、自分の家に火がついていながら、家の中で内輪もめの喧嘩をし、元も子も失ってしまう人が多いようで、こうした手合いを、脳科学者の養老盂司さんは「バカの壁」と言っているのでしょう。
 こうしたことは私たちにもよくあることで、肝心なことを手抜きし、やってもやらなくてもよいことに無駄な労力とお金を費やして、平気でいる人を見かけます。とくに、他人の褌で相撲をとる政治家ややアテ職は、自分の腹が痛まないことから、公金や他人のお金を無駄遣いし、無責任な言動にうつつをぬかしがちです。また、国民自体もなすべき義務を忘れて権利ぱかりを主張し、他に頼り貰うことぱかりを考えて、自立することを忘れがちです。もし私たち誰もがこうした他律的なアダルト・チュルドレンばかりになったならば、その将来はいったいどうなることでしょう。
 最近、欧米やアジアの新興国家は、こうしたわが国民の実情を知ってか、その能天気ぶりにあきれかえっています。いくら経済大国を謳歌し、他国にお金やモノをばら蒔いたところで、けっして感謝されるわけがありません。わが国がその独立と尊厳を維持するためには、一にも二にも大局を見極めて自立し、他から尊敬や信用される人になることが急務です。はたして私たちにそうしたことに専念し、実行する勇気と自信があるのでしようか。




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