現代人の法話 
〜 夢と希望のある社会に 〜

 今日の世界は、国内外共に今まで培って来た私たちの価値観が、根底から覆されるほどの一大転換期に差しかかっています。すなわち、年金、医療、社会福祉制度など、今までは既成の国家や社会制度に依存していれば生活は安定していたものが、それらに頼り甲斐がないと判明した結果、新しい価値観を模索せざるをえなくなっています。今までは国家の親方日の丸の権威の下、家柄や肩書や財産の多寡によって周囲を睥睨し従わせて、生活を満喫して来ましたが、今後、そうしたものは一切通用しない時代となったのです。
 今後は国際化社会にあって、従来の固定化した国家、社会機構の枠組みでは処理できない問題が山積し、それに対応乃至適応できない組織や個人は、遅かれ早かれ新しい時代の趨勢から取り残される運命にあります。それを知ってか知らずか、自分に火の粉がかからないのをいい幸いに、今もって古い殻に閉じこもって安泰を決め込み、時代から取り残され、世間からは嘲笑の対象になっているのを気付かない人がいるようです。
 たとえそれに気付き、何とかならないものかと心配しても、大抵は「いずれ何とかなり、誰かがしてくれるだろう」と多寡をくくり、本人は及び腰で実際は何もせず、ただ手をこまねいているだけのようです。そうした人に、一体、今まで何をして来られたのか、今後、何をしようとするのか、聞きたくもなります。相手を批判する前にお互いが自分の所信を語り、その得た知識や実績を公にして他と分かち合い、切磋琢磨することによって、お互いが向上し、社会自体が進歩するのではないでしょうか。こうした将来に対して何の展望(ビジョン)や方策もない人々によって率いられ、夢と希望の持てない国家や社会に組み込まれた国民は不幸です。




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